【インタビュー】「釣りにゃんこ」の開発者に聞く。手間のかかる作業をわざわざ行っている理由。
ユーザーが繰り返し何回も遊んでいるアプリ「釣りにゃんこ」をご存知ですか。

HARASHOW Interactiveさんのリリースしているアプリにはある特徴があります。それは、ミニゲームなど短時間で遊ばれなくなってしまう可能性の高いアプリでもグラフィックにこだわり、手間のかかる作業をわざわざ行っているという点。そして、全てのアプリに長く遊べる仕組みがあるという点です。この2点についてなぜそのようにしているのかHARASHOW Interactiveの原崎さんにお伺いしました。
インタビューは、アプリに広告をご提供し、収益化のお手伝いをする「AppBank Network」の運営を担当しているAppBankのしょーざが担当しました。それではインタビューをどうぞ!
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長く使ってもらうための手間は惜しまない
– 何を重視して開発されていますか。
HARASHOW Interactive 原崎:ツールやゲームを問わず、長く使ってもらえそうな内容かということと、シンプルなアプリでもキャラクターや世界観をきちんと作り込むということを重視してアプリを作っています。
– ゲームアプリの場合、長く使ってもらえる内容かはどのように決められているのでしょうか。
ミニゲーム系のさくっと遊んでさくっと終わるものではなく、育成ゲームや放置ゲームであれば、長く遊んでもらえるものが多いのではないかと考えています。ミニゲームを作る場合は、ポイントを貯めるとアイテムや壁紙などがもらえるように収集要素を加える事で、できる限り長く遊んでもらえるように工夫しています。
– なるほど。だからゲーム性の少ないミニゲームなどではポイント制にされているのですね。
キャラクターと世界観を作りこむことに関しても、キャラクターや世界観でアプリに対して愛着を持ってもらって気に入ってもらえれば、アプリを消さずに取っておいてくださる方も多くいるので時間をかけて作っています。キャラクターや世界観をこまめに作りこむことで差別化をしています。キャラクターや世界観を重視している理由は、アプリに対して愛着を持ってもらうためです。
– 世界観を作ることは難易度が高いように感じるのですが、どのように世界観を作っていますか。
デザイナーと2人でアプリを作っているのですが、2人でディスカッションしながら自分たちが楽しいと思えるものとか好きなものを作るようにしています。好きじゃないものを作っていると全然進まなかったり思いつかなかったりするので、ノリノリで作れるのかどうかは重視しています。
– 他のカジュアルゲームはシンプルなアプリが多いですが、あえて時間をかけて作りこんでいるのは差別化が中心ということですか。
差別化もあるのですが、シンプルなアプリは単純におもしろくないといけないので、作るのはある意味難しいかなと思っています。棒人間のカジュアルゲームが流行っていて、たくさん出ていると思いますがやっぱり絵がシンプルな分、ゲーム性にこだわらないといけません。自分にはあまりその才能がないんですよ。そのようなアプリを出して埋もれてしまうよりは、あまり大勢にダウンロードされないかもしれませんが、自分たちの世界観を気に入ってくださる方やファンになってくださる方を増やしていきたいと考えています。狭く深くというような感じですね。
– どのアプリもグラフィックへのこだわりが感じられるのですが、高いクオリティを維持するために行っていることを教えてください。
無くてもいいけど、この絵があれば更に良くなるというものに関しては、手を抜かずに時間がかかっても作るようにしています。2人ともWEBデザイナー出身なので、細かなUIデザインにもこだわっています。
– 標準UIなど元々用意されているものは、ほとんど利用されてないですよね。
やっぱり世界観に合わせて作ったほうが、画面にマッチして操作性や分かりやすさも良くなると思います。あと、単純にトータルで見て綺麗な見た目になります。元々2人ともデザイナーなので、やっぱりそこをこだわっちゃうんですよね。カジュアルゲームですごくこだわっている開発者は、他にはあまりいないと思います。でもこの細かいこだわりが世界観をつくる際に、生きてきていると思います。細かいところまでデザインすることは、トータルで見るとそれが差別化にもなるし、世界観を作ることにもなるので、他とは違うアプリができているのだと思います。それが長く使われることに関係していて、固定ファンを獲得できたり、ファンが付いてくることにつながっていると思います。
– カジュアルゲームの場合は、短期間でリリースできるか否かは重要になると思うのですがどのようにお考えですか。
