第1回「電子書籍に足りないものとは?」- 電子書籍をめぐる対談。ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん

ダ・ヴィンチ


としずむです。
電子書籍元年から1年。米国では Kindle Fire も発売され、ますます身近なものになりつつある電子書籍。そんな電子書籍について、「新しい本やマンガとの出会いをつくる雑誌 ダ・ヴィンチ」の編集人兼「ダ・ヴィンチ電子ナビ」編集長、横里隆さんからお話を伺う機会を頂きました。

テーマは「電子書籍について教えてください。」です。

AppBank氏との対談をお届けします。


電子書籍に足りないものとは?

——AppBank:今日はありがとうございます。あの「今読みたい本を教えてくれる雑誌ダ・ヴィンチ」編集人の横里さんとお話することができ光栄です。今回は「電子書籍」と「電子書籍市場」という二つのテーマについてお話させてもらいたいと考えています。

この話を始めるにあたり、私が今抱いている電子書籍に対する認識を話させて下さい。いきなりですが、App Store においては電子書籍というサービスは存在していないと考えています。

どういう事かというと、出版社が提供しているコンテンツ(の一部)を「出版社側、メディア側が」電子書籍と呼んでいるだけで、それは「消費者が欲するような言葉」つまり、サービスではないと感じています。また利用者側からするとアプリの中の電子書籍という一カテゴリです。まだまだ電子書籍という言葉が独立したサービスとして消費者に届いていません。

市場において供給側が一方的に提供しているのが電子書籍で、求める側とかみ合っていません。消費者側に求められる電子書籍についてもっと話してみたい、もっと知りたいと考えています。

横里さんは電子書籍とはどのようなものだとお考えですか。

横里隆(以下「横」):ダ・ヴィンチを立ち上げたとき、本の定義について議論になりました。考え始めると「これが本だ!」というものが無いのです。結論としては、360度マルチの好奇心に応えるものが本だよね、ということになりました。

そこから、ダ・ヴィンチという雑誌名になりました。レオナルド・ダ・ヴィンチが360度の方向に向かって才能を発揮していたところから来ています。好奇心のままになんにでも応えていく。

実は本の定義とはよく分からない。本とは知識なのか娯楽なのか、教科書なのか。電子書籍も同じだと思います。データを電子書籍と呼ぶ人もいれば、ゲームをそう呼ぶ人もいると思います。この境界線はこれからますますあいまいになっていくと思われます。

出版業界の人間が「電子書籍」と呼ぶのは、過去の遺産を活かして、今後もこれで食べていきたいという気持ちの表れだと思います。

出版業界には長い歴史とノウハウがあります。そして人類が蓄積してきたアーカイブがあります。それを活用していくと考えると一つ意味があるのかなと。

その何百年と蓄積されたものの中に「本」のイメージや雰囲気、感覚的な何かが刻み込まれていて、それを活用して電子書籍にすることはできます。

そういった過去の資産を活かしてビジネスにしていこうという気持ちの表れや動きが電子書籍であると言えますね。


——電子書籍とは、これまで本として残してきたものを広げていく動きと思えばいいのでしょうか。

横: はい。


——それで作られた物をユーザーが選ぶのでしょうか?

横: 現在の利用者が、これまで本と一緒に体験したものがあるから成り立つという部分はあります。ただ電子書籍には形がありません。10年後20年後形を失っていき「書籍って何だっけ?」ってことになるかもしれない。

そのため、ユーザーにとって電子書籍を嗜好品にするのがむずかしいですね。


——それは紙の本のように、ということでしょうか。

横: そうです。電子書籍が便利、便利ってだけだとだめですね。

そこには何か楽しめる、生理的にそれが好きと思える、「体の記憶に訴える何か」嗜好品としての要素が必要だと思っています。

それが電子書籍には足りません。


——私は紙の本が好きなので、よくわかります。本には持ち運びたい何かがあるし、枕元に置いて読みたくなる何かがあります。

横: 一方で、デバイスは嗜好品になります。iPhoneやiPadが好き、パソコンの○○が好き。今はそのような状況です。

電子書籍と呼ばれるコンテンツには嗜好性が乏しい一方で、デバイスがユーザーの欲望を満たしてくれる、足りないところを埋めてくれている感じはします。

デバイスの数が多いので、混乱を招いているとも思いますが。


(続きます)

第2回はこちらです
第2回「これこそ電子書籍!」- 電子書籍をめぐる対談。ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん

第3回はこちらです
第3回「理想の電子書籍を想像する」- ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん、電子書籍の話

第4回はこちらです
最終回「電子書籍の売り場にも嗜好性を」ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん、電子書籍の話

全体まとめです
【対談まとめ】電子書籍をめぐる対談全4回。ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん


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