第3回「理想の電子書籍を想像する」- ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん、電子書籍の話

ダ・ヴィンチ


としずむです。
電子書籍元年から1年。米国では Kindle Fire も発売され、ますます身近なものになりつつある電子書籍。そんな電子書籍について、ダ・ヴィンチの編集人兼ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長、横里隆さんからお話を伺う機会を頂きました。

テーマは「電子書籍について教えてください。」です。

AppBank氏との対談をお届けします。

第1回はこちらです
第1回「電子書籍に足りないものとは?」- 電子書籍をめぐる対談。ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん

第2回はこちらです
第2回「これこそ電子書籍!」- 電子書籍をめぐる対談。ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん

合わせてどうぞ:ダ・ヴィンチ電子ナビ: あるようでなかった電子書籍のレビューアプリ!コミックからライトノベルまで。無料。


紙フェチと電子的な何か

——AppBank:僕はやっぱり紙の本が好きです。アプリの仕事をしているのに。それってなんなのでしょうか。

横里隆:紙の本は何千年もの期間、耐えてきた形態です。ずっと生き残ってきた形態にはすごい力があります。一方で、私たちが生まれたときから電子書籍しかなかったら、紙の本に力は感じないと思います。そういう意味で私たちは過渡期にあります。


——なるほど。「好きな牛丼チェーン店はすき家か吉野家か」みたいな話ですね。僕は絶対吉野家なのですが、すき家の人たちはすき家で食べてきたんだろうなぁって分かるんです。

横: 僕たちが吉野家好きって言うときは、若い頃にお金がない中、吉野家の牛丼を食べておいしかったという思い出も背負いながら好きだと言っているのだと思います。


——体なんですかねぇ。体が選ぶのですかねぇ。

横: だと思います。音楽で演歌が好きな世代とか尾崎豊が好きな世代とか、みんな同じだと思います。


——そのような嗜好性を、電子書籍は自然に作れるのでしょうか。

横: いいえ。今のままでは足りません。発明が必要です。


——面白かった電子書籍は他にもありましたか。

横: サイバーマンガ 1号。「くだらないなぁ!!!」と心から思える、アニメーションのような電子書籍です。


——面白かった理由を教えてください。

横: 機能とか便利とかの感覚で作られていません。内容も、作り方も遊んでます。同人誌みたいなもので、プロではない方々が楽しんで作っています。人気ランキングもあったりして、そこで利用者とのやりとりもあります。あ、こういうものがもっとでてきたら面白くなると思いました。

「電子書籍の表現が好きなんだ!」みたいなものが増えていかないといけないと考えています。色んな会社が電子書籍化を進めていますが、その動機は、「このままだと出版業界はしりすぼみだから、過去の遺産があるから」です。


——アメリカの電子書籍には嗜好性がいっぱいあって楽しいなぁ!って思わせる物が多いですよ。 Our Choiceも楽しいなぁ。って思えるし、その積み重ねを感じるんだけどなぁ。

——としずむ:アプリで言えば、大辞林はいいですよね。

——出版社ではない人ががんばっていますね。そういうことなんですかね。

横: そう思います。やはり昨年の電子書籍アワードで注目されていた人っていうのはそういった外部の業界の方が多かった。


横里さんが電子書籍を作るなら。

——では、「自分なら電子書籍はこう作る!」というものをを教えてください。

横: まずギミック、機能で工夫が欲しいです。同時に、嗜好性、フェチ心をみたしてくれるようなものが欲しいですね。


——はい。

横: ギミックでいうと、Kindle のような朗読機能は必須です。速読機能も必要です。たとえば120ページの書籍を1ページ1分で読んだら2時間ですよね。そう計算して、2時間で読めるように朗読する機能、もしくは文字の色が2時間で読めるように変化していく機能が欲しいですね。

その表示の仕方に合わせて読めば、とにかく2時間で読めるよ。みたいな。


——なんだかすごいことになっていますね。

横: あと世の中でよくある速読は、本を面でとらえる読み方です。日本語は漢字が多く、漢字はイラストだからそういう読み方が可能になる。もしくは、鍵括弧だけ目で追うという速読法もあります。これらの速読システムを分解して、漢字だけが浮き立つように濃淡を付けたり、鍵括弧だけが目立つようにする、といった機能が欲しい。


——その速読機能というのは、新書とかビジネス書向けですよね。

横: です。小説には向きません。小説はゆっくり読めばいい。


——それは要約機能と同じだと感じるのですが。

横: いいえ、要約とは違います。この本を30分で読むにはどういうスピードなのかを教えてくれたり、キーワードが浮き出てくる仕組みを用意して30分で読めるようにしたい。他には、SNSと連携させて、色んな人が引いた赤線を共有する。そうすれば、みんなが気になっているところだけを読めるようになります。


——SNSは面白いですね。みんなが気になっている部分が浮き出るのはいいですね。受動的で。 

横: そういうことを重ねていくと、ビジネス書や啓蒙書は短い時間で読めるようになります。


——かつサマリみたいな説明も事前にあると素早く読めそうですね。

横: けれどサマリ、例えば amazon とかのレビューなどでも「誰かの解釈」を読んでから本を読むとその人の読んだもの、その人が理解したものになってしまう。でも自分で読むと時間がかかる。その中間だと良いですよね。小説には行間があるので難しいですけどね。


——嗜好性を満たす電子書籍について教えてください。

横: 嗜好性を高めるには「わたしの」電子書籍と感じてもらうことが必要です。紙が優れているのは、持もっていたいという気持ちを高めてくれるところ。

そこには紙の書籍を作って来た人々の偏執的な愛情があります。ママ、読んで!は、「私だけ」と思えるものになっています。そういうことですよね。

装丁・デザインもフレキシブルに選べるようになっていくとよいと思います。たとえば、京極夏彦氏の新作は、単行本、文庫本、新書、電子書籍の4形態で同時発売し、すべて装丁が違います。値段は若干違うのみです。これはよく考えたな、と思います。価値観が多様化する中、ユーザーの嗜好に選択肢を与える売り方だと思います。

紙には、手触りやインクなど、「紙フェチ」を生むものがたくさんあります。電子はありません。「便利だよね」だけがあります。これから、電子書籍という形態に喜びを感じて、「こういう仕掛けがあるのか。ふふふ」とか思いながら作っていく人たちがでてくると、嗜好性がでてきます。


——弊社の村井は、2ちゃんねるを見ながらテレビ見ています。リアルタイムでみんなの解釈を見ながらテレビをみるんです。アニメを見たときも、みんなの解釈をウェブで確認するんです。それは電子的な嗜好性だと思います。

横: ニコ動なんかはまさにそうだと思います。何かをインプットすると、人は出したくなります。これは人間が進化するための本能だと思っています。何かの(情報)を入れて、消化して、出す。この繰り返しが気持ち良いのだと思います。

私が子どもころは、ひょうきん族やドリフを見たら翌日学校で話題にしました。話題にすると、またコンテンツの魅力が増して、さらにインプットが楽しくなります。今は、インプット/アウトプットが同時になっています。これはすごいと思います。



第1回はこちらです
第1回「電子書籍に足りないものとは?」- 電子書籍をめぐる対談。ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん

第2回はこちらです
第2回「これこそ電子書籍!」- 電子書籍をめぐる対談。ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん

第4回はこちらです
最終回「電子書籍の売り場にも嗜好性を」ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん、電子書籍の話

全体まとめです
【対談まとめ】電子書籍をめぐる対談全4回。ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん


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