ちょっと向き不向きがあると思うのですが、自分は短期間でおもしろいものをいっぱい出すことは苦手なのかもしれません。あと、放置系ゲームのストーリーやキャラクターを作るのが単純に好きだということもあります。収益面に関しては、放置系ゲームはカジュアルゲームに比べて収益性は高いと思います。月単位とかで比べれば、放置系ゲームは同じくらい稼げているのではないかと思います。たぶんプレミアムデベロッパーに認定されているデベロッパーさんの中で1番ダウンロード数が少ないのではないかと思います。それでも選んで頂けたということは、それなりに広告表示数やクリック数が確保できているからだろうと考えています。
– 釣りにゃんこはどれくらいダウンロードされたんですか。
ちょっと恥ずかしいのですが、iPhone版は3、4万ダウンロードくらいです。Android版もリリースしているので、それを合わせれば7、8万くらいです。他の方は10万とか100万とか行っているじゃないですか。本当に全然ダウンロードされていなくて。。
– ミニゲームだと長く使ってもらえるイメージがあまりないのですが、原崎さんのアプリは実際長く使われているのでしょうか。
App Warsというパンチ・キックを指令通りにタップするミニゲームアプリをリリースしているのですが、それにもマンガやキャラクター図鑑をつけています。ポイントがないとそれを読めないことにして長く遊んでもらおうと工夫しています。ただ、アプリ自体はあまりダウンロードされていない感じです…。結構時間かけて作っているんですけどね。App Warsは、実際長く使われているかどうかわかりませんが、使ってくださっている方もいるという感じです。そのマンガを見るためにポイントを集めている方もいるので少しは効果があったのかなという感じです。
その長く遊んでもらうための工夫は、基本的に全てのアプリで行なっているのでしょうか。
やっぱりそこが最重要項目なので、全てのアプリで行なっています。
– 何回も遊べる仕組みをリリースする際に、既に実装しているということですか。
そうですね。もしくはそのストーリーの一話だけ実装しておくという感じです。App Warsにはマンガを入れているのですが、最初から全ての話を入れるのは厳しいので、最初は1、2話だけ実装された状態でリリースしたことがあります。話を作るのが間に合わないからということもありますが、もし当たらなかったらという時のためです。
人気の出たアプリだけ、アップデートで繰り返し遊べるような仕組みを入れるというのが一般的だと思うのですが、そうしていない理由を教えてください。
やっぱり作ったからには当たることを信じてやっているので、悔いを残さずにやりたいという気持ちです。なんか中途半端にやってリリースしてもやっぱりダメなのではないかという意識が、自分の中のどこかにあります。ベストな状態やある程度形になっているという、自分の納得がいく状態でリリースしたいと考えています。
原崎さんの中では、繰り返し遊べることが完成形ということですか。
繰り返し遊べることは、マストです。ストーリーが完結したから終わりという形にはしないようにしています。
最低限、はじめからを用意しておくという感じでしょうか。
単純にはじめから遊べるようにするだけでは、たぶん遊ばないんですよね。全く同じだと、同じならいいやと自分でも思ってしまうので。でも、ちょっとしたプログラムの工夫で、長く遊んでもらえたりすると思います。例えば、エンディングを数パターンにするとか。前の話は全部同じなのですが、エンディングだけちょっと変えるとそんなに手間はかからずに長く遊んでもらえると思います。でもそれを見たくて遊んでくれる方は結構います。多い方だと100回近くクリアしている人がいたりしてびっくりしています。
100回ですか!?
自分たちがデバックしていた回数よりも多いのではないかという感じです。本当にびっくりです。ちょっとえげつないですが、クリア回数を競えるようにランキングを用意しています。ランキングを見て頂くとおー!という感じになると思います。できるだけ手間をかけずに、長く遊んでもらうことができないかということは本当に考えるようにしています。
クリア回数のランキングを見ると、10回以上クリアしているユーザーが50人近くいますね。
用意しているエンディングの数は4つしかなので、あれ!?って感じですね。そういう意味では世界観やストーリーを気に入ってもらえたので何度も遊んでくれているのかなと思っています。
グラフィックにこだわっていなかったとしても、繰り返し遊べるのと遊べないのでは、一人あたりの継続する時間とか遊び続けてくれる時間とか収益にも影響があるということでしょうか。
すごい影響があると思います。100人の人が1分遊んでくれるか、1人の人が100分遊んでくれるかみたいな感じで、工夫次第では同じ所まで持っていけるのではないかと思っています。
エンディングを数パターン用意しても、数パターンあることをユーザーに伝えないと意味はないですよね。
そうですね。そこはなるべく目立つように表示させるとかはやったほうがいいと思います。釣りにゃんこでは、アップデート情報に書いています。あとは、クリア後はじめからをタップする際に、エンディングが何種類かあります、と表示してあげたりしています。おばけ育成ゲームのOBKちゃんのおばけ屋敷では、クリアした後にすかさずポップアップを出してます。新しいルートがあるよということを伝えて、そのままその流れで惰性で構わないのでもう一度プレイしてもらえるように工夫しています。
