ガチャキャラではなく、現実拡張という発想。「FFXV×キングスナイト」開発秘話インタビュー

1986年にスクウェア(※現スクウェア・エニックス)がファミコンに参入する際に発売したソフト『キングスナイト』をベースにしたアプリ『キングスナイト -Wrath of the Dark Dragon-』。
オリジナル版の『キングスナイト』を踏襲しつつも「ブッ壊しアクションRPG」として新生した本作に、『ファイナルファンタジーXV(FFXV)』のイベントが登場!
しかも、ゲームを遊んでいるノクティスたちと協力バトルでマッチングするという驚きの内容になっています。
そこで、『キングスナイト』のプロデューサーを務める本橋大佐氏とディレクターの高橋三千夫氏にインタビューを実施。今回のイベントの真意についてお聞きしました。(文:カワチ)
▼プロデューサーの本橋大佐氏(写真:左)とディレクターの高橋三千夫氏(写真:右)。
『FFXV』のキャラと同じゲームを遊ぶという新たな試み
——まさか『FFXV』のキャラクターと『キングスナイト』と遊べるとは思いませんでした。どのような経緯で今回のイベントが実現したのでしょうか?
本橋:こういったコラボではキャラクターがユニットとして登場することが定石だと思いますが、『FFXV』本編ではノクティスたちが『キングスナイト』にハマッている様子が描かれていました。
それであれば、「FFXV UNIVERSE」(※)の展開として、現実を拡張するような形で、実際にノクティスたちが存在するような形で協力プレイを遊ぶという形がいいかなと思ったのです。
※:ゲーム本編、フルCG長編映画、アニメ、アプリゲームなど、『FFXV』世界全体を構築し、さまざまな入口から本作に入ってもらうための複合型コンテンツの総称。
普通にユニットとしてノクティスたちを登場させることも可能でしたが、『FFXV』のディレクターを務めている。田端(田畑端氏)とも話し合って現在のイベントの形にしました。
『キングスナイト』にマルチプレイがあり、『FFXV』でノクティスたちがスマホで遊んでいるシーンがある以上、プレイヤーが彼らと一緒に同じゲームを遊ぶことが自然かなと。
▼ノクティスたちと一緒に遊んでいる雰囲気を味わえる本イベントメインビジュアル。

——確かに『FFXV』をプレイした人なら、あの4人と一緒に遊びたいと感じたハズですね。
本橋:彼らが旅の中で『キングスナイト』をプレイしている様子を見ていた人はうれしいと思います。
動画:「キングスナイト -Wrath of the Dark Dragon-」PV02
高橋:ユーザーさんたちからすれば「ついにノクティスたちが来た!」という気持ちになってくれるかと思います。ただ、本橋から今回のイベント内容を聞いたときは自分も驚きましたけどね(笑)。
本橋:何を言っているのかわからないという顔でした(笑)。
高橋:そうですね(笑)。実は、こういったイベントをやるからには、最初は告知を行わないでユーザーさんに「もしかしたら本物のノクティスかも……?」と驚かせようかとも考えていました。
ただ、気付かないユーザーさんも出てきてしまいそうなので、ちゃんと告知をする形にしました。
本橋:現実拡張としては、そちらのほうがおもしろかったんですけどね。すでにノクティスたちの名前を使ってプレイしているユーザーさんも多いでしょうし、混乱させてしまうかなと。
——逆にオフィシャルであるノクティスたちとユーザーさんの間ではどのような差別化が行われているのでしょうか。
高橋:大きいところではマッチングしたときに彼らがボイスでしゃべります。

本橋:『キングスナイト』には今までボイスはなかったのですが、今回のイベントで初めて実装しました(笑)。
高橋:バトル中もキングスバスターを発動したときや瀕死のとき、うまくボスの部位破壊ができたときなどにしゃべりますね。

本橋:ノクティスの「●●●●」も収録されている?
高橋:それはネタバレなので無いです(苦笑)。いちおう、時間軸的には本編開始前くらいで、冒険の序盤のころということになっています。
——今回のイベントで登場するキャラクターは『FFXV』のパーティメンバーである4人なのでしょうか?
本橋:そうですね。個人的にはアラネアさんが好きなので出したかったです。マッチングして「坊や、遊んであげるわ」と言われたい(笑)。
高橋:イベント第2弾が実現したら登場してもらいましょう。でもアラネアはスマートフォンを持っているのかな(笑)。
——確かに気になりますね(笑)。ところで、まだ今回の『FFXV』イベントを知らないユーザーさんもいると思うので、改めて内容を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?
高橋:はい。特定の時間帯になるとノクティスたちが協力バトルをはじめるので、その時間に協力バトルに参加することで彼らと一緒にゲームすることができます。そして彼らとマッチングを重ねることで彼らの掲示板が覗けるようになったり、ダイレクトメッセ―ジが届くようになったりします。
本橋:このイベントのために、専用の掲示板を作りました。彼らの日常が垣間見られますよ。


