『サガ スカーレット グレイス 緋色の野望』インタビュー! 変更点は400個以上、新主人公がいない理由は?


スクウェア・エニックスが2018年8月2日に発売する予定のPS4/Switch/Steam/iOS/Android用RPG『サガ スカーレット グレイス 緋色の野望』

本作は、河津秋敏氏(スクウェア・エニックス 『サガ』シリーズ総合ディレクター)が手掛ける『サガ』シリーズの最新作『サガ スカーレット グレイス』に新たな要素を加えて大きく進化をさせた作品となっています。

ついに発売となる今回は、本作を手掛けた3人のキーマンにお話をうかがってきました。2016年に発売されたPS Vita版を遊んだことがある人も、これから本作をプレイしようと考えている人も、ぜひご覧ください。(文:まさん)

▼左からディレクターの生田泰浩氏、サガシリーズ総合ディレクター河津秋敏氏、プロデューサーの市川雅統氏。


※インタビュー中は敬称略

PS Vita版ユーザーの意見を取り入れて改良された操作性

──まずは『サガ スカーレットグレイス 緋色の野望』の制作に至った経緯から教えてください。

河津:制作の経緯で言えば、PS Vita版『サガ スカーレット グレイス(以下、サガスカ)』を作っている時から高解像度の大画面とスマートフォンの両方で遊ばせたいと考えていました。開発当初から考えていたことではあったのですが、『サガスカ』自体が新しいチャレンジをしているゲームだったので、まずはPS Vitaでゲームとしてしっかり完成させることをやりきろうと開発を進めました。その後、予定通りに大画面で高解像度であるPS4版と、タッチで遊ぶスマートフォン版を作ろうという流れになっています。

それから、Nintendo Switchのハードが発表された時点で開発環境を踏まえて可能だったのでSwitch版も作りましょうということになり、スケジュール的にもPCへ比較的簡単に移植できることがわかったので、PC版も同時にやろうという形になりました。

市川:河津さんのほうから、PS Vita版の開発が終わったころに「タッチパネルで遊べるRPGのフォーマットを1つ作っておかなければならない」というお話があったんです。PS4版の話と同時にその話をされていたので、ぜひやりましょうとプロジェクトが動き出しました。

Nintendo Switchもタッチパネルで動かせる形式だったこともありますが、そもそも『サガ』シリーズ自体の年齢層がかなり幅広く、ゲーム機を持っていない方もいれば、逆にTV画面じゃないとゲームをやりたくない方もいらっしゃるので、複数のプラットフォームで出すほうがいいのではないか、というお話をさせていただいた形ですね。

──『緋色の野望』には大画面向けのUIと携帯機向けのUIの2種類が用意されていますが、これも開発当初から切り替え可能なものとして考えられていたということですか?

生田:それは、自分のほうから「両方切り替えられるようにしたい」という提案をしました。最初のオーダーでは“各プラットフォームにきっちりと最適化したものを出そう”という話で、タッチデバイスに合ったUIを作り、かつPS4などの据置ハードも手を抜かずに両方作ろうという考えでした。

ただ、今のデバイスはPCでもタッチ操作ができたり、スマホでもコントローラをつないで遊ぶ人がいらっしゃいます。コスト面での心配はあったのですが、両方選べるようにしたほうがいいだろうとUIを2種類用意しました。

河津:スマートフォンでは、すでに『ロマンシング サガ2(以下、ロマサガ2)』を販売していますが、あちらはPS Vita版と同じタッチ操作で動く形になっています。スマホへの移植というとコマンド式RPGでも大概がそういった形になっていて、“根本的にスマホにあわせたUIへ作り替える”というプロジェクトは社内でもあまりなかったと思います。

スマホのRPGの中には「いまいちしっくりこない」「使いづらい」という意見のものもあり、UIのせいでゲームのおもしろさとは違う部分の評価をされてしまうのは非常に残念だと思っていたので、きちんと評価してもらえるようにしたかったんです。