手間はかかってもユーザーの意見を直接聞く
– ユーザーさんからの要望はどのようにして取り入れていますか。
基本的にアプリ内に、お問い合わせフォームを必ず設けてリクエストや質問を受付けています。返信の手間はかかりますが、作り手が見逃していた問題や質問の多い部分は改善の余地ありという事で参考にしています。
– ユーザーの声を汲み取る際に重視しているのは件数ですか、内容ですか。
まぁ両方ですね。お問い合わせが多い内容は、ほとんどの人がそう思っているんじゃないかなと思っています。わざわざお問い合わせする手間をかけてまで連絡してくださる方は少ないと思います。その少ない中で内容が被ってくるということは、大勢の人が気にしている部分じゃないかなと思うので、次回のアップデートで改善を検討するとかは考えています。あと、お送り頂いた意見に対して必ず返信してます。
– お問い合わせ対応は当然、時間や手間がかかりますよね。普通だと敬遠しがちだと思うのですが、これをあえてやっている理由はありますか。
まず、改善点を知れるというのがひとつです。あとはレビューです。バグがあった場合、App Storeのレビューでバグについて連投されてしまうことがよくあると思うのですが、それを防ぐ効果もあります。その分手間はかかりますが。
– お問い合わせはどれくらい連絡が来るのでしょうか。
過去にバグがあって炎上した事があるんですけど、そういった時は1日に100通来たりします。普段は1日1、2通という感じです。お問い合わせ件数が減るように工夫していて、お問い合わせフォームに飛ばす前によくある質問を見せるようにしています。釣りにゃんこはボタンを別々にしたのですが、それ以降のアプリに関してはお問い合わせボタンをタップすると、まずよくある質問に飛ばされます。そのよくある質問の一番下にお問い合わせボタンをつけることで、返信の手間も軽減できました。
– お問い合わせ内容から実装された機能はありますか。
釣りにゃんこにはストーリーがあるのですが、クリアした後最初のバージョンだとそこで終わりだったのですが、最初からストーリーを読みたいという要望があって、そこからはじめからボタンが生まれたという経緯があります。結果的にはアプリの寿命も伸びたので、それは良かったと思っています。
長く遊んでもらうことで収益を最大化できる
– 収益を最大化するためにどのような工夫をしてますか。
既にお答えしましたが、一度クリアしたら終わりではなく「何度でも遊べる」ように工夫しています。例えば、このような工夫をして長く遊んでもらおうと工夫しています。
- 持ち物を引き継いだまま、はじめから遊べる「強くてニューゲーム」
- エンディングを複数パターン用意する
- クリアする度に「壁紙」などの特典をもらえる
- ランキングでクリア回数を競える様にする
繰り返し遊んでもらうことは、収益化に関係していると思います。カジュアルゲームのように短期間で瞬間的に稼ぐのではなく、地味ですが平均的に継続して稼ぐことができるので、トータルで見ると同じくらい稼ぐことができているのではないかと思います。
AppBank Networkは10点評価で何点になりますか。またその理由を教えてください。
9点です。多くの人が閲覧するAppBankさんで、アプリをご紹介頂ける特典が素晴らしいです。広告費をかけられない個人開発者にとって、無料でご紹介頂けるのは、とても魅力的な特典だと思うので、全ての無料アプリに導入しております。個人的にiPad対応アプリが多いので、今後、iPad向けの広告も充実すると嬉しいです。
アプリ開発は個人開発者にも分け隔てなくチャンスがある!
– HARASHOW Interactiveさんのアプリを利用しているユーザーへ一言お願いします。
いつもアプリを使っていただきありがとうございます!アプリのレビューもゲームの感想や続編のリクエストなど、好意的なものが多くとても励みになっております。今後も、皆さんに愛着を持ってもらえるようなアプリを作れるように頑張ります!
– ご自身のアプリの自慢を一つして下さい!
以前、個人で作ったアプリを、AppleさんのTV-CMで使っていただいた時は、とても嬉しかったです。このように、個人開発者にも分け隔てなくチャンスがある「アプリ制作」は、作っていて楽しくやりがいもあると思いますので、興味のある方はぜひ自分でもアプリを作ってみてください!
開発者情報
開発者名:
HARASHOW Interactive
最もダウンロードされたアプリ:
釣りにゃんこ
リリースしている総アプリ数:
14本
開発体制:
プログラマー1名・デザイナー1名の計2名で開発しています。
平均開発期間(アイディアの着想からリリースまで):
1~2ヶ月
開発に利用しているツールやソフトウェア:
Xcode・Eclipse・Cocos2d-x・Unity・Photoshop・Illustrator・Fireworks・Flash
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