数学の面白さに目覚める!数学ガールガロア理論発売記念。結城浩さんにインタビュー。


AppBankの数学少女 @spring_mao です。

数学ってとても面白いのに、一度ツマづくと戻って来れずに苦手意識を持ってしまう人が多いと思うのです。そんな方にも学生時代の印象を一旦忘れて、読んでいただきたい本が 数学ガール です。もちろん今勉強中の学生さんにも超絶オススメ。学校の勉強とは全く違うアプローチで数学の面白さに出会うことができると思いますよ!

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この数学ガールシリーズ最新刊(こちらは書籍です!)、『数学ガール/ガロア理論』が5月31日に発売されます。それを記念して、私 @spring_mao が著者の結城さんに突撃インタビューをさせていただだきました!

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なんと、最後には結城さんからの豪華なプレゼントもあります!では、ボリューム満点のインタビューをどうぞ。


※太字が @spring_mao の質問です。その後、結城さんの回答という構成です。

数学ガールってどんなお話ですか?


– 数学ガールにまだ出会っていない人に数学ガールを紹介するときには、どのように表現していらっしゃいますか?

そうですね。「数学ガール」シリーズは「僕」という男子高校生、ミルカさんとテトラちゃんという女子高校生、それにユーリという中学生が、数学にチャレンジする物語です。数学・青春・物語ですね。物語の形をとっていますが、数学的な内容は本格的で、なかなか味わえない数学のおもしろさを味わえる本になっています。中高生から大学生、社会人まで広く人気があるんですよ。

数学は苦手だからなあっていう人も、どうか手に取って読んでみてほしいです。数式が出てきても、めんどうだったら飛ばしてください。そうやって読んでいっても、きっと面白さは伝わると思います。数式はたくさん出てきますけれど、かわいらしい女の子もたくさん出てきます。

数学の説明だけじゃなくって、ゆるやかながらもストーリーがあります。読者さんからも、数式部分はかなり読み飛ばしたけれど、高校生ががんばっている真摯な姿に打たれたという感想をいただきます。


– 私は大学卒業したぐらいに初めて数学ガールに出会っているんです。本屋さんの数学啓蒙書や教育系のコーナーでした。

数学ガールの最年少の読者さんは小学校1年生ぐらいですね。まあ小学生は例外的ですが、ちょっと難しい数学に挑戦したいという意欲のある中学生で読んでいる人はいますね。まあ一番多いのは高校生から大学生くらいだと思います。

数学の得意・不得意と、数学の好き・嫌いって別じゃないですか。数学苦手でも好きな人には『数学ガール』は人気が高いと思います。まあ数式を本当に見たくもないという方は、『数学ガール』を手に取ることはないと思いますけれど…。それから、学校で数学はやったけど、あまりおもしろくはないなあ…って考えていたけど、引き込まれるように『数学ガール』を読んだという方はいますね。物語に出てくる彼女たちが数学をやっているのを見て、自分もいつのまにか一緒に考えはじめているんです。そうそう、感想でよくあるのが「数学ガールを読み終わったら、自分も紙と鉛筆を持ってきて、勉強したくなっちゃった」というものですね。

ええと、一般に数学啓蒙書に出てくるキャラクターはみんな賢いんです。ハカセが出し抜けに答えを話しはじめて、子供たちがすぐに「そうか!」と納得しがちです。『数学ガール』に出てくるメンバーも賢いといえば賢いのですが、みんな失敗します。特に主人公の「僕」はよく大きな失敗をする。後輩に教えられてぎゃふんとなったり。

そんな感じですから、数式が苦手な人でも、お話にのって読んでいただけたらいいなと思います。


書くときにはどんな工夫をしていますか?

