『BDFE』プロデューサー&シナリオライターに独占取材。本格シナリオ作りの裏側や今後の展開とは

スクウェア・エニックスのスマホ用RPG『ブレイブリーデフォルト フェアリーズエフェクト(BDFE)』のインタビューをお届けします。
お相手は、本作のプロデューサーの保髙達也さん(スクウェア・エニックス)と、『ブレイブリー』シリーズを通じてシナリオを担当してきて、本作のメインシナリオを執筆する網代恵一さん。
プレイヤーを魅了するストーリーを中心に、『BDFE』の制作エピソードを伺いました!
本作はオンラインRPGながらも、1人用のRPGとしても十分楽しめるほどストーリーのボリューム&クオリティがしっかりしています。冬休みにじっくり遊ぶRPGとしてもオススメですよ!(文:スズタク)
▼右は保髙達也プロデューサー。左はシナリオ担当の網代恵一さん。
「新しいキャラによる新しい物語」を重視
ーー現在と未来の両軸で物語が描かれる『BDFE』ですが、このような構成にした理由とは?
保髙:立ち上げ時に、まず叶えたいキーワードをいくつか網代さんにお送りしたんですね。「時間遡行」はそのひとつでした。

網代:時間軸を移動するとなった時に、過去に飛ばすか未来に飛ばすかがカギでした。
『ブレイブリーデフォルト フライングフェアリー(BDFF)』と『ブレイブリーセカンド』で描き切れなかった部分や、発売後に頭の中で膨らんでいったお話を描くとしたら、未来から現代に飛ばすのがいいかなと考えました。
保髙:キーワードの中には「絶望」というのもあって、当初からシリアスなお話にしようと決めていました。
未来世界の設定をあれだけ練りこんでいながら、いきなり現代に飛ばされて驚いたプレイヤーも多かったと思います。
ーープロローグも衝撃的でしたが、最初からあのような内容(メインキャラクターであるリズたちが命を落とす)にすると決めていたのですか?
網代:はい、今回は絶望スタートでいこうと。
『BDFE』を制作するうえで、ゲームを始めてからプレイアブルになるまでの時間をなるべく短く収めようとなりました。なので、冒頭のムービーに入れられるだけの情報を詰め込むことにしたんです。

ーー序盤に登場したレイコック大佐はそれ以来あまり出番がありませんが、いずれは彼の物語も描かれるのでしょうか?
網代:ライバルキャラですから、最終的にはもちろん(笑)。13章でもレイコックの背景を少し描写しましたが、今は先々の展開にいたるまでの経緯を埋めているところですね。
少し前に公開した「未来の回想録1」で未来世界の話が補完されましたが、あのように現代と未来の両軸で動いていく流れです。
保髙:「未来の回想録1」はとても網代さんのカラーが出ているなあと、見ていて感じました。
網代さんは見えないところの設定まで本当に細かく練られる方で、今までのお話はいわば伏線フェーズだったともいえます。それが徐々に回収されている段階ですね。
ーーとくに11章は見ごたえがあり、あの衝撃的なラストをきっかけに、さらに加速度的にお話が盛り上がっている印象があります。
網代:そう言ってもらえると嬉しいです。じつはシナリオのプロットを書く際、プレイヤーが絶望するような展開を要所要所に入れる、いわば「絶望ポイント」を作っているんですよ。
全体を通して希望と絶望を繰り返す構成にしているのですが、11章はちょうどその落差が激しいポイントだったかと。
ーーシナリオは当初のプロット通りに進んでいるのでしょうか? それとも、リリースしていくなかで変えていった部分も?
