シナリオ=テキスト+演出+ゲームプレイ。ゲーマーだからこそ作れた『アナザーエデン』の物語【Flyers’ Lab】
グリーのアプリ開発スタジオWright Flyer Studios(WFS)が主催する業界交流イベントFlyers’ Lab#1「シナリオ編」シナリオと演出で命を吹き込む!!~スマホゲームのシナリオメイクについて~のレポートをお届けします。
本イベントにはf4samuraiの田口堅士さん、gumiの今泉潤さん、WFSの古屋海斗さんが登壇し、3者による座談会や懇親会も行われました。ここでは、WFSの古屋海斗さんの講演をレポートします。
●古屋 海斗氏(WFS)プロフィール
2012年、新卒でグリー株式会社に入社。新規事業立ち上げや他社協業案件のプロジェクトマネージャーを経験後、新規タイトルの開発プランナーを経て、WFSにて「アナザーエデン 時空を超える猫」の立ち上げに関わる。
現在は同コンテンツのディレクターとして、主に企画とシナリオ統括に従事。
ゲーマーからクリエイターに。非ゲーム事業からゲーム制作の現場へ
20代なかばで『アナザーエデン』の立ち上げに深く携わり、企画とシナリオ統括を担当してきた古屋さん。
古屋さんの経歴で特筆すべきは、「ゲームが好きな人間」がひょんなきっかけで「ゲームを作る人」になったという、ある意味でゲーマーが憧れる流れでクリエイターになったことでしょう。
そもそも古屋さんは非ゲームの部署で仕事をしていましたが、そのゲーム好きなところを買われてゲーム開発に参加することになりました。
そんなゲーマーであるだけに、古屋さんの講演内容もゲーム好きの人の考えに立脚した、共感しやすい部分が多く感じました。
クリエイターとして、どのような形でゲーマー視点が活用されているのか。その講演内容を紹介していきます。
▼配信開始時に「物語の終わり」が用意され、「シングルプレイ専用超大作RPG」という方向性で作られた『アナザーエデン』。この2つの要素自体が、ゲーマーならではの発想から生まれたものと言えるかもしれません。
シナリオ=テキスト+演出+ゲームプレイ
シナリオとはテキストと演出で成立するものという考え方もありますが、古屋さんはまずそこに疑問をていします。
では、なんなのか?
その答えが、「シナリオ=テキスト+演出+ゲームプレイ」という考え方です。
文字や演出だけでなく、実際にユーザーがプレイをすることを加味して、物語を楽しんでもらうという考え方ですね。
「プレイヤーが体験する物語」を目指して、『アナザーエデン』は3つのポイントに力を入れているとのこと。講演では、ゲーム内での具体例を交えて、それらの重要性が説かれました。
意表をつく:お使いゲーからの脱却を目指して
ゲームの作法にのっとった展開やユーザーが迷わずに遊べる親切さを実現した結果、それがゲーマーから「お使いゲー」と評価されてしまうことがあります。
古屋さんはその理由が「作業感」にあると指摘します。
その解決策として行ったのが、「意表をつく」展開でプレイヤーの気持ちを飽きさせないこと。
具体例として、「時の炭鉱と夢を視る郷」というイベントの一例が紹介されました。
このイベントは炭鉱を探索して村を発展させるという、ある意味でオーソドックスなイベントです。
そこで古屋さんが見せたのは、本来は修復に十数年がかかるはずの橋が、なぜか修復されたという謎の提示です。
この部分は、プレイヤーが実際にゲーム内で村に踏み入れると「橋がなおっている」という見せ方をしており、ゲーム体験を通じて驚きを提供することにもつながっています。
そして、橋の修復だけでなく、年をとって成長した村人の姿を見せることで、より謎を深める流れにしています。
このように「意表をつく」物語でプレイヤーをひきつけ、より楽しいゲーム体験を提供する工夫がされているわけです。
想像力をフルに活用する:あえてブラックボックスを作り、ユーザーの想像にゆだねる
続いて古屋さんは、ゲームはインタラクティブ性が強いものであるため、読み物とは少し違うということを語ります。
長いイベントが続くと飽きられてしまうため、どう読んでもらうのか、どう省略すべきなのかについてかも課題としているそうです。