– いろんな読者の方がいると思うんですが、書くときに工夫していることはなんでしょうか。

『数学ガール』の「あなたへ」というオープニングで「もしも、数式の意味がよくわからないときには、数式はながめるだけにして、まずは物語を追ってください。テトラちゃんが、あなたと共に歩んでくれるでしょう」と書きました。数学があまりできないテトラちゃんという子が「わかりません」っていうことで、他のメンバーがいろいろ考えたり、教えたりしてくれるんです。


読者さんの中には、数学が得意な人も苦手な人もいます。それから数学が好きな人も嫌いな人もいます。読者さんはほんとにバリエーション豊かです。なので、みんなにアピールできるように書いています。

数学が苦手な方にも読めるような、やさしい題材を必ず入れるようにしています。またその一方で、数学が得意な方も飽きないようにしています。数学が得意な方というのは、数学啓蒙書によく出てくる題材はものたりなく感じるものです。「またこの話か」のようになってしまう。ですから、よくある題材を扱う場合でも「こんな話もあったのか」や「ここにつながるのか」あるいは「ここまでやるのか!」という意外性を入れるようにしています。もちろん数学的に正しくなければいけないですが。数学的な嘘が入らないように十分に気をつけています。

あとは、オープニングにも書いた通り、途中を飛ばしてもずっと読めるようにしています。つまり、易しいものから難しいものへと一直線に進むのではなく、難しくなったり易しくなったりという波を作るようにしているんです。それから、途中を飛ばしたとしても、最後まで行き着いて「完全にはわかってないけど、読み通した!」と読者さんに感じていただけるようにしています。

そのようにして、繰り返し読める、再読に耐える本にしたいんです。中学生のときに読む。高校生になって読む。大学生になってまた読む…それぞれの段階で、違う味わいが出てくると思っています。

特に、一年くらいの間をあけて再読するのは『数学ガール』のベストな読み方の一つでしょうね。「再読したら、自分がどれだけ数学がわかるようになったかを実感できます」という感想を読者さんからいただくことがよくありますよ。


キャラクター作りってあるのでしょうか?

– キャラクターのレベルは、読者さんが共感できるように設定しているんですか?

キャラクターがどれだけ数学が得意かというのは、どちらかというと結果論になると思います。キャラクターは作者の都合で勝手には作れないです。私の都合だけでキャラクターを作って動かそうとすると失敗します。もっとも、キャラがかぶらないようにだけは注意していますが。

キャラクターがそれぞれにできること・できないこと・性格・得意なことなどは、ある程度は考えます。でも、そこから先は数学の問題をぶつけることで明らかになってきます。たとえば、テトラちゃんに数学の問題をぶつけてみます。するとですね、テトラちゃんは「とりあえず全部のケースを書き上げてみますっ!」などと言い出すわけです。同じ問題をユーリに与えると「わかんにゃい!条件、足りてる?」と言います。ミルカさんはまったく別のアプローチをとるでしょうね。

キャラクターがいる。問題をぶつける。そうするとキャラクターが動いてくれる。私はその様子をよく観察して、まるでブログを書くように書きとめていく…物語を作る流れはそうなっています。当たり前のことですが、そのようにすると流れが自然になります。無理がないんですね。でも、書き方としては無駄が多くなります。さんざん時間を掛けたけれど問題がうまく解けなかったとか、今回の本のテーマからは外れすぎたとか、そんなことが起きるわけです。そういうときには本に載せずあっさりボツにします。こういうことは何回もあります。


– キャラクターと結城さんの毎日の対話、その積み重ねが本になるんですね?

その通りです。

私は、いろんなところに出かけて、いろんなものを見る。すると、その場にキャラクターもいて、いろんなものに反応するんです。こういう場所は好き。ここは嫌い。この食べ物おいしい! こんなことを思い出した。…人間はみんなそうですよね。場所やものや人に反応する。キャラクターもまったく同じです。

私は、ふと聞こえてくるキャラクターの声をメモします。そういうときによく使うのはiPhoneのSpeedTextというアプリです。歩いてるときにミルカさんの声が突然聞こえてきてドキッとする。あるキャラクターは楽しそうにしているけど、実は寂しいところも持っていたりする。

第4巻にはリサというキャラクターが登場します。一見、無機的なコンピュータ少女に見えます。でも意外と世話好きなことが後からわかりました。そういうことは私が「作る」のではなく、あるときふっと「わかる」んです。文章を書くときにはそれを思い出しながらエピソードを練っていきます。


– 具体的なモデルがいるというわけじゃなく、キャラクターが先生の中でどんどん育っていく感覚でしょうか?

