『FGO』開発秘話も。ディライトワークスのプロジェクトマネージャーが実際の業務内容を紹介

2月27日(水)にディライトワークスで開催された講演「DELiGHTWORKS Developers Conference (DDC) vol.3 ゼロから始めるプロマネ生活」のレポートをお届けします。

講演概要


「DDC」は、『Fate/Grand Order(FGO)』の企画・開発・運営などを手がけるディライトワークス(DW)による技術勉強会。

第3回となる今回は、「DELiGHTWORKS SWALLOWTAIL Studios」所属のプロジェクトマネージャー(PM)戸田 圭祐(とだ よしまさ)氏が登壇。PMという職種の業務について、DWでの実体験を交えつつ語られました。

▼「DDC」の各講演は想定ターゲット層に合わせて内容が調整されています。今回はPM志望者や新人PMを対象とする「甘口」設定とのこと。


▼DWの会社概要(2018年11月時点)。


戸田圭祐氏 プロフィール



アニメ制作会社で制作進行を経験後、アプリ開発会社にて、プランナー・ディレクターとしてエンタメアプリやゲームアプリ開発に携わり、2016年にディライトワークス株式会社へ入社。

『Fate/Grand Order』のデザインセクションや、『Fate/Grand Order Gutentag Omen Adios』のPMを経て、『Fate/Grand Order Arcade』、『Fate/Grand Order Duel -collection figure-』など、現在は様々なプロジェクトのPMとして奮闘中。

講演公式ページより)

ディライトワークスにおける「PM」とは

はじめに、世間における一般的な「プロジェクトマネージャー」の定義が3種類紹介されました。

▼IPA 情報処理推進機構による定義。


▼Wikipediaによる定義。


▼マイナビAGENTによる定義。


【各定義の要約】

IPA
情報処理
推進機構
計画した予算、納期、品質の達成について責任をもってプロジェクトを管理・運営する者
Wikipedia プロジェクトの計画と実行において総合的な責任を持つ職能あるいは職務
マイナビ
AGENT
プロジェクト全体の進行を管理し、予算や品質、納期、成果物のクオリティに対して全責任を持つ役職

しかし実際には、業界・企業・プロジェクトによってPMの役割は異なっているとのこと。DWでは、役割が以下のように分担されているそうです。


【DWにおける役割分担】

プロデューサー プロジェクトそのものや予算の管理・責任
ディレクター 作品のクオリティの管理・責任
プロジェクト
マネージャー
チームやスケジュールの管理・責任

DWにおけるPMには、「チームの管理責任者として、スタッフ全員のコミュニケーションハブとなり、進行を阻害する課題を発見・解決して、円滑にプロジェクトを進行させる」というミッションが課されているそうです。

▼DWにおけるPMの業務を示す図。一般的なPMに対し、DWのPMはプロデューサーやディレクターと管理業務の役割分担がはっきりしていることがわかります。


▼DWのPM像を定義・発信するための「プロジェクトマネージャー ガイドブック」も戸田氏の担当案件とのこと。もちろん今回も配られていました!


PMがゲーム開発を成功へと導いていく


戸田氏はPMが必要な理由について、「プロジェクトを全体からサポートし、クリエイターがおもしろいものの開発に集中できる環境を整え、開発を成功に導くため」と説明。PMの具体的な仕事や失敗談を紹介しました。

■「開発外」のタスクへの対応

戸田氏はPMの重要な役目1つとして「誰かが必ずやらなければいけないタスクを率先して片付けること」を挙げ、具体例としてゲーム開発中に発生する「開発外」のタスクを紹介しました。

▼1つ目の例は「コミュニケーションの問題」。対立するスタッフ同士の間に入って話を聞き、円滑なコミュニケーションのための働きかけをおこない、スケジュールの遅延を防ぎます。


▼2つ目の例は「環境整備の問題」。必要とされるツールやアセットに関して、本当に未導入なのかなどを確認した上で、各種申請や依頼をおこないます。


▼3例目は「予期せぬアクシデント」。ケガや病気で欠員が生じたら、その人の業務の進捗や最新データを確認し、穴埋めできるスタッフを探します。


■コミュニケーションに関する失敗談

戸田氏の失敗談として、過去のコミュニケーションにおける事例が紹介されました。



【失敗談のあらまし】

  • まだそれほど面識のないスタッフからチャットで質問が。
  • ひとまず事実に即した内容を送信。
  • 返答がないので状況のリマインド。良かれと思ってアドバイスも追記。
  • ……が、返答なし。
  • 後日、別の方からそのスタッフが怒っていると聞く。

