ライター塩田信之による『バロック▲シンドローム』レビュー。ダークで歪んだビジュアルノベル

PSの良作がスマホアプリで登場。スティングのダークなビジュアルノベル『バロック▲シンドローム』のレビューをお届けします。(文:塩田信之)

『バロックシンドローム』と『バロック』の関係


1月11日にスマホアプリの配信が始まった『バロック▲シンドローム』は、1998年5月にセガサターンで発売された自動生成3Dダンジョンを舞台とするアクション性の高いRPG『バロック』から派生した外伝(前日譚)作品で、2000年7月にプレイステーションで発売されたゲームの移植版です。

このゲームは元になった『バロック』ともども、今回この記事を担当しております私こと塩田信之にとって、ひとかたならぬ思い入れのある作品であったりします。

というのも、私は『バロック』の攻略要素も含んだファンブックとして、『バロックワールドガイダンス』(ソフトバンク刊・現ソフトバンククリエイティブ)という書籍を当時制作したのですが、その本にこのゲームの原型となった小説『BAROQUE SYNDROME』も収録させていただいていたのです。

この小説は、当初『バロック』発売に合わせて雑誌『セガサターンマガジン』で連載されていたもので、ファンブックには執筆を担当した清水マリコさんのインタビュー記事と合わせて再録させていただきました。

「大熱波」と呼ばれるカタストロフを生き延びた人々が暮らす、まったく異質な世界を舞台とした原作ゲーム『バロック』とは異なり、現代の東京を思わせる都市に暮らす若者たちを描いたこの小説は、ゲームの前日譚として「大熱波」が起こる前の世界を描いた作品です。

ゲームの舞台となる世界への変化や、「異形」と呼ばれるモンスターがどのように誕生したのかを語る内容となっています。


その小説をビジュアルノベル化した作品が、『バロックシンドローム』です。

ストーリーの大まかな流れは小説とほぼ同様ですが、新たなキャラクターが追加され、選択肢を選ぶことで変化するストーリーや、物語の結末も変わっています。

追加されたキャラクターには、物語の展開上ヒロインの立場となる女性が複数いますし、そのキャラクターがヒロインとなる物語ほとんどが新たに追加されたシナリオということになります。

なお、『バロックシンドローム』の物語は『バロック』を遊んでいなかったとしても問題なく楽しめるように作られています。

もちろん、『バロック』を遊んでいれば、さまざまな場面で関連性を見出すことができますから、よりディープに楽しめるはずです。

事前知識の有無など気にせず、物語の雰囲気やキャラクターが気に入った方なら、お勧めできます。

『バロックシンドローム』のキャラクターとストーリー

この物語は、妄想に取り憑かれた「バロック」と呼ばれる若者たちに、妄想に適合するような物語を作って売る「バロック屋」という非合法の商売をする主人公を中心に、その利用客であるバロックたちをはじめとするさまざまな人物との出会いを通じて進んでいきます。

物語は、宮坂文との出会いをきっかけに、街を騒がせている猟奇的な連続殺人事件について調べることとなり、現場を訪れることで事件を引き起こしたとされる「異形」と遭遇する……といった流れになります。

選んだ選択肢によって出会う人物が変わってきたり、手掛かりとなる情報や訪れる場所の順序などが変わってきます。特に、ヒロイン格の女性たちとどう接するかによって、物語は大きく変わることになります。

どんなキャラクターが登場するのか紹介していくことにしましょう。

金沢キツネ

主人公。「バロック」から妄想の内容を聞き、それを参考にひとつの物語を作り上げて提供する「バロック屋」を営む男性。

非合法の商売であるため、普段は「ライター」だと名乗っている。

ゲームの進行役であり、映し出される画像は彼の視野であることが多いため、彼自身の姿は基本的に映らない。

鈴木スズメ

主人公の友人で、政府が隠しているような情報ですらアクセスできる凄腕のハッカー。その能力を駆使して、主人公では手に入れることが難しい情報を提供してくれる心強い存在。


普段は黒ずくめの服装を身に着けているが、違った姿を見せることも……

宮坂 文

キツネの元を訪れた「バロック」の少年。趣味は放火だといい、世界を焼き尽くすようなバロックを探している。


キツネは「感覚球」、「天使」、「異形」といったキーワードを含む彼の話を元に物語を作り上げるが、普通の「バロック」とは違って彼はその物語を受け入れようとしなかった。