網代:とくにプロットから変わっていません。変えているとしたら、単発エピソードを別の章に移したといったレベルです。
ちなみに、リリース当初の時点から、すでにエンディングまでのプロットは完成しており、そこは変わっていません。
ーーということは、シナリオ全体のボリュームはもう決まっているのですね。
保髙:まあ、おおよそは。網代さんには「エンディングまではこれくらいのボリュームです」といった感じでお伝えして、毎月リリースするシナリオの量を相談していきました。
網代:現実には、いろいろと調整しながらリリースしているんですけどね。毎月のスクリプト量やユーザーさんが読める量、作れるキャラやモーションの量、それに私が執筆できるスピードなども関係していきますから。
そのあたりの毎月のペース配分をつかめてきたのは、6章あたりでしたね。
保髙:大事なシーンでは特別な演出を入れたりしていると、ペース配分を超えた作業量になることがありますね(笑)。
網代:キャラの見せ方もできるだけ凝りたいんですが、スマホの縦長の画面だとキャラが横に並べないという悩みがあるんですよね。
5章や6章で弟子たちが会議したり、公国が何人か連れて会議したり、血斧騎士団のでかいヤツが登場した時は、スクリプト担当者が悲鳴を上げていました(笑)。
ーーシナリオ面で、保髙さんから網代さんに何か注文した部分はあるのでしょうか?
保髙:基本的には網代さんにお任せしています。ただ、新キャラとシリーズキャラに関する扱いについては、かなりしっかりと話し合いましたね。
網代:シリーズファンにとってシリーズキャラは思い入れが強いので、あまりシリーズキャラを推すと『BDFE』の新キャラが薄れてしまうとのことでした。
特に原作では敵キャラと戦ってアスタリスクを手に入れるという流れがあるのもあって、敵キャラのインパクトが強いんですよね。『BDFE』にはそういう要素がないので、新キャラの個性が色あせないよう気を遣いました。
保髙:ゲームのコンセプトのひとつが「新しいキャラによる新しい物語」だったので、オリジナルキャラが霞まないような注文だけはしました。
網代:3章の最後のサイドストーリーで、公国のうんちくが多く語られていたと思いますが、あれはメインシナリオから移して、あそこに収めました。
保髙:シリーズファン向けのマニアックなネタについては、メインシナリオではなくサイドストーリーや手帳のほうで描いてもらっています。
前2作にかかわっていたからこそできる、違和感のないシナリオ作り
ーー家庭用の『ブレイブリー』シリーズで描かれていなかった設定が見られるのは、ファンにとって嬉しいポイントですね。
保髙:網代さんが原作シリーズの流れを完璧に押さえているおかげです。
原作チームにも常にチェックを出しているのですが、浅野P(『ブレイブリー』シリーズプロデューサーの浅野智也氏)からも「網代さんなら安心できる」とお墨付きをもらっています。」
原作をないがしろにするわけにはいかないので、『BDFE』のシナリオ担当は誰にするか考えた時に、すぐに網代さんにお話を持ちかけました。
ーー『ブレイブリーデフォルト フライングフェアリー』と『ブレイブリーセカンド』の間に起こった話をきちんと整合性をとって描いているのは驚きました。
網代:自前で年表的な資料を作って管理しています。
以前に『セカンド』をプレイした人たちの意見で、「なぜこの人たちは今これをやっているのか?」という疑問をけっこう見かけたんです。
そこで、『BDFF』と『セカンド』の橋渡し的な物語を、『BDFE』の主人公を軸にしてうまく描ければなと思いました。
未来世界の各勢力の先祖が現代に存在するのですが、じつは彼らの悩み事などが『セカンド』のモンスター図鑑に記されています。
『セカンド』のモンスター図鑑の中に、兵器や銃を開発しているという記述がありますが、それがゆくゆくは『BDFE』の未来世界へつながる内容になっています。
保髙:時系列的な話だと、『セカンド』で初対面だったキャラが『BDFE』で会っていてはいけないという点は注意しましたね。
例えば、ユウが『BDFE』の中でこのキャラと会っているわけがない、とか。そのあたりの整合性は、網代さんがとくに気をつけていました。
網代:クエストを作る時に、(時系列的に)同行させても大丈夫なNPCのリストを同時に作成しました。
『セカンド』でユウが「この街、初めて来た」といった発言をしている場所に、『BDFE』の時点で訪れていたらおかしなことになりますし。まあ、主に制限が厳しかったのはユウなんですが(笑)。
最近はイデアも仲間になったので、その部分も注意して管理しています。
ーー9章からアニエス、12章からイデアも登場してきて、注目度がグッと上がったと思います。
保髙:土のクリスタルやクリスタル正教あたりのお話でシリーズキャラがドンと出てきましたが、その際に先ほど言ったようなシリーズキャラと新キャラの見せ方の調整を網代さんにお願いしました。
ですが、網代さんにとってもここは譲れない部分だったようで、「舞台がルクセンダルクでクリスタルが出てくるなら、クリスタル正教の話をしないわけにはいかない。そうなると、シリーズキャラが登場しないのは不自然だ」と説得されましたね。
ーーシナリオはほとんど網代さんが関わっていると思うのですが、逆に網代さんが担当していない部分はありますか?