【原因】

  • 受け手側からだと、チャットの文章が注意されたように見えていた。(※関係構築前のため、ネガティブな受け取られ方をしていた)

【その後の取り組み】

  • 開発スタッフとの良好な関係の早期構築。
  • 送る文章の内容を、受け取る相手の気持ちになって精査する。
  • チャットの対応と合わせて、直接会って意図のフォローをおこなう。

現代は業務連絡をチャットでおこなうことが一般化していますが、チャットだけでは伝わらないニュアンスもあります。先の失敗を経た戸田氏は、直接会って重要事項をフォローすることを大切にしているそうです。

『FGO』のプロジェクトマネジメント実例

さらに詳細な例として、過去の『FGO』におけるプロジェクトマネジメントの実例が紹介されました。

なお、戸田氏はすでにスマートフォン向けの『FGO』の開発から離れているため、紹介された実例は最新のものではないことにご注意ください。

■PMの管理業務(一例)


進捗管理
・マイルストンの管理/運用
 ∟スケジュール管理
 ∟タスク管理
・課題管理
 ∟課題予防
 ∟課題の発見/共有
 ∟課題解決

データ管理
・保管ルールの管理/運用
 ∟管理リストの運用
・ツールの選定と管理/運用

機材・備品管理
・稟議申請
・購入
・物品管理
 ∟使用者リストの作成/運用
 ∟配布/回収

MTG(ミーティング)管理
・会議帯設定/管理
・アジェンンダの作成
・MTGのファシリテート
・議事録作成/共有

情報セキュリティ管理
・情報開示方法の設定/運用
・セキュリティレベルの設定/運用
・社外共有フローの管理/運用

人員管理
・体制表の作成と管理/運用
・職務権限範囲の設定/管理
・座席管理

外注管理
・候補探し/選定
・折衝対応
・検収

■『FGO』開発におけるタスク管理の実例

膨大な役割の中から、今回は「タスク管理」の実例が紹介されました。

▼当時の『FGO』開発では、プロジェクト管理ツール「JIRA Software」が使用されていました。


【FGOの過去事例・イベントリリースまでの流れ】


胎動編 ●シナリオの発注→納品
●シナリオスクリプト開始
●イベント立て付けの決定
●立て付け説明会の実施
始動編 ●新機能説明会
●仕様レビュー
●アセット発注
●タスク分解(チケット化)
アプリ実装編 ●実装優先度決定
●担当者決定
●機能実装
●QA(品質管理)
※JIRAで申請アプリ用の「修正バージョン」を作成。イベントのバージョンとは別途にタスクを管理。
追い込み編 ●デザインデータ納品
●マスタデータ完成
●TYPE-MOON監修/修正
●QA
※イベントリリース用の「修正バージョン」を作成。期間中にアップデートがある場合は、すべて別のバージョンとしてタスクを管理。

【胎動編】

シナリオが売りとされている『FGO』の開発は、シナリオに合わせたクエストなどをユーザーに楽しんでもらうために、発注したシナリオが納品されてから始まります。

シナリオが納品されたら、まずはイベント企画班により、シナリオにもとづく実装サーヴァントや遊びのスタイルといったイベントの大まかな立て付けが決定。

続いて実施されるイベント説明会では、イベントへの認識や目標を共有するために、開発スタッフ全員が集められます。

ゲームとして必要な要素を考えるためのシナリオ分析も、この段階でおこなわれます。

【始動編】

「始動編」にあたる段階では、仕様班から全スタッフへ、新機能に必要な仕様の説明会が1〜2時間ほどおこなわれます。

実装する機能は、ほかのタスクや既存の機能も考慮しつつ機能のレビューをおこなってから決定されます。ちなみに『FGO』の機能実装は改善系のものも多いとのこと。

▼実装機能が決定すると、アセット発注やタスク分解がおこなわれます。


【アプリ実装編】

基本的に、アプリに必要な機能が1つだけで完結することはありません。「アプリ実装編」にあたる段階では、機能の実装順序が決められます。

この段階ではまだ足りない素材がありますが、仮のマスターデータを作ってQA(品質管理)をおこない、ストア審査へと提出。

ストア審査から戻ってきたデータは1〜2週間ほどで調整されます。

【追い込み編】

リリースが近づくにつれて、協力会社からのイラスト納品などが進み、各種データが実装。この段階でTYPE-MOONからの監修および修正を受けつつ、先の「アプリ実装編」から続けてQA作業もおこなわれます。

