gumi今泉Pはなぜゲームを選んだのか【Flyers’ Lab】

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グリーのアプリ開発スタジオWright Flyer Studios(WFS)が主催する業界交流イベントFlyers’ Lab#1「シナリオ編」シナリオと演出で命を吹き込む!!~スマホゲームのシナリオメイクについて~のレポートをお届けします。

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本イベントにはf4samuraiの田口堅士さん、gumiの今泉潤さん、WFSの古屋海斗さんが登壇し、3者による座談会や懇親会も行われました。ここでは、gumiの今泉潤さんの講演をレポートします。

●今泉 潤氏(gumi)プロフィール

大学在学中に、映像制作会社に入社。ドラマ・演劇など広くエンタテインメントを手がける。
2010年7月、株式会社gumiに入社。数々のヒットゲームの企画・開発・運営に携わる。代表作として「ファントム オブ キル」「誰ガ為のアルケミスト」「シノビナイトメア」をプロデュース。

冷静と情熱のあいだのゲーム作り

映像制作会社でドラマなどを手がけてきた今泉さんが、なぜゲーム業界に携わることになったのか?

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この講演では、他業種を見てきた今泉さんだからこそわかるゲームの特殊性や、それを踏まえてゲームでのシナリオ制作における注意点が語られました。

映像作品に携わっていた今泉さんが大きな衝撃を受けたのが、映画の『アバター』。その映像的なクオリティを見た今泉さんは、テレビ番組などの規模では映像的な部分でハリウッドに勝つことはできないと衝撃を受けます。

その後、縁があってゲーム『刑事ハードボイルド』のシナリオを手がけた今泉さんは、そのゲームの登録者が50万人以上いるという規模の大きさにも衝撃を受けたと言います。

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当時、大ヒット作家の小説が20万部でベストセラーと呼ばれる時代に、50万人という数は圧倒的でした。

ドラマや映画といった分野ではハリウッドに勝てなくても、モバイルゲームという分野でなら勝てるかもしれない。

そして、ゲームという媒体の規模や影響力の大きさにも可能性を感じた今泉さんは、ゲームにおける原作者や出資者となって映像を作りたいと思い、転職することになります。

こうして今泉さんはモバイルゲームの黎明期からゲームに携わり、さまざまなヒット作を生んできました。

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ちなみに今泉さん自身はプロデューサーという役職を担当することが多いのですが、実質的な作業は非常に多岐にわたっています。

今でも開発スタッフと天下一品でラーメンを食べながらキャッチコピーの考案を行い、リリースギリギリまでスキル名を考え、イラストチェックで骨のバランスが取れているかまでチェックしているとのこと!

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このバイタリティと多芸な部分は今泉さんだからこそ、という部分もありますが、自身がシナリオを書くのではなく(書くことも多々あるようですが)、プロデューサーという立場から語られる興味深い内容が多い講演となっていました。

冷静(ビジネス的な視点)情熱(クリエイターとしての自己主張)のあいだで行われる、今泉さんのゲーム作りについて紹介していきます。

冷静編:ゲームとモバイルゲームの違いの解析と、時代(デバイス)の変化

映像業界からゲーム業界へとやってきた今泉さんが行ったのは、そのビジネスモデルの解析でした。

おりしもwebブラウザベースのモバイルゲームが流行していた時代において、今泉さんは「クエストとガチャシステムのループ」という構造に着目。

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ガチャで強くなり、より難しいクエストに挑むというループ構造のなかで「クエスト」部分に注目し、そこにおもしろい「世界観」を加えるというゲーム制作を行い、ヒット作を生んでいきました。

ここでいう世界観とは、「サッカー」や「海賊」といったもの。王道の中世ファンタジー的な世界観のゲームが多い中、今泉さんは「任侠」という意外とゲーム業界になかった世界観をベースにしたゲーム『任侠道』で大人気を集めることに。

その際は、他のゲームでいう「宝を奪い合う」ようなシステムに「任侠」という世界観を乗せて、「6人の女性を奪い合う」というユニークな演出を行い、話題を集めたとのことでした。

▼webベースだった時代のビジネスモデル。
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しかし、モバイルゲームがネイティブアプリへと移行したことにより、そのビジネスモデルも大きく変わります。

webベースの時は「カードゲーム」をベースにした共通言語的なゲームシステムが主流を占めていたことに対して、ネイティブアプリで表現力が上がったことにより、ゲームシステムの多様化が一気に進みました。