網代:『BDFF』『セカンド』の時は、街中のNPCとの会話などは私以外の方が担当しています。
あと、図鑑の中身も手が空いていたら担当するくらいで、ほかの方が書いた内容の監修がメインでした。
保髙:今回の『BDFE』については、メインシナリオも図鑑も、すべて網代さんが担当しています。
ーーキャラの中にはユニークな名前もありますが、これは網代さんが?
網代:ダジャレネームはだいたい僕です(笑)。もともと『BDFF』をやっていた時もカッコイイ名前に興味がなくて、『BDFF』制作時にシリコンスタジオでキャラ名のアンケートをとった時も、僕はダジャレネームばかり推していました。
ちなみに、『BDFF』で最初にOKが出たキャラの名前はボリトリィで、『BDFE』はドン・クールサインです(笑)。ただ、ダジャレネームは単にいじりやすいというだけでなく、ダジャレ由来でそのキャラのバックボーンを描けるという狙いもあるんですよ。
ーー情報が詰まった手帳も魅力ですが、手帳で表現した伏線や小ネタなどはありますか?
網代:いろいろありすぎますね。これは制作側の都合の話になりますが、メインシナリオではひとつの会話をだいたい20タップ程度で読みきれるボリュームにしています。
あまりにもタップする数が多くなると読む側が大変なので。書いていて話が膨らみすぎると思ったら、手帳のほうに流しています。
▼手帳は「ホーム→メニュー→ストーリー振り返り」から確認できます。
ーーこれまでの物語で、お2人の印象に残っている場面はどこでしょうか?
保髙:思い入れが強いのは4章の最後です。最初のクリスタル解放のシーンで、デバッグ時にめちゃくちゃ触りましたから!(笑)
ストーリー絡みだと、やっぱり11章のラストでしょうか。ネタバレしたくないので、多くは語れませんが(苦笑)。
網代:僕は8章の幻影海賊団のくだりですね。あそこって本編ではさらっと描かれたのですが、じつは手帳のほうでガッツリ話を掘り下げています。
保髙:個人的に網代さんに聞いてみたいんですけど、書いていて難産だったストーリーはありますか?
網代:難産だったのはやっぱり9章、10章、11章ですよ。クリスタル正教、土のクリスタルの継晶の儀、それともうひとつ大きな出来事があって、ざっと3つの山場がありましたから。
本来は2つの章におさめるつもりでしたが、さすがに出来事が多すぎるので、3章にわたって、しっかりと描くことにしました。
ーー登場人物の中でリンネは特殊だと思うのですが、ああいう精霊的なキャラを出したのはやはりシリーズを意識してなのでしょうか?