『FGO』では驚きの提供やネタバレ回避のために、イベント期間中にこまめなアプリアップデートが実施される場合があります。そのような場合にはすべてを別のバージョンとしてタスクを管理しているとのこと。ちなみに、過去には1つのイベントに10種類のバージョンが必要だった事例もあったそうです。

ちなみに、ディライトワークスのQAチームはバグ探しとクオリティチェックを併行しているとのこと。QA部門からは、高難易度クエストの開発中に「おもしろくない/クリアできない」といった指摘が挙がることもあるそうで、その結果を受けて調整をおこなうこともあるようです。

つまり、レベル設計が絶妙なクエスト設計は、QA部門の皆さんや開発の方がおもしろさにこだわって尽力しているからこそのものなのですね。いつもおもしろい高難易度クエストをありがとうございます!

▼問題発生時には複数の解決策が検討されます。なお、左側のバツやマルは絶対的な有効性ではなく、今回紹介された事例における成否を示しています。


■「計画」と「変更管理」でマネジメントする


戸田氏はPMの仕事を「計画通り進まないことを受け入れ、遅延・変化したタスクを管理すること」と総括しました。

日々状況や環境が変化する開発現場においては、物事が計画通りに進まないことは多々あることです。PMがプロジェクトを成功に導くためには、事前の「計画」だけではなく、「変更管理」も必要であるとのことです。

▼プロジェクトマネジメントの手法はさまざまですが、いずれも目的は「計画」や「変更管理」です。


PMの本質は「人と人を繋ぐこと」


戸田氏はPMに必要なスキルとして「コミュニケーション能力」を挙げました。ただしこの「コミュニケーション能力」とは、おもしろい話が得意なことや、さまざまな相手へ気軽に声をかけられることだけではありません。

ゲームは多くの人による共同制作物なので、開発を円滑に進めるためには、「物事を正しく把握・理解し、正確な情報を相手に伝える能力」が必要になります。

つまり、正確なアウトプットができることこそが、戸田氏がPMに必要と考える「コミュニケーション能力」なのです。

まとめ〜PMは「自走する歯車」である〜


最後に戸田氏は、開発現場におけるPMの役割を「縁の下の力持ち」あるいは「黒子」と説明しました。

エンドユーザーからは見えづらく、決して花形とは言えない職業であるとしつつも、開発現場になくてはならない、重要な仕事でもあると断言。

課題解決のために自ら動きながら周りを巻き込んでいくPMを「自走する歯車」と喩えて、講演を締めくくりました。

▼まとめパートでは、すでにPM業務に従事している方と、講演でPMに興味がわいた方へ、戸田氏からのメッセージが伝えられました。



▼「DCD」の講演終了後には懇親会が実施されます。今回も、同じテーマへの興味で集まった参加者同士がピザを囲んで大いに盛り上がっていました。


次回予告

■DDC vol.4


次回の「DDC」はディレクターが「決める」ためにどう考えるべきかがテーマ。

DELiGHTWORKS SWALLOWTAIL Studios(DSS)所属のディレクター・下舘尚貴氏が登壇し、ディレクターとしてゲーム開発に携わる中で大切な、意思決定のためのノウハウが語られるとのことです。

【日時】
2019年3月20日(水)
開場:19:30~
開始:20:00~

【タイムテーブル】
19:30~ 受付
20:00~ 開始・挨拶
20:05~ 講演
(休憩)
21:10~ 懇親会
22:00~ クローズ

【対象】

  • ゲーム開発経験者(担当職種問わず)

※当日は名刺必須。

【定員】
20名
※応募者多数の場合は抽選。

【参加費】
無料

詳細や参加方法は「DDC vol.4」イベント告知ページでご確認ください。

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(C)TYPE-MOON / FGO PROJECT

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