▼ネイティブアプリ以降のビジネスモデル。
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それはスマートフォンへの移行でさらに加速し、タッチ操作というデバイスの適性を生かした『パズル&ドラゴンズ』のようなアクション性やパズル性、『モンスターストライク』のように誰もがスマホを持つからこそ実現したマルチプレイの流行など、「クエスト」の構成要素のなかでも「ゲームシステム」の比重が高まりました。

一例として『ファントム オブ キル』の場合、ゲーム的にはごく当たり前である「同キャラ同士が戦うこと」への疑問をもとに「同じ顔を持つ相手(イミテーション)と出会ったら殺しあわなければならない」という設定兼ゲームシステムへと落とし込む流れにつながったそうです。

また、従来の世界観に関する部分も多様化・専門化が強まり、有名クリエイターの起用やアニメやボイスによる派手な演出が可能に。そして、その派手な演出は、ここ数年ですでにいきつくところまでいきついてしまった感すらあります。

今泉さんとしては、もはや有名クリエイターを集めるだけで話題になる時代は終わり、そのゲームとの親和性を考えてパッケージできる相手を選ぶことが大事になると感じているようでした。

情熱編:なぜオリジナルを作るべきなのか。スマホゲームの接触時間の長さが持つ可能性

続けて今泉さんが語ったのは、ゲームを作るならオリジナルにこだわっている理由について。

その前提として、今泉さんはゲーム、とりわけスマホゲームがユーザーに接触する時間が尋常ではなく長いことを指摘しています。

例えば映画の場合、ものすごい予算をかけた大作映画でも2〜3時間で上映が終わります。

テレビアニメなどでも、仮に30分1クールで考えて10時間にもおよびません

もちろん、リピートして楽しむことや、グッズを買って放送時間以外にもその作品を楽しむなど、トータルの接触時間はそれ以上の時間になりますが、ゲームは単純なプレイ時間だけでも数十時間におよびます。

特にスマホゲームの場合は1日のプレイ時間もさることながら、場合によっては数年にわたって遊び続けることがあります。

「誰かの人生の3〜4年をもらうことがあり、場合によっては死ぬ前に自分が作ったゲームを思い出してもらえる可能性すらある」。

今泉さんはそんな可能性を持つゲームだからこそ、ゲームにしかできないことを軸に、自分が作ったオリジナルのシナリオを持って楽しんでもらうべきだと考えているようでした。

そんな前置きを踏まえて、今泉さんは自分なりの「オリジナル作品の作り方」を語っていきます。

その1つが、ビジネスと欲望のバランスです。

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経験則として、そのどちらかだけでもうまくいかず、バランスが大事だと語っていました。

例えば、時代のニーズにあわせて「主人公の属性は○○」といった市場感を踏まえること自体は必要ですが、そこに迎合するようなシナリオは、ユーザーに見透かされてしまうのか、うまくいかないことが多かったそうです。

あえて自分のエゴやフェチな部分も盛り込み、書いている自分自身がおもしろいと感じることを盛り込むことで、うまいバランスになることが多いと語っていました。

そして、具体的に企画を作る際には「ギャップを作ること」の重要性を強調。先ほどの「ゲーム+任侠」という例の他、『ファントム オブ キル』の際には「中世をベースとしながら、ジーパンが似合う女性」というギャップ性を備えたデザインを行ったそうです。

また、今泉さんは自身が映像業界出身ということもあり、イラストや映像については特に力を入れて開発しているとのこと。

それもあり、これまでの作品でも押井守氏や河森正治氏など、力がある映像作品を作れるクリエイターを起用してきたとコメントしていました。

ユーザーとの触れ合いや交流を大事にするスタンス

ゲームのプロモーションにおいてCMは大事ですが、今泉さんとしてはイベントや生放送を通じたユーザーとの生の交流もとても大切で貴重とのこと。

リアルイベントなどで直接もらった感想には有意義なものが多く、そこで楽しんでいる雰囲気などを肌で感じることは、ゲーム制作にとても役立ってきたそうです。

また、この夏に行われた『ファントム オブ キル』のリアルイベントでもその熱意を肌で感じ、ゲームという分野が多くの人々の心を揺さぶることができることをあらためて認識したそうです。


ゲームならではの特殊なシナリオ体験について

講演後の座談会では「ゲームならではのシナリオ体験」にも話がおよびましたが、そこで今泉さんが一例としてあげたのが、『ドラゴンクエストIV』の商人トルネコが主人公の章のゲーム体験でした。

