前編: 大ヒットゲーム【ケイオスリングス】の成功を探る!スクエニ安藤武博氏インタビュー。
世界中で大ヒットしたゲーム、ケイオスリングス(参考: CHAOS RINGS ケイオスリングス)リリースからしばらくたち、その成功の秘密を探ろうとスクウェアエニックスにお邪魔してきました!
参考:
後編: ケイオスリングス続編は開発中!スクエニ安藤武博氏インタビュー。
登場人物
■スクエニ安藤さん
スクウェア・エニックスのゲームプロデューサー安藤武博氏(参考: 安藤武博 – Wikipedia)主なiPhoneゲームはクリスタル・ディフェンダーズ、ソングサマナー 完全版、CHAOS RINGS ケイオスリングスなど。
■スクエニ木暮さん
スクウェア・エニックスの宣伝部モバイル担当
■狩られ道
「狩」の字でみんなご存知、appbank の育ての父こと狩られ道氏(twitter アカウントは、@kararemichi)。生ける伝説。詳細は割愛しますが、Togetter – 「kararemichi」さんのまとめはiPhone ユーザーならチェックだ!
■AppBank
私です。twitterは@appbankです。
ケイオスリングスを振り返ろう!
■AppBank
本日はケイオスリングスを振り返るをテーマにお話を聞かせてください!世界15カ国でランキング1位になり、その後もロングヒットとなったケイオスリングス、改めていま、何を思いますか?
■スクエニ安藤さん
今は、「ケイオス、出して良かった」と思っています。これまでも「iPhone でちゃんとしたゲームを作っていきたい」その気持ちで様々な挑戦をしてきました。チャレンジの結晶が今回のケイオスリングスです。売れて良かった。
この作品から次回作、これからのオリジナルタイトル開発に繋げていけるようになりました。
■AppBank
私たちの話をさせてください。このタイトルがリリースされた際に私はAppBankエースライターに「これは iPhone ゲーム業界の金字塔となるタイトル、頼むからこれだけで記事4本書いてください。足りなかったらいくらでも書いていいから!」とお願いしました。他のアプリの記事も無視してこれだけ遊んで、好きなだけ書きまくって欲しいと。
そしたら彼は、移動中も事務所にいるときも遊びまくって、結局クリアレポートまで用意し、攻略指南も書いていました(参考、【ラスボス注意】CHAOS RINGS: 全力解説!ジーン一覧・おすすめ組み合わせ紹介!レベル上げ場所など攻略!)全部で6本くらい書いてて、「とにかくハマル!壮大だ!」と私に何度も言ってきました
■スクエニ安藤さん
あそこまでやりこんでくれたことがうれしい。あのゲームは普通にやって数十時間かかるゲームです。もうそろそろ終わるかな?と思ってからが折り返しとなります。こんなに作り込まれてるんだ!と感じさせる記事だと思いました。
また、App Storeで僕たちが説明できるのはゲームの序盤から中盤までで、部分的にしかお伝えすることができず、このゲームで一番盛り上がる後半を見せることができないのです。ゲームをスポイルすることなく、ケイオスの肝となる部分があの一連の記事でうまく書かれていると思いました。
物語後半の2ペアで話の伏線が回収されています。そこまできっちり遊んでもらえているのもうれしかった。
■AppBank
村井は「ボリュームすげぇ、壮大!」とばかり言っていました。
■スクエニ安藤さん
App Storeのレビューを見ていると、このゲームは一章、二章でゲームが終了したと思っているお客さまが多かった。まだ途中なのに。これは次への反省点です。
ペアシステムが生まれた背景
■AppBank
ゲームは4部構成、とてつもないボリュームだというのもあるのですが、私が気になったのは男女ペアのストーリーである点と、それぞれシチュエーションの異なる男女同士が、常にさかっているというのが気になりました。話全体も壮大なラブストーリーでした。
これは女性にうけるだろうなと、各ペアの設定と話の展開を聞いて感じました。女性層をねらっていたのですか?
■スクエニ安藤さん
これは狙っていたというよりは、、、開発前の段階からお話しますね。
このゲームを作るにあたり、キャラは3Dで出そうと決めました。ただ、スペック面から敵味方含めて3Dで出せるキャラ数が制限されます。そこで戦闘中の敵キャラ数は自パーティ数より多い方が良い、と考えていって2人パーティのゲームになりました。そして一番盛り上がるペアといえば男女。そこから、ペアでこそ話に没入できる設定やストーリーを考えていきました。
演出にこだわっていくうちに、町や洞窟といった伝統的なRPGの要素を廃し、箱船という閉鎖空間の中で登場人物の心理描写にフォーカスをあてる構成になっていきました。
開発をお願いしたメディアビジョンさんにはそのノウハウがありました。ハードを見て、表現とストーリーのボリュームを考えて、ここまでなら作れると。iPhoneの制限を逆手にとって盛り上げることができました。
よく知ってる国産RPGのはずなのに、ハマル人続出!特に戦闘。なぜだ?