育っていくというか「ああ、この子はこういう性格だったんだ!」とわかっていく感じでしょうか。現実の友達でもそうですよね。付き合っているうちにだんだんわかっていく。


– 読者を意識した「キャラクター作り」というものがあるのかなと思っていました。

自分で想像して作ってはだめなんだと私は思います。単純に考えて作り出したら深みが出ないんだろうな。

キャラクターと、たくさんたくさん対話を繰り返す。本には書かない多くのエピソードがあるけど、その中の一部を本の中に切り出してきました…そんな形にしないといけないんでしょう。本に書かれていない部分がきちんとしていないと、読者さんにも薄っぺらく伝わってしまうのかもしれません。


– 具体的な話に関わる以前に「このキャラクターはこう動く」ということがたくさんあるのですね。

はい。本に登場するときが、私にとって初めて出会うシーンというわけではないですね。私はある程度そのキャラクターと知り合っている。そしてそのキャラクターを効果的に読者さんに伝えるために、キャラクターとの過去のエピソードからもっとも適したものを選んでくる。そういう感じです。「自分の家族」を友達に説明するときって、その家族の特徴をよく表すエピソードを使って説明しますよね。それと似ていますね。


– あの…攻殻機動隊ってご存じでしょうか

はい。少佐、バトー、タチコマ。


– その攻殻機動隊の神山監督の作り方に似ていますね。最初に絵あるいは人物があって、そこからエピソードをたくさん固めていく…

ははあ、なるほど。…少し話はそれるかもしれませんが、映像・映画をお作りになる方というのは、ビジュアルなものでずばりと表現するわけですよね。性格もビジュアルな「カタチ」としてとらえるし、表現する。

私の場合には「この人が数学の問題にぶつかったときには、どういうアプローチをするだろう」と考えますし、それを使ってさまざまなことを表現しますね。簡単な例でいえば、テトラちゃんはとにかく根気で勝負。ユーリはロジカルなところに興味がある。ミルカさんは数学ガールの世界では”The Answer”となっている。


– その中で結城さんはどこにいますか?

おっと。ええと、そうですねえ。「僕」かなぁ…一番近いのは「僕」かもしれませんね。

『数学ガール』の物語は僕の視点でのみ語られます。心理描写があるのは「僕」だけです。テトラちゃんなり、ユーリなり、彼女たちの心のうちというものは、口に出さないと「僕」には聞こえないですね。私自身の立場として一番近いのは「僕」ですかね。うーん、でも、彼女たちの中の一部分はもちろん自分でもあり、奥さんでもあり…


– 「僕」になったり、それ以外の立場になったりするのですね。

そうですね。書いている途中はいろんな視点を渡ります。はじめは書きたいことを書く。その後、読者のつもりで読み返す。すると、気付きます。ここでユーリがこんなこと言うっておかしくない?というように。チェックが終わったら書き手に戻って書き直す。ちなみに朱入れをするときにはiPadやiPhone上のGoodReaderを使っています。読み返しと朱入れを繰り返して完成に向かいます。とても時間がかかります。でも、それは必要な時間です。



iPadのGoodReaderで朱を入れる様子を見せていただきました!


数学的な内容の組み立て方や題材の選び方は?

– 数学が得意な人にも飽きないようにというお話がありましたが、数学的な内容の解説はどうやって組み立てているんでしょうか?