当社でもスマホのゲームはたくさん出していますし、その辺りの知見も踏まえながらタッチでもしっかり操作できて、ゲーム性としてもしっかり考えてプレイできる。コマンドRPGのよさを伝えられるものを作ろうと、タッチ操作のUIに関しては重視していました。

▼スマートフォン向けのUIと大画面向けのUI。同じゲームでも操作性からウィンドウの配置、文字の大きさまでまったく異なる。違うUIが2種類入っているぜいたくな作品だ。



──Steam版も含めて、ここまでマルチプラットフォームで同時に展開するのはスクウェア・エニックスのタイトルの中でも珍しい展開だと思います。

市川:『サガ』っぽいことをやろうとした結果ですね(笑)。

河津:ビジネス的にも据置ハードでパッケージを出して、同時にダウンロード版やスマホ版もあるものは、他社さんを含めてもあまり例がないことだと思います。ユーザーの購買行動がどのような形で現れるのかは興味が湧くところではありますね。

──確かに、『サガ』ユーザーがどのハードを選ぶのか気になりますね。

河津:ゲームユーザーは当然ゲーム機で遊びたい人が多いと思います。とはいえ、今はゲーム機を持っていなくてスマホしかないという人もいらっしゃるので、スマホで遊ぶ人も多いかもしれません。どうなるかは発売してみないとわからないですね。

市川:会社的にも初めてですし、世間的にも初の試みなのではないでしょうか。パッケージがあってビジネスモデルも違いますから、どう受け入れられるのか楽しみです。

──『緋色の野望』を遊んでみると、UIなども含めてPS Vita版とは別物になっていると感じました。

市川:結果として全然違うものになっていると思います。もちろん、Vita版も素晴らしいものだと思って作っていますがゲームプレイの印象が全然違いますね。

河津:いろいろな部分のスピードが上がることで、プレイの感触がこんなに変わるとは予想していなかった部分ではあります。とはいえ、スピードが早すぎるので流して遊んでしまう部分も出てきて、かえってよくないかなと思うところもあるんですよ。テンポが早ければいいものでもないな、と(笑)。

──戦闘中のリワード表示など、Vita版のユーザーが欲しかった機能が追加されているように感じたのですが、Vita版のユーザーから届いた意見を参考にされた部分もありますか?

河津:操作系に関しては、ユーザーからの要望がベースになっている部分が多いです。ロードを早くして欲しいという意見は当然ですが、周回の引き継ぎ要素に関してもユーザーが引き継いでほしい。こういうものを見たいといった要望を取り入れました。

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既存のイベントと違和感なく混ぜ込まれた新規イベント

──ゲーム開始時にクリアした主人公のアンケートが出てきますが、これに答えることで具体的にどのようなイベントが増えるのでしょうか?

河津:アンケートに答えることで出てくるイベントは、モンドやアーサーなど主人公のパートナーに関するイベントですね。アンケートでクリア済みにしなくても、ある主人公でクリアすれば、その主人公のパートナーに関するイベントが次の周回で別の主人公を遊んだ時に発生する仕組みです。

──たとえば、Vita版でもあったウルピナの誘拐イベントは、アンケートに答えた状態だとルーグ村にアーサーが立っていて話が少し変わっていました。そういったイベントが増えるということでしょうか?

生田:そうですね。パートナー以外の新規イベントは、アンケートに答えなくてもすべて1周目から発生します。

▼アンケートでクリアした主人公を選ぶことで、街にクリアした主人公のパートナーが出現。彼らに関するイベントが追加される。



──ゲーム開始時の選択といえば、主人公のボイスもデフォルトとアレンジの2種類を選べますが、これはどのような狙いで入れたのでしょうか?

