最終回「電子書籍の売り場にも嗜好性を」ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん、電子書籍の話

ダ・ヴィンチ


としずむです。
電子書籍元年から1年。米国では Kindle Fire も発売され、ますます身近なものになりつつある電子書籍。そんな電子書籍について、ダ・ヴィンチの編集人兼ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長、横里隆さんからお話を伺う機会を頂きました。

テーマは「電子書籍について教えてください。」です。

AppBank氏との対談をお届けします。

第1回はこちらです
第1回「電子書籍に足りないものとは?」- 電子書籍をめぐる対談。ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん

第2回はこちらです
第2回「これこそ電子書籍!」- 電子書籍をめぐる対談。ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん

第3回はこちらです
第3回「理想の電子書籍を想像する」- ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん、電子書籍の話


電子書籍市場について話す。 

——AppBank:改めて、出版社が今、なぜ電子書籍市場の発展において足を止めているのか教えてください。

横里隆:足を止めているというよりは、「わからなくなってる」という感じです。本当にこのマーケットが拡大し、自分たちに利益をもたらすのかがわからない、どういう風にやれば日銭をかせげるのかわからない。ずっと先のことも、目先のことも分からない。


——止めているというのは少し違うと。

横: はい。それで紙に戻っています。今までわかりやすい世界、守られている中で商売をしてきたこともあると思います。やる気がないわけじゃない。けどやり方が分からない。


——アメリカでは電子書籍の方がよい状況です。(それを見て、)電子書籍に力を入れないとつぶれるかも、とは思わないのでしょうか。このままだとリストラしないといけない、今までと同じように社員に給料も払えない、コンテンツも作り続けられない。そうは考えないのでしょうか。

横: 「正常性バイアス」が働いているのだと思います。地震が起こった後にこういうことが起こったそうです。地震が起き、津波がくるという情報が流れてきた。でも、みんな「大丈夫だよね」と正常な日常が戻ってくるという方向に考えが傾いてしまう。いつもと同じ日が必ずやってくると思い込みがちなのです。

出版業界にも同じことが働いているように思います。規模は縮小するかもしれないけど、何とか残るでしょ、と。いつ来るか分からない津波に危機感を維持できない。


——既存の紙の本のビジネスと、電子書籍のビジネスは違います。お互い補完するはずだと私は考えています。価格が異なることについても一切問題ありません。iPhoneで売れたと話題になったおかげで紙の本がもっと売れたという話にもできます。そういった話は他にはありませんか。

横: 紙と電子書籍が融合して…という話は、出版業界では聞いたことはありません。埋もれていたものが、電子化して売れるようになった、というのはあります。本屋で買えないような本や、見つけられないような本を電子にすると売れるという話もあります。また、電子の本は売れる値段に調整できるところがよい、という話も聞きます。


——企画段階で「これは電子書籍にすべきだ!」というのはありますか。

横: ネガティブに企画が生まれる場合はあります。紙の本を出せないとなったときに、オンデマンド出版にするか電子書籍にするかという選択肢が挙がることがあります。それはリスクヘッジのためですね。


——医学書は電子書籍が良いという話は聞きますね。ポジティブなものはありますか。

横: ポジティブに「こういうものこそ!」みたいな動きが出版社から生まれてくるのはこれからなのでしょうね。


——アメリカはなぜ成功したのでしょうか。

横: アメリカはもともと書店が(都市部にしか)ありません。一方で日本は「書店に行ったきっかけで買う」人が4割以上。日本の書店はテーマパーク化しています。大規模書店にいくのが楽しいし、小規模の書店も楽しい。たとえばヴィレッジバンガード。ヴィレッジバンガードの創業社長の菊池さんは、訪れた人が「僕のために本を揃えてくれたこだわりの本屋だ」と思うようにしたんだそうです。


——それであれば、本屋が電子化すべきですね。ヴィレッジバンガードが電子化すべき。

横: それは面白いと思います。あの思想がそのまま電子化したらすごいことになりますね。


——私は電子書籍は「売る人がいないから市場ができない」つまり、本屋がないとずっと思っています。本屋に嗜好性があるならば、本屋が電子化すればいい。iTunesのよりも嗜好性の高い「お店」がほしい。