保髙:そうですね。リンネは数少ない、最初から出すことが決まっていたキャラです。

立ち位置としては、時間遡行するにあたって主人公についていく謎の妖精で、主人公の意見を代弁してくれる存在です。
網代:リンネは設定画を見てすんなり性格のイメージがわきましたね。「ナンデストー!」のセリフも設定画から想像してさらっと入れたら、NGは出ませんでした。
「ナンデストー!」のセリフを思いつくと同時に、あのモーションも真っ先に発注しましたよ。
保髙:メガネの部分が着脱して動かせるようにと、デザイナーにまっさきに相談してましたね(笑)。
ーーリンネに限らず、キャラのモーションはどれも凝っていますよね。
網代:ひとつの章で入れられるモーション数は決まっていて、僕はだいたいそのギリギリまでオーダーを出します。
初期はもっと口パク手振りのみの紙芝居に近い感じの作りだったんですけど、それでは面白くないと思ってあれこれ手を加えました。
保髙:力を入れるところと抜くところを分けようという考えのもとで、大事なシーンはモーションも凝ってリッチに作り、そうでないところは口パクや手振りぐらいの演出でいいのではと思っていたんです。
でも、網代さんの強いこだわりで、気がついたら全体的に凝った作りになっていました(笑)。
「プレイヤー自身が楽しみ方を見つける」遊び方。そして、今後の展開について
ーー開催中のクリスマスイベントの一環でユーザー参加型のツリー制作イベントがありましたが、これはどういった意図から?
保髙:もともとシナリオ重視で1人で遊べるRPGという方向性とは別に、ルクセンダルクでオンラインRPGをやりたいという狙いがありまして。
▼とても豪華になった最新版のクリマスマスツリー。
「プレイヤー自身が楽しみ方を見つける」という体験をシーズンイベントを通じてお届けできればと思って、あのようなクリスマスイベントにしました。
僕自身がオンラインRPGにすごく思い入れがあって、極端な話、『BDFE』はバトルをしなくても楽しめるようなゲームにしたいと考えています。
ただ、ここしばらくはバトル関連以外の発展が中心だったので、そろそろメインコンテンツまわりも充実させていきますよ。少し前に公開したプロデューサーレターでも、そのあたりのアップデート情報について触れています。
▼クリスマスらしい装備も多数登場しています!
網代:シーズンイベントに合わせたシナリオ執筆もふとしたタイミングでやってくるので、ドキドキしています。
まあ、夏祭りイベントが実現できたことを考えると、どんなものでも世界観に合わせて作れると思います(笑)。
じつは、クリスマスイベント絡みで『セカンド』プレイヤーがわかるネタとか盛り込んでいるので、今後も注目していただければと。
ーークリスマスの次は、やはり新年イベントも?
保髙:そうですね。年末年始では複数のイベントを用意しています。
新年プレゼントとしてログインボーナスやタウンでのイベントも開催予定なので、お楽しみに!
ーーストーリーの続きに期待しつつ、それ以外のイベントも楽しみにしています!
保髙:先日のプロデューサーレターで発表したように、今後の大きなアップデートとして「フィールドを活かした新たな対戦コンテンツ」と「サポートメンバー機能」の実装を考えています。
「フィールドを活かした新たな対戦コンテンツ」は自警団とも関連したもので、複数人数でわいわい楽しめるような大型バトルコンテンツとなります。
そして「サポートメンバー機能」は、自警団のメンバーをパートナーとして連れていけるもので、アビスホールやコロシアムなど、これまで1人では厳しかった高難易度のクエストも遊びやすくなるはずです。
その他、年末年始でキャンペーンがありますし、2月も3月もなにかしら目玉を用意しています。そうこうしているともう1周年なので、盛り上がっていく『BDFE』をこれからもよろしくお願いします!
網代:ストーリーはこれからもアッと驚くような展開が待っています。
シナリオ担当としては、ユーザーさんの意見や反応が見られたほうが嬉しいしモチベーションが上がるので、もっとみなさん発信してくれていいんですよ(笑)。
保髙:初期のころに「ネタバレNG」というお願いをしたこともあり、ユーザーのみなさんはストーリーについて感想を書くことが完全にNGだと思っている気がします。
そこについては、以前に私のTwitterでもコメントしたのですが、「物語の感想がNG」というわけではないので、ぜひSNSなどでも物語の感想で盛り上がっていただけるとうれしいですね。
ただ、もちろんストーリーを楽しみにしている方は多いので、重大なネタバレだけは勘弁してください(笑)。
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