たとえば『数学ガール/フェルマーの最終定理』や『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』の最終章では、それぞれの定理を説明するという大目標があります。それで、その定理の納得できる説明のために必要なものを一生懸命に考えます。そこはキャラクターとは別にきちんと作ります。各巻とも10章構成なのですが、だいたい20個くらいの項目を考えます。そしてそれぞれの項目をブレークダウンしていきます。最後に結び付くように、最高に効果的で、最高に面白くて、最高にわくわくするような構成を考えます。少なくともそう努力します。どんでん返しがあったり、キャラクターごとにいろんな解き方ができるような工夫を考えます。そして、彼女たちに「じゃあ、この問題を考えてみてね」と出題することになります。そういう作り方をしていると、1章作るのに1ヶ月ぐらいかかります。実際に本になる分量の3倍くらいの原稿は書いていますね。

先ほど、私がキャラクターの中で一番近いのは誰ですか?という話がありましたね。問題になるのは実は数学の能力です。私は数学科ではないんですね。テトラちゃん・「僕」・ミルカさんと比べてみると、「僕」と私(結城)は同じぐらいの数学レベルだと思います。テトラちゃんは私よりはできなくって、ミルカさんは私よりはるかにはるかに能力が高いんです。そこで困るのが、どうやって自分より能力が高い人を表現できるかという問題です。ただのお話なら「そこで彼女は難問を解いてみんなが感動した」と書けばいいんですが、『数学ガール』では本当に解く様子を見せなくてはいけない。そしてミルカさんは本当に正しく説明する。数学者からも「なるほど、なかなかいいね」と言ってもらえるような解き方をしてもらいたいんです。

私は自分よりも数学的に高い能力を持っている人を描く方法を「時間圧縮」と名付けました(笑)。たとえば、私が3ヶ月ぐらい一生懸命勉強したことを、ミルカさんは一瞬にして解けばいいんです!そうすれば私よりも能力が高い人を描ける。「これはいい方法だ!」と思ったんですが、後で気づいたことがあります。それは作者の私はほんとうに時間を掛けて勉強しなくちゃいけないってことです!(笑)でも、読者さんがミルカさんを通して楽しんでもらえれば私はうれしいですね。

『数学ガール』は、数学をよくわかっている人にも楽しんでもらえる本にしたいです。ですから、ミルカさんが数学的に正しいことを言うというのは重要なファクターだと思って大事にしています。

『数学ガール/フェルマーの最終定理』も大変でしたが『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』はもっと大変でした。「ゲーデルの不完全性定理」のことを自分はよく理解していたつもりだったんです。でも、書いているうちに「これはなんか違うぞ…」と気がつきました。メールを通して詳しい方に教えていただいたり、数理論理学の本を買ってきて、一年ぐらい掛けて勉強したりしました。あるレベルまで理解した上で書いたわけです。まあ、理解したことを書くというのは当然と言えば当然なんですが。


– アドバイスをうかがう人がいらっしゃるんですか?

本を書くときに、何人かの方に「結城の本をレビューしていただけませんか?」とお願いしています。おおよそ20人くらいで、みなさんボランティアというか無償でお願いしている方々です。これまでに何度もお願いしている方も多いですね。1章書くごとにレビューアさんにPDFを送って読んでもらっています。細かい指摘のこともありますし、この章は全てまちがっていますと言われて、章をまるごと書き換えたこともありました。レビューアさんにはとても感謝しています。


– 「書くこと」と「学ぶこと」は平行してやっていらっしゃるんですか?

先日書き終えたばかりの『数学ガール/ガロア理論』の話をしますね。「ガロア理論」という言葉は書く前から知っていました。ガロアという天才数学者が決闘して亡くなった話や、群論の話や、「5次方程式に解の公式がない」ことに関連しているという話はわかっていました。でもそんなに詳しく知っていたわけではないです。


フェルマー、ゲーデルと来たので、次の大物としてガロア理論をやってみたいなと思いました。それがおおよそ一年ぐらい前です。
私はなぜか「一年後になったら、ここまではたぶん理解できているに違いない」という見積もりができるようです。「一年掛ければ、この本を書くくらいまでは理解できているだろう」と判断するわけですね。
学びながら書くという方法は効果的です。読者がどこでつまずくかが、よくわかるんです。なぜなら、自分もつまずいたからです!(笑)