武器屋の店番をしてお金を稼ぐ楽しさや、奥さんのネネからもらうお弁当など、その楽しさはゲーム体験であると同時に物語性がある楽しさで、この感覚は映像だけでもテキストだけでも表現ができないゲームならではの体験だと語っていました。

お弁当を食べずに翌朝を迎えた時にネネが話してくれる「昨日のお弁当は食べなかったようだから、新しくお弁当を作っておいた」という何気ない一言の演出も素晴らしく、ゲームシステム的には単なるフラグ管理による1行2行のテキストの変化が、とても大きく感情を揺さぶるという一例だと絶賛していました。

だからこそ今泉さんは、フルボイスじゃなくても、有名作家じゃなくても、ゲームのシナリオには「人の思い出に残せる」大きな可能性を秘めていると熱く語っていました。

まとめ:「本当に作りたいものがあるのか?」という問いかけ

講演の最後に今泉さんが語ったのは、シナリオの作り方のノウハウというよりも、むしろクリエイターとしての覚悟とも呼ぶべきもの。

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今泉さんいわく、ストーリーとは、キャラクターを輝かせて、引き立てるもの。単なる世界観だけでは、遊んだユーザーが一生覚えているような作品にはつながりません。

その一例として、コンシューマゲームにはいまだにファンが愛し続けるシリーズ作品があるのに対して、モバイルゲームについては一世を風靡した人気作品でさえ、短時間で消えてしまうことがある状況についても言及していました。

今泉さんとしては、その違いとして「シナリオ」があり、漠然とした世界観だけでなく、キャラクターやストーリーを含めた「シナリオ」が重要となることを語っていました。

また、ゲーム性の部分はデバイスの移り変わりによって、変わったり失われたりしてしまう部分がありますが、シナリオや世界観は普遍であり、ゲーム性を超越したところで遊んだ人の心に残ることも特徴だと感じているそうです。
(もっとも、ゲーム体験としてヒットするものもあれば、シナリオ部分でヒットするものもあり、一概に世界観が必須とは言えないとも語っていましたが)

「ある意味でエンタメはそもそも無駄なもの。ゲームを遊ぶ時間は無駄であり、その時間があれば勉強をしたほうがいいというのは事実」と言いながら、「それでもゲームのシナリオがユーザーさんに大きな感動を与えることも事実」と、今泉さんは語ります。

遊ぶ人の大事な時間をもらうからこそ、ビジネスライクな考え方ではなく、「本当に作りたいものがある人」こそに、ゲームのシナリオを作ってほしいと話していました。

プロデューサーだからこそ、ゲームのシナリオを「作品(情熱)」だけでなく、「ビジネス(冷静)」としてもとらえている今泉さん。異なるスタンスからの分析やノウハウが語られる、非常におもしろい講演でした。

そんな今泉さんいわく、「自分はシナリオの専門家ではないので、ドラマや演劇の脚本家など、言葉を専門としている方々を尊敬しています。そういう方の力を借りてゲームのシナリオをおもしろくしていくことが、自分の役割の1つだと考えているので、ゲームのシナリオに興味がある方はお声がけください。一緒におもしろいゲームを作りましょう!」とのこと。

とてもエネルギッシュで、行動力に満ちている今泉さん。その考え方に共感を持った方は、スタッフ募集にエントリーしてみてはいかがでしょうか?

→gumiのスタッフ募集はこちら:gumi公式サイト

次回イベントはヨコオタロウさんや加藤正人さんが登壇

本イベントは早くも次回開催が決まっており、『シノアリス』のヨコオタロウさんや『アナザーエデン』の加藤正人さんが登壇し、ゲームの世界観について語られる予定です。

【次回イベント概要】
●イベント名:Flyers’ Lab #2 「世界観編」 ヨコオタロウ×加藤正人 『ゲームの世界観を語る!』
●日時:11月13日(月) 19:00~21:30
●場所:グリー株式会社 9階セミナールーム(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー)
●登壇者
・ヨコオ タロウ(「SINoALICE」(シノアリス) 原作・クリエイティブディレクター)
・加藤 正人(WFS/アナザーエデン)
●モデレーター
・下田 翔大(WFS/消滅都市)

→参加申し込みはこちら:Flyers’ Lab #2紹介ページ

ファントム オブ キル ・販売元: gumi Inc.
・掲載時のDL価格: 無料
・カテゴリ: ゲーム
・容量: 180.0 MB
・バージョン: 6.3.0

© 2014 Fuji&gumi Games inc.

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