河津:狙いというよりも、せっかく声優さんにしゃべっていただいたのでウルピナだったらカワイイ感じなのか、それともツンツンしている感じのお姫様なのか、ユーザーがどちらを期待するかに対しての振れ幅を用意して遊んでいただこうというところです。デフォルトとアレンジのどちらを選んでもらっても構いません。

ボイスに関してはあくまでもオマケ的な要素なので、ボイスがなければプレイできなかったり、おもしろさの質が変わってくるようなこともありません。1周目はデフォルトでプレイしたので2周目はアレンジで遊んでみるといった、変化をつけて楽しんでもらう要素として入れてみました。

──今回はボイスそのものが個性的ですよね。とくに、初期パーティのメンバーはキャラが立っていて、Vita版を遊んだときとは大きく印象が変わりました。

河津:初期メンバーは最初から仲間にいるので、主人公やパートナーとの関係性が見えていますから、バランス感やお互いの役割を計算して設計できました。ボイスを作るうえでも、割とおもしろいものを作ることができたのではないでしょうか。

市川:Vita版ではよくわからなかったモブキャラのような仲間が、急に自立した人間に見える(笑)。「鎧を纏って顔が見えない子にも、こんな物語があるんだろうな」というのが想像できますよね。あと、主人公や仲間がやられたときに叫ぶセリフもいいですよ。エリザベートがレオナルドを本当に心配していることがわかったり、いろいろな関係性が見えてきます。

──個人的には、HPが上がると「重くなったわ」とか「太ると困る」というセリフを聞けるのが好きです。HP=体重なのが『サガ』らしいというか……(笑)。ボイスの使い方自体が凝っていますし、戦闘中にしゃべるボイスのバリエーション自体も多いですね。

生田:戦闘中だけでも、40種類くらいセリフがあるキャラもいますね。

河津:戦闘中のボイスは、意味のないことを言わせたくなかったんですよ。しゃべるからには、その人の何かを表現してもらいたい。もしくは、その場を盛り上げることを言ってもらいたいと思っていたので、そこはかなり考えました。苦労もしたのですが、その分だけ熱が入ってますね。

生田:仲間になるキャラクターの数が多いゲームなので、考えるのは大変だったと思います。

河津:もちろん、単なるウケ狙いしか言わないキャラクターもいますが……(笑)。

──フルボイスではなくパートボイスになったのは、作業量の問題なのでしょうか?

河津:フルボイスにしなかったのは、単純にテキスト量が多かったからです。全部しゃべると収録量が大変なことになりますし、チェックするほうも全部聞かなければいけないので、現実的な理由でなくなりました。

生田:このゲームは、テキスト量がありえないくらい多いですから……。

河津:ボイスは必ずしも、全部入れる必要はないと思っています。重要な場面だからしゃべるわけでもなく、本当にどうでもいいセリフでも、おもしろくなるならボイスを入れています。

──ボイスのほかにも新要素としてカメリアとサビットという2名の新キャラクターが増えましたが、彼らを追加した理由について教えてください。

河津:小林智美さんに描いてもらったデザインのうち、Vita版で使っていなかったものが2つあったのが理由です。余っているから、これを使おうと(笑)。開発期間から考えても、コスト的に2人分作れればいいかなと思っていました。

生田:モデル制作の手間を考えても、コスト的にも2人くらいが都合よかったです。

河津:使っていないデザインが男女だったので、ちょうどよかったですね。

──カメリアやサビットを主人公にする案もあったのでしょうか?