高田タスク

キツネとその同行者が何度も出会うことになり、危険な状況から救ってもらうことにもなる特殊部隊に所属する青年。


「スペシアル・ハンター」あるいは「異形殺戮部隊」の一員であるタスクは頼もしい存在だが、非合法な仕事を生業とするキツネとしては、正体を知られたくない相手でもある。

渡辺ルビ

「異形」によって起こされている猟奇殺人事件の現場にいた少女。背中にはその時異形によってつけられた、無残な傷跡がある。


明るい性格でキツネにも屈託なく接するが、傷跡以外にも謎が多く、宮坂文とも浅からぬ関係があるらしい。

原作小説におけるヒロインであり、物語の受容な鍵を握る人物でもある。

杉本リエ

「ストーカー」呼ばわりしたかと思えば、危険な場所についてくるなど、キツネを振り回すような講堂を取る「イマドキ」のJK。


ビジュアルノベル版で追加されたヒロインのひとりで、ルビとは友達でもある。

実は行方不明になっている両親がいて、キツネが調べる事件に深く関わっている。

多由良アミ

「双子の超能力者」としてテレビにも出演する、マニアの間で有名な女性。病院に立ち寄ることになったキツネと出会い、「大切な人を失う」と予言めいたセリフをいう。


リエ同様、ビジュアルノベル版で追加されたヒロインのひとり。既に亡くなっている姉アサキとともに、謎の核心に関わる人物でもある。

上級天使

物語の核心に迫ったときに表れる、天使のように背中に羽根の生えた男性。


もちろん、真相に関わる重要な人物なのだが、『バロック』を遊んだことがあれば「ピンとくる」はず。

物語を彩るのはグロテスクな姿をした「異形」たち

物語中には何体もの「敵」が現れ、襲ってきます。それらは「異形」と呼ばれている通り、ことごとく異様な姿をしており、不気味ながらもそれが『バロック』ともども作品の魅力のひとつになっています。

近年では実写映画『THE NEXT GENERATION パトレイバー』でレイバーの原型制作なども手掛けている造形作家・鬼頭栄作さんが原形制作を手掛けた「異形」たちも、ここで一部紹介しましょう。

なお、物語中「異形」たちの名称は表示されませんが、これらについては『バロック』と共通しています。

ライア

裸の女性の上半身に、昆虫あるいは植物に似た下半身がついた姿。腕にはカマキリのような「鎌」がついており、それを振り下ろし相手に切りつける攻撃を得意とする。


壁や床に現れるカマキリの卵に似た固まりから発生する。

ニクリとニクラ

ふたりの人間の顔が見えるが、それは生物の内臓のような肉の塊に埋まっている奇妙な姿。


宙に浮かんでおり、前面に見える縦のすじから左右にぱっくりと開き、巨大な口となる。

ブルガー

異様に膨れ上がった姿ではあるが、人間の女性を思わせる形状を持った「異形」。キツネが真相へと近づいていく中で遭遇することになる。


この「異形」を連れている人物は、「レイラ」という名で呼んでいた。

物語の終盤は、「神経塔」と呼ばれる異様な塔へ

調査が進み、真相へと近づいていくと、キツネたちは一般の街区からは隔離されている「特別地区」へ向かうことになります。目的地となるのは、およそ人間が住む場所とは思えない異様な姿をした「神経塔」。


そこは『バロック』の主な舞台となるダンジョンだった場所です。

もちろん、それを知らなくても物語を進める上で支障はないのですが、知っていれば「大熱波」以前から異様な姿で建っていたことに驚きや感動を覚えるかもしれませんね。

なお、神経塔の中は機械音や人間の悲鳴などを思わせるが鳴っているため、ヘッドホンをつけていなければ「バロック」になってしまいます。これも、世界の変化に関わっている要素です。


神経塔の奥で何が起こり、世界がどのような災禍に見舞われることになるのかは、実際にゲームをプレイして確かめていただきたいと思います。

『バロック』という言葉は芸術・建築様式の名称でもありますが、「歪んだ真珠」という意味もあるとされます。

もしかしたら、ゲームが発表された当時よりも、社会が歪んでしまったようにも思える現在のほうが物語を理解しやすいと言えるかもしれません。


オリジナル版との違いについて

2000年に発売された『バロックシンドローム』と比べて、スマホアプリ版では以下の部分が調整されています。

・画面比率を1:1から4:3に変更
・セーブ領域を10個に変更
・中断再開機能追加
 セーブをし忘れた場合も途中から再開できます。
・スキップ機能を追加
 「既読スキップ」「全文スキップ」「オートプレイ」の3種類のタイプを選べます。
・ログ機能の追加
 見逃したセリフを確認できます。

バロックシンドローム BAROQUE SYNDROME ・販売元: sting co.,ltd
・掲載時のDL価格: ¥600
・カテゴリ: ゲーム
・容量: 86.1 MB
・バージョン: 1.0.3
※容量は最大時のもの。機種などの条件により小さくなる場合があります。

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