数学書はよく読みます。数学者は正しいことをしっかり書こうとしてくれるのでほんとに助かります。『数学ガール/ガロア理論』の参考文献は30冊くらいあります。実際にはもう少し読んでいます。本を学んで理解して、各章を書いて、別の本を読んで理解がずれていないか確かめています。レビューアさんに読んでいただいて、大外しをしていないかを見てもらいます。

参考文献という意味でつらかったのは『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』を書くときですね。一般的な本の中には間違っている本がとてもとても多いんです。執筆前にはあるレビューアさんに「どの本が信頼できるでしょうか」と尋ねたりしました。そうしたら「不完全性定理の本を書くのはやめたほうがいいですよ」と言われてしまいました。ほぼ確実に誤りをおかすからだと思います。


– 必ず迷う迷路だからやめたほうがいいということでしょうか?

はい。落とし穴はたくさんあるし、説明の文章もまちがう可能性が高いということなんでしょう。私もそういう大変なことになりかねないなとは思っていました。でも、しっかり書けたら、喜んでくださる読者さんもたくさんいるだろうと思いましたのでがんばりました。

『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』を出した後、多くの数学者さんからほめていただいたり、特に岩波文庫の『不完全性定理』を翻訳・解説なさった京都大学の林先生からほめていただいたのはとてもうれしかったです。林先生はコミック版もほめておられましたね。


数学を題材に選ばれたきっかけは?

– もともとプログラマ向けの本を書かれていた結城さんが数学を題材に選びはじめたのはなぜなんでしょうか?

もともと「お話」を作るのは好きでした。ちょっとしたお話を作って、自分のサイトで公開していました。クイズを出すのも好きで、数学クイズとお話を混ぜたようなものも書くようになりました。その時に、お話の中に「女の子」がよく出てくることに気付きました。数学の問題を出す女の子っていうイメージが自分の中にずっとあったんです。

いくつか話を書いているうちに、いつの間にかミルカさんというキャラクターが出てきました。

LaTeXという数式組版ソフトを使って、数学と女の子が出てくるお話をWebで公開していると、こういうお話を好きな人たちから反響がありました。読んだ人からの反応があるとうれしいじゃないですか。本になるとはまったく思っていなかったんですが、そうやっていくつかのお話を作っていました。

あるとき、プログラミングの本の改訂が重なった年がありました。改訂版を作るのは楽しいですけれど、何か新しいものを作りたい!という気持ちも強くありまして…Webで公開していた数学と女の子の物語をプリントアウトして持っていきました。編集長さんは「売れないんじゃないかなあ」と思ったでしょうけれど、いろいろとご尽力していただき、出版までこぎつけました。

結果的に、私たちの予想をとんでもなく越えるほど読者さんが読んでくださってですね、無事に2巻目、3巻目…として出版してもらっています。今年の2012年で5冊目が出ることになります。2007年からなので6年で5冊というペースですね。出版社さんでは「数学ガール」シリーズをたいへんプッシュしてくださっていて、電子書籍にもなりました。いまはBooks Lab HDというアプリ内で刊行されています。
「数学ガール」シリーズは、ソフトバンククリエイティブさんから出版していますが、メディアファクトリーさんでコミカライズされ、さらにBento Booksさんで英語版も出版されました。


– シリーズ刊行を最初から考えていらしたと思っていました。

ぜんぜんそういうことではないです。

「数学ガール」シリーズを書くときには毎回「この巻が最後でもいい」という気持ちで書いています。毎回全力投球しようという意味ですね。ですから、いきなり2巻目で「フェルマー」という大物に挑戦しました。何しろ2巻目にして「最終定理」ですから…その後どうするんだと自分でツッコミを入れましたね。「この題材は次回に回そう」のように引き延ばすことはしていませんね。そんなこんなで、ようやく5巻です!