横: 書店の方が危機感がありますので、あり得ると思います。リアル店舗がアンテナショップとして機能してもいいと思います。両方でフィードバックし合うのもいいですね。巨大な書店と、ヴィレッジバンガードのような、色濃い、専門性のあるところと両方があればいいと思います。


——Google書籍検索のような中身を検索できる機能もそうですけど、「この本屋から買いたい」って要素がどんどん生まれなくては本が売れていかないと思うんです。(電子書籍市場ができるかどうかは)コンテンツも頑張るべきなのですが、結局は流通するかどうかの話だと思っています。

横: そうですね。そういう本屋に引っ張られて出版側も変わってくると思います。「売ってくれる場所」に合わせたコンテンツ作りも始まることになり、さらに回っていきますよね。ヴィレッジバンガードでこそ売れる書籍であったりとか。

例えば長野県安曇野の本屋で売れる書籍を作り、その土地の人に合ったものにする。品揃えも揃える。地元の人はもちろん買うのだけども、全国からやってきた人もネット経由でその書店の書籍を買い、旅行する時にはここの本屋で買ってからいこうということにもなる。その両方の流れがつながるとおもしろい。


電子の本屋についてさらに話す。

——「このリアルの本屋にきてこの本を買えば、電子版が無料になります」というのはどうですか。本屋にいかないと電子版が無料にならない、というのをやってほしい。ネットじゃなく本屋に行かないと電子版が無料にならない。

横: うんうん。それは私たちのような、紙の本に囚われている人にはいいですね。私はそれは出版社がするのがいいと思っていました。本屋と組み合わせるのはもっといいですね。それいいなー。

*バーンズアンドノーブル書店内では、WiFi経由で、電子版の立ち読みができ、データの購入もそのままできるそうです。


——私は本屋が好きなので、みんな本屋に行って欲しいですね。

横: 日本の本屋は、ふらっと行って、何となく手に取って、買ったり買わなかったりする場所。訪れた人を刺激する何かがある場所でもあります。


——電子書籍はその力を実際の書店から借りればいいと思います。


電子書籍端末の話


——話は変わりますが、どのような端末が生き残ると思いますか。

横: ネット社会のキーワードはやさしさだと思います。やさしい端末。使っていて、気持ちがなごむような端末がいいですね。電子端末は便利機器なので、目的に向かってまっすぐ進むような使い方がされています。そこで、風に吹かれてのんびりするような使い方があるといいなと思います。


——使う人の生活を便利にするだけじゃなく豊かにする要素が必要ということですよね。

横: ですね。iPhone には始めからそういった遊び心が込められていますね。その人の使っているケースやアプリを使う人の人間性すら見えてくるような。。。


——電子書籍業界。誰がキーマンになるのでしょうか。コンテンツ側、流通側、デバイスメーカーその他いろいろあると思いますが。。。

横: 去年は出版社以外のクリエイター、ベンチャー企業がそうでした。これからも外部の方が開拓していくのかなと思っています。そして何よりも、ユーザーからのつきあげが必要です。サイバーマンガ 1号の何が面白かったかというと、自分たちはこういう漫画が読みたい、というのがあったところです。コミックやラノベが盛り上がるのは同人誌の世界があるからです。それは出版社がコントロールして作ったものではありません。個人や受け手の人たちがキーマンだと思います。


ダ・ヴィンチがAppBankで連載決定!

——電子書籍ストアが乱立しています。ユーザーは混乱していると思います。

横: そうなればなるほど、ダ・ヴィンチ電子ナビの価値が高まると考えています。


——電子書籍「市場」には基盤がないと思います。もっとみんな買おうよ、という仕組みがありません。それは誰がやるのでしょうか。

横: ダ・ヴィンチ電子ナビがやります。そのためにやっています。


——AppBankでもそういった情報を発信していきたいと考えているのですが、協力していただけませんでしょうか。

横: もちろん!



第1回はこちらです
第1回「電子書籍に足りないものとは?」- 電子書籍をめぐる対談。ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん

第2回はこちらです
第2回「これこそ電子書籍!」- 電子書籍をめぐる対談。ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん

第3回はこちらです
第3回「理想の電子書籍を想像する」- ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん、電子書籍の話

全体まとめです
【対談まとめ】電子書籍をめぐる対談全4回。ダ・ヴィンチ電子ナビ編集長横里隆さん


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