■AppBank
同じダンジョンを繰り返して遊びますよね。@entrypostmanが「あとで同じダンジョンを使うんだよ!そこで戦うんだよ!」って言っていたのが印象的でした。
失礼ですが「えっ?ずっとコマンド選んで戦うゲームだよね?なんでそんなに長時間遊べるの?てかこのゲームほとんど戦ってばかりのゲームに見えるよ。」と私は彼に言いました。しかし彼は「これは遊べる。面白い。ずっと戦ってても面白い。」と言っていました。戦闘の面白さは何か?そのことを教えてくれないまま、彼はずっと遊んでいました。appbank 読者の感想を見ていても似たような感じで、私にはそれが不思議でした。
なぜケイオスでは、なんども戦いを続けたくなってしまうのですか?
■スクエニ安藤さん
まず、すっごいレベルが上がるようにしました。過剰なくらい上がります。サクサク上がることで、繰り返しを気持ち良くさせました。
次に雑魚敵に会わないスイッチを導入しました。つまらない戦いを省略してがんがん進めます。
さらに、同じダンジョンでも出てくる敵のレベルを選べるようにし、強い敵に挑戦して自キャラが素早く強くなれるようにもしました。
また、ダンジョンの中では10分に1回群像劇的なイベントが発生します。洞窟のはじめと終わりに長い台詞が入るのではなく、ポイントごとに短めの主人公同士の会話が発生するようにしてあります。ここのイベント発生ポイントについては本当に細かく設定していきましたよ。
■AppBank
ガチでロープレを作っているように感じます。
■スクエニ安藤さん
はい。iPhone で作れる、FF7 くらいの楽しみがあるガチのロープレを目指して作りました。メディアビジョンさんも当時のロープレをイメージしていると言っていました。
FF7でFFシリーズが盛り上がった、ということを知っている層が iPhone でゲームを購入してくれる層だと想定 して作りました。ちょうど30歳周辺。あの頃のゲームらしさってあるじゃないですか。
また、FF5,6 にも図書館とかちょっと不思議な世界観ってありますよね。次回作(ケイオスリングス2)ではあの雰囲気を盛り込んでいこうとしています。
■AppBank
私も5は5回、6は7回くらいクリアしています。思い入れが強いです。
競売とか、ちょっとした隠し通路とかピアノとか、少し違うけどビッグブリッジとか、ああいう部分の作りは今でもぐっと来ますね。
ケイオスリングスは大辞林級のブランドになっていた。
■AppBank
ケイオスリングスは、リリース後もずっと売れ続けていて売り上げランキングの上位にずっといました。AppBankでも今欲しいアプリを教えてもらう企画を行い、あの大辞林を大きく離して一位になりました
参考
AppBank読者が「今欲しい有料アプリ」ランキング20!iPhone界最強のブランドが明らかに!
日本のApp Storeは特殊で、実用系アプリの人気が定着しています。カジュアルゲームなら分かるのですがここまでハードなゲームが多くの人から欲しいと思われるブランドになっていることが驚きでした。
どうしてみんながあこがれているのか、教えてください。
■スクエニ安藤さん
当時、人気はそれほど持続することは無いと思っていました。一時期は goodreader、ウィズダム的なロングランでした。
これまで見ていて感じたのは競合商品が無かったからだと思います。ここまで遊べるRPGで、ケイオスリングスに競合できるタイトルは今開発中のケイオスリングス2しかないと思っています。
大辞林についても、後発で使い勝手の良い新しい辞書が出てきているのにも関わらず、大辞林が唯一無二の存在になってしまっていて、売れ続けていますね。
ここまでやっておけば問題ないというくらいまで作り込んだと解釈していますが、まさか「ゲーム」という購入者が限られたなかでこれほど続くとは思っていませんでした。
■AppBank
女性も普通に遊んでますよね。
OL風の若い女性がiPhoneを横に持っててゲームしていて、よく見るとケイオスリングスでびっくりしたと@kazuendが言っていました。他にも彼の知り合いの女性が遊んでいるそうです。
■スクエニ安藤さん
そんなの見たことないです!女性でケイオスファンの方、私に一声かけてください!
■AppBank
でもあのストーリーなら明らかに女性層が満足するのかなと思っていました。
携帯電話のアプリでロープレしている女性は多いですか?
■スクエニ木暮さん
圧倒的に30代男性ですね。
■スクエニ安藤さん
ビジュアルが良かったとも思います。直良有祐 氏にお願いしました。
■狩られ道
アイコンが女性から男性に変わりましたよね。
■スクエニ安藤さん
リリース時はケイオスリングスらしいミューシャの落ち着いたアイコンにしました。しかし、AppStoreのレビューを見ていると賛否両論で評価が分かれていました。
ならばと、直良にアイコンをオリジナルで描き起こしてもらい、スクエニらしい主人公であるエッシャーのアイコンにしました。プレイ後もそのアイコンを残して欲しかったので女性ではなく男性キャラの王道アイコンにしました。
アイコン変更が iPad 版リリースと同時だったのも良かった、と思います。
■AppBank
iPad版もentrypostman氏が書いていて、クリアしたにも関わらずガチで遊んで「やっぱ良いわぁ」と言っていました。。。で、また記事をきっちり書いていて遊びたい!と思わせてくるんです。
参考
[iPad] CHAOS RINGS for iPad: 世界中で大ヒットした最高のRPGがiPadにも!スクエニさんありがとう!2208
続きます!