数学ガールはひとつの教育のカタチ

– 数学ガールでは常に「対話」で話が進められますよね。読みながら、本当にいい教育っていうのは「数学ガール」のようなものじゃないか?と思うことがあります。結城さんは、数学教育についてどう思われますか?結城さんご自身が数学教育をするということは考えませんでしたか?

私の父は、理科の教師でした。自分が本を書き始めて気付いたのは本を書くことも一種の教育であるということです。私は「人に何かを伝える」ことに強烈に関心があります。相手が「なるほど」ってうなずく瞬間が大好きです。逆に「ちょっとわかんないけど、いいや」みたいな瞬間はとてももどかしく感じます。難しいことを噛み砕いて伝える。相手が理解しやすい例を出す。そういうことを考えるのが大好きなんです。

数学教育の専門的知識はありませんけれど、人に教える・人に伝えることには強烈な関心があります。

そういえば、2012年の4月から「コミュニケーションの心がけ」というメルマガも始めました。人に教えること、人に伝えること、わかりやすい文章を書くこと、本を作り上げること…について毎週書いています。ブログやTwitterとはひとあじ違う情報発信ができたらいいなと思っています。

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」(メルマガ)

自分が学んだこと、自分が知ったことが魅力的であればあるほど、他の人にうまく伝えたいって思いますよね。そして相手に伝えたときに「へえ!なるほど、そうなんだ!」という反応をもらう。それは大きな喜びだと思います。学校の先生も、生徒が「なるほど」って言いながら目を輝かせる瞬間って最高の喜びを感じるんじゃないでしょうか。そういう喜びは、教育という活動を根底で支える力です。

私自身は直接教える仕事はしていませんけれど、「教えること」は素朴に好きです。「教育学」とかそういうことはちょっとわからないですが。
生徒に「すごいすごい、おもしろいなあ!」って思ってもらえれば、あとは誰しも自分から学び始めるような気がします。
先生が教えたことがすべてだとか、ここに書かれていることがすべてだ、というのは、何というか「閉じた学び」という感じがします。私が好きなのは、もっとずっと「開かれた学び」です。教え始めたら「言わないで言わないで!そこから先は自分で考えるから!」と生徒に言ってもらえたらいいなあ、などと思います。
そういう気持ちもあって、「数学ガール」シリーズの末尾には「参考文献と読書案内」というものを付けています。ここから先は自分で翼を広げて、大きく羽ばたいてほしい。ねえ、できるよね?だって、ほら、この本をここまで読んできたじゃん!大丈夫だよ!ってはげましたいです。


– 「数学ガール」に対しては、ちゃんと向き合いたい本だと感じます。

若い人はいつも「自分がしっかり打ち込める何か」を求めています。真剣にぶつかるのが好きなんです。若い人は本気でぶつかる何かを求めていますし、本質にせまる何かを見分ける力も持っています。私は数学者ではないので、数学の論文を書いたりすることはできないんですが、「数学ってすごいよ!学ぶことってすごいよ!」という気持ちが伝わり、数学の輝きが伝わる本を書きたいと願っています。


– ほんとうに素敵な話をありがとうございました。「数学ガール」シリーズを通して、たくさんの人に数学の輝きが伝わると私も嬉しいです!!最新作『数学ガール/ガロア理論』も楽しみにしています。本日はありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。


最新刊が楽しみすぎる!読者プレゼントはこれまでの作品

結城さんが楽しそうに語ってくださり、 数学ガール 大ファンの私には宝物のような時間でした。まだ数学ガールに出会っていない方にも、結城さんが 数学ガール を通して伝えたいと思っていることを感じていただけたのではないでしょうか。

インタビュー後、持参した本にサインまで書いていただきました!感激です!ありがとうございます!



さぁ、早速 iPadで読める「数学ガール」シリーズ でキラキラした高校生たちの青春ストーリを楽しんでください。

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私は最新刊『数学ガール/ガロア理論』を一緒に読むパートナーをすでに見つけました!発売が楽しみすぎる。

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