河津:Vita版を作っていたときは、もしも追加するなら主人公しかないと思っていたのですが……。QA(社内の品質管理部門)にもう一度全部遊び直してもらうことになり、検証コストが膨大だったので止めました。遊び直すだけでなく、ほかのキャラクターも含めて全部検証し直すことになるので、そこが主人公を増やせなかった大きな原因ですね。それがなければ、新主人公を増やそうと思っていたのですが、さすがに「新しい主人公がバグだらけです」ということにするわけもいきませんから(笑)。

市川:そもそも、このゲームは4人の主人公を遊びつくしても謎が多いじゃないですか。今回は、河津さんが持っていた設定を掘り下げていく形でイベントを追加しているので、主人公を追加するよりもパートナーの物語といったVita版の時点で用意してあったものをどれだけ掘り下げられるか、という方向でいこうという結論になりました。

『サガ』シリーズは、クリアしたあともすべてが解き明かされて終わるものではありませんが、自分なりの解釈で世界を見ていくのが魅力だと思っています。そういう意味では、カメリアの話もかなり変わっていますね。

──確かにそうですね。自分はタリア編でカメリアを仲間にしたのですが、カメリア関連のシナリオはいろいろと驚きました。

河津:ほかの主人公でカメリアを見てみると、より多面的に見られると思います。

──サビットも新キャラクターなのに、最初に出会ったときは五行武器の話しかしなくて驚きました。

生田:もっとしゃべる場面もあるのですが、普通に出会っただけでは五行武器の話しかしないかもしれません。

市川:新キャラクターは周回プレイを意識しているので、1キャラだけではなくてほかの主人公も遊んでもらうことで、ご満足いただけるような作りになっていると思います。

──ちなみに、現在発表されている2名のキャラクター以外で新たに仲間になるキャラクターはいますか?

河津:仲間キャラクターの数は増やしていないですね。ただ、仲間になる条件自体が変わったキャラクターは存在します。

▼主人公によって異なる反応や印象のある新キャラクター。すぐに仲間にできるキャラクターというわけではないようだが……?


──周回といえば、2周目以降に大きく変わるイベントなども用意されているのでしょうか?

市川:2周目以降は、ゲーム開始時に答えたアンケートと同様です。クリアした主人公のパートナーに関連したイベントが増えます。

生田:1周目でたいていのイベントを遊べるようにしてあるので、周回しないと見られないのはアンケート関連のイベントくらいです。ただ、2周目以降の目標として1周目では到底倒せないような強敵を多く用意しているので、そいつらを倒して楽しんでもらう感じですね。各主人公のストーリーもそうですが周回するとバトルにも慣れてくると思うので、もっと強い敵と戦いたくなると思います。

河津:今回のバトルは、2周引き継いで遊ぶことを前提に設計しているので、そこを楽しんでもらいつつ、見ていないイベントを掘っていってもらえればと。

生田:そもそも、同じ主人公でも1周ですべての要素を遊びつくせるゲームではないですね。2周目で新しい発見がたくさんある作りになっています。

市川:今回はハードが増えたのでプレイ実況などもしやすいですし、友人と比べて「こんな謎があったのか」「こんな戦い方があったのか」という発見があると思います。自分も未だに、遊んでいて「こんなイベントあったかな?」と思う時があるくらいですから(笑)。

ほかの人のプレイと比較していくと、全体の底知れなさが見えてくると思いますし、そこが『サガ』シリーズの魅力でもあると思いますから、ほかの人とシェアしながら遊んでいただけると、より楽しめるかもしれません。

──自分も『緋色の野望』を遊んでいて新たなイベントが出ると、前作で見逃していただけなのか新イベントなのか悩んでしまって、何度も「サガ スカーレット グレイス 公式設定資料+攻略ガイド 緋の天啓」を紐解きながらプレイしていました。

市川:本当にそこが困りますよね。うちのQAも追加要素を調べようとしたら変更点だけで400個以上あって、1カ月くらい新規要素だけをチェックしていました(笑)。

──Vita版でフリーバトルだった場所にさりげなくイベントが追加されているので、前作から存在していたような気がしてしまうんですよね。

河津:堂々と「追加要素です!」と言うのではなく、Vita版から存在していたイベントと区別がつかない形で入れたかったんですよ。初めてプレイする人が追加部分を遊んで、違和感を抱かないようにすることが重要だと考えていました。

▼前作のフリーバトルポイントやイベントがなかった場所。無意味に見えたところでも新たなイベントが発生。サブイベントが増えて探索がより悩ましいものに!