高橋:最初のダイレクトメッセージは「お前、強いな」みたいな内容からはじまりますが、仲良くなっていくことで人生相談のようなものも投げかけてくるようになります。
本橋:キャラクターによって内容は違いますね。
高橋:そうですね。グラディオだと「俺はギガントが好きだ」とか好きな職業のことをしゃべることもあります。
仲良くなると、自分が「王の盾」であることなど、けっこうプライベートなことまで明かしてくれたりするので、そういったキャラクターの等身大の部分も感じながら協力プレイを楽しんでいただけるとうれしいですね。
イベントを遊べば『FFXV』本編のDLCをゲットできる!
本橋:ほかに注目していただきたいのは『FFXV』本編との連携です。今回のイベントをプレイすることで「キングスナイトステッカー」「キングスナイトのおもいで」「キングスナイトTシャツ」という3つのDLCのシリアルコードをゲットすることができるようになっています。
高橋:レガリアの「キングスナイトステッカー」は女性のアートディレクターが作ってくれたのですが、かなりオシャレなデザインになりました。よく見ると「キングストーン」が描いてあって芸がこまかいんですよ(笑)。

本橋:『キングスナイト』のBGMを聴けるのもポイントですね。「キングスナイトTシャツ」はE3の会場で配ったものと同じデザインです。こうして『FFXV』のゲームに登場させることができてうれしいですよ。まさかノクティスが着てくれることになるとは(笑)。
高橋:しかも性能もいいんですよ。全耐性がアップするので便利なんです。

——こちらはどのように入手するのでしょうか?
高橋:ゲームを進めることで報酬として特典コードをゲットすることができます。『FFXV』ユーザー向けのイベントということもあり、それほど高難易度にはしていないのでぜひ遊んでみてください。
——ほかに今回のイベントでユーザーさんが気付きにくい小ネタなどはありますか?
高橋:ボイスパターンの多さですかね。たとえばノクティスとプロンプトなど、組んでいるキャラクターによって掛け合いも違うので注目してみてください。
それから、ノクティスたちも一般ユーザーさんと同じ扱いなのでプロフィール画面が存在します。そこでの一言コメントがこまかく更新されていくのでチェックするとおもしろいと思います。

本橋:プロンプトだったらカメラの話、ノクティスだったら釣りの話とキャラクターの個性が出ています。
——イベントで見ることができるショートストーリーは『FFXV』のチームが監修しているのでしょうか?
本橋:いえ、監修ではなく『FFXV』のシナリオチームに作ってもらいました。
高橋:そのため本編と比べてもなんの遜色も無いものになっています。キャラクターの深掘りや意外な一面をしっかり描くことができるというのが、ほかのコラボと「FFXV UNIVERSE」の決定的な違いですね。
本橋:『FFXV』のチームもPC版の作業などで大変だったのですが、なんとか作業の合間を縫って手伝ってもらいました。
高橋:このイベントは世界中で同時開催を目指していたので、海外版の翻訳監修も本編と同じ翻訳チームにお願いしました。
——すごい凝り方ですね。
そもそも『キングスナイト』を復活させた理由とは?
――今回のイベントをきっかけに『キングスナイト』をプレイするユーザーも多いと思うので、ここからは改めて本作の成り立ちについてお聞きしてもよろしいでしょうか。そもそもなぜ『キングスナイト』を復活させようと思ったのでしょうか?
本橋:ほかにもいくつか候補はあったのですが、スクウェアがはじめてコンソールで発売したオリジナルタイトルだったという歴史があったことが大きいです。
あとは『キングスナイト』のゲーム性がスマートフォンに合致すると思ったからですね。縦スクロールのアクションのようなゲーム性は、スマートフォンでも遊びやすそうでしたので。
——なるほど。本作は懐かしさを感じつつもファミコン版とは違った形になっている部分も多くありますが、これは現代風にアレンジしたためでしょうか?
本橋:おっしゃるとおりです。ファミコン版は上から見下ろす形でしたが、スマートフォン版では現代に合わせて奥行きを再現したりしています。また、ジョブなどの要素を追加して戦略の幅も広げています。
▼オリジナルであるファミコン版『キングスナイト』。