そんな前提で古屋さんが考えたのは、自分たちの想像力だけでなく、「お客様の想像力」もフル活用すること。
つまり、ユーザーの想像力にゆだねる部分ももうけておくことです。
その事例が、ディアドラというキャラクターの過去を描くイベントを作る際のフローです。
あえて人生において描かないブラックボックスを作り、そこをユーザーに想像してもらうという手法が取られています。
講演では「ブラックボックス化する部分は描写しない=工数がかからないので、できるだけ壮大にするのがよい」と冗談交じりに語っていましたが、実際には「お客様がついてきてくれることを信じて、説明不足にならないように、きちんと想像を楽しめるように誘導することが大事」だと、注意喚起をしていました。
システムを利用する:制約を敵とせず、おもしろいゲーム体験に変える
シナリオライター視点で考えると、時にはゲームシステムの制約を受けることがあると、古屋さんは語ります。
「せっかく世界観を積み上げてきたのに、新システムがそれを台なしにしてしまう」。そんなことすら、ありえるそうです。
ですが古屋さんは、「システムは味方! 敵じゃない!」と力説します。
そんな事例が、『アナザーエデン』に存在する数少ない周回要素の「アナザーダンジョン」という要素を入れる際の考え方でした。
「周回する」というオーソドックスな要素についても、「それが常識」という考え方を疑い、ゲームデザインやシナリオに取り込むことに挑んだ結果、プレイしたユーザーから大きな反響があったそうです。
具体的には、記憶を失った「名無しの少女」を設定し、周回要素に加えて物語的な謎を加えたこと。
なぜ周回することで彼女の記憶が戻るのか? それはゲーム体験と物語が密着したゲームデザインであり、実際にプレイしたユーザーの高評価につながりました。
新たなゲームシステムが入る際は、それをうまく利用することであらたなゲーム体験を生み出すことができ、それがシナリオにも影響を与えるチャンスにもなると、古屋さんは力強く語っていました。
スマホゲームはエンディングがない物語が多いと言われる中、スーパーファミコンなどのゲーム機で多くのゲームを遊びまくった古屋さんは、「物語に終わりがあることを当たり前」と考えて、『アナザーエデン』という物語性が高いゲームの開発を行いました。
ゲーマー視点を大事にしながら、自身のユーザーエクスペリエンスを次代のゲーマーに伝えられるようなゲーム作りを続けている古屋さん。
おもしろいゲームを世に出すべく開発をしているライトフライヤースタジオのスタンスに興味を持った方は、スタッフ募集をチェックしてみることをオススメします!
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次回イベントはヨコオタロウさんや加藤正人さんが登壇
本イベントは早くも次回開催が決まっており、『シノアリス』のヨコオタロウさんや『アナザーエデン』の加藤正人さんが登壇し、ゲームの世界観について語られる予定です。
【次回イベント概要】
●イベント名:Flyers’ Lab #2 「世界観編」 ヨコオタロウ×加藤正人 『ゲームの世界観を語る!』
●日時:11月13日(月) 19:00~21:30
●場所:グリー株式会社 9階セミナールーム(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー)
●登壇者
・ヨコオ タロウ(「SINoALICE」(シノアリス) 原作・クリエイティブディレクター)
・加藤 正人(WFS/アナザーエデン)
●モデレーター
・下田 翔大(WFS/消滅都市)
→参加申し込みはこちら:Flyers’ Lab #2紹介ページ
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・販売元: Wright Flyer Studios, Inc. ・掲載時のDL価格: 無料 ・カテゴリ: ゲーム ・容量: 154.8 MB ・バージョン: 1.4.8 |
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