▼スマートフォン版では3Dになり奥行きが再現されています。

——協力プレイの実装は最初から実装が決まっていたのでしょうか?
高橋:そうですね。ジョブによって役割が変わってくるのがおもしろいゲームなので、協力プレイは実装しようと思っていました。とくに敵を引きつけるギガントなどはマルチプレイで楽しさが変わってくるのではないかと思います。
——本作はリリースまで1年ぐらいの延期がありましたが、ゲームの調整に苦労されたのでしょうか?
本橋:はい(苦笑)。登場する職業やキングスバスターの実装などといった構想自体は初期から変わっていないのですが、バランスの調整に時間がかかってしまいました。
高橋:そうですね。どのジョブも似たような性能になってしまっているなどバランスが悪かったですね。ギガントも今のようにタンクの役割ではなく、ちょっと動きが遅いけど周囲を継続的に攻撃できるようなジョブでした。
本橋:もともとはオリジナル版をリスペクトして歯ごたえのある難易度のゲームを作っていましたが、最近はアップデートでオートモードなども実装してアクション初心者のかたにもプレイしやすいように調整しています。
高橋:電車のなかなどでプレイする人も多いでしょうし、ストーリーが気になるという人もいるでしょうしね。ストーリーの難易度はかなり遊びやすくなりました。
——これから本作をプレイするユーザーにオススメのジョブなどがあればお教えいただけますでしょうか。
高橋:クセの少ない戦士が使いやすいですね。あとは遠距離から攻撃できる魔導士もオススメです。回復系のキングスバスターも多いので、やられたノクティスたちを助けてあげることもできますよ。
本橋:ノクティスたちを回復してあげると、感謝の言葉をもらえます。意外と気づきにくい、レアなボイスパターンかもしれませんね。
高橋:まぁ、ノクティスたちはやられても、すぐにコンティニューで復活してきますけど。彼らは『キングスナイト』にハマッていますから(笑)。
▼誰でも使いやすい戦士(写真:左)と遠距離攻撃や回復ができる魔導士(写真:右)


本橋:逆にシーフは少しテクニカルなので初心者は避けたほうがいいかもしれません。ギガントもソロプレイには向かないですね。
ただ、ギガントは自分の周囲にバリアをはって仲間を守ることができるので、マルチプレイではおもしろい立ち回りができる通好みなジョブだと思いますよ。
高橋:ちなみに、イベント中はノクティスたちが使っているユニットがガチャで入手しやすくなっているので、それらを入手しておそろいのユニットで戦うのもいいかもしれません。

今後の展開について
——今回の『FFXV』コラボも驚きましたが、今後はどんな展開に挑戦してみたいですか?
本橋:まずは、気が早い話ではありますが、なんと言っても『FFXV』のイベント第2弾をやりたいです。
そのときは、今回登場させることができなかったアラネアやシドニーを登場させたいですね。ほかにも、また『スペランカー』のようなドット系の作品ともコラボしたいですね。
——ファミコン世代にはたまらないでしょうね。
高橋:できれば、スクウェア・エニックス以外のファミコン時代のゲームとコラボをしてみたいですね。
あとは、本編の新職業なども追加していきたいところです。いつも会議で話に出るものの実作業には踏み出せていないので、まだまだ先の話になるとは思いますが。
本橋:そうですね。本質的な部分はアクションゲームなので、その部分の楽しさの幅を広げる新要素にはどんどん挑戦していきたいです。
——楽しみにしています。では最後に読者へメッセージをお願いします。
高橋:『キングスナイト』のファンはこの機会に『FFXV』を遊んでほしいですし、逆に『FFXV』のファンにも『キングスナイト』を遊んでほしいと思っています。
『FFXV』でDLCをもらえるというごほうびもさることながら、このイベント期間中にしか体験できない、かなり貴重なゲーム体験になると思います。『FFXV』のキャラが好きな方は、ぜひこの機会に壮大な「FFXV UNIVERSE」の世界をお楽しみください。
本橋:今回のイベントでは『FFXV』の現実を拡張するような世界観をゲーム内で再現できたと思います。ほかに類を見ないイベントだと思うので、私たちもユーザーさんの反応が気になっています。
みなさんからの意見も今後の展開にフィードバックしていきたいと思っているので、SNSなどを通じて、ぜひいろいろな感想をお寄せいただけるとうれしいですね。
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・販売元: SQUARE ENIX Co., Ltd. ・掲載時のDL価格: 無料 ・カテゴリ: ゲーム ・容量: 102.5 MB ・バージョン: 2.1.13 |
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