──そうなると、追加イベントの発生は特殊な条件でもなく、通常のイベントと並行して発生する形になるのでしょうか。

河津:普通に起きるイベントの中に混じっているので、そのまま遊んでもらえれば大丈夫です。町で話せる吟遊詩人や仮面劇などのイベントも、特別なスイッチはありません。

──各地に調査小屋が増えていたり、アスワカンに闘技場が設置されていたりと、新しいアイコンも増えていますね。

河津:闘技場も新要素ですね。闘技場はある程度強くならないと門前払いされます。だいぶ強くなってからじゃないと入れません。

生田:闘技場はバトルコンテンツで、強くなってから訪れるとちょっとした腕試しができます。無理だと思ったら次の周回で挑むくらいのものとして設置しました。

バランス調整によって戦略の自由度が増したバトル

──今回はバトル難度を変更できるようになりましたが、PS Vita版と同等の難易度が“標準”なのでしょうか?

生田:“標準”は、Vita版に近い難易度にはなっています。ただ、本作では素材の入手法などにも手を入れていますし、Vita版と違って初回特典でアイスソードを手に入れられないので、トータルで見るとVita版の難易度とのズレはありますね。難易度“弱め”はRPGが得意じゃない人にも遊んで欲しいと思って用意した難易度です。

──バトル難度自体は、どのような形で調整しているのでしょう。敵の耐久力が減っているのでしょうか?

生田:“弱め”にすると、主に敵のHP、攻撃力、防御力が低くなります。それから、内部的に使われているパラメータによって敵の思考パターンが変わるという傾向も若干あって、“HPが一定の数値以下では、こういう行動をとる”とか“プレイヤーが育っていない時はこの技を使わない”といった調整もしているのですが、難易度の変化を感じにくい敵もいると思います。

攻撃力が振り切れていて1発でこちらを仕留めようとしてくる敵もいますし、多少攻撃力が下がったところでツライ相手はあえてスポイルしないようにしています。難易度を下げると全体的に少し楽になりますよ、くらいのイメージですね。

──そもそも、Vita版の電子説明書でも「このゲームは、ほかと比べて非常にやられやすいゲームです。上手い人でもやられます。やられないに越したことはないですが、不安になる必要はありません」と書いてありましたね。そこが本作の醍醐味でもありますが……(笑)。

河津:ゲームシステム的に“バトルを通して1人でも生き残ればOK。最終的に残ったほうが勝ち”というルールなので、仲間がやられても冷静にプレイしてもらえればと。普通のRPGとは設計思想が違うので、1人くらいやられても大丈夫なように心臓を鍛えていただくのが一番かもしれません(笑)。

──バトルで気になったのですが、前回便利だった“マジカルシャワー”が全然手に入らないんですよ。もしかして、マジカルシャワーはなくなったのですか?

生田:いえ、マジカルシャワーの陣形自体はなくなっていません。ただ、前作では万能感が強すぎたので覚えられるキャラクターを調整し、性能自体もいじりました。人によって戦い方が変わって欲しいという思いがあるので、マジカルシャワーにしていればOKですという形にはしていません。

新しく追加した陣形も、戦い方によってはすごく光る個性派ぞろいを用意しています。マジカルシャワーが使えなくてもあわてずに、自分に合う陣形を考えてもらえるとうれしいですね。とくに、全滅した時は陣形を調整することを意識してもらえると戦いやすくなると思います。

▼新しい陣形も増えた本作。クセのある陣形を使いこなして勝利をつかめ!


──マジカルシャワーといえば、前作で強力だった“毒霧”や“召雷”といった術は健在ですが、これらにも調整が入っているのでしょうか。

生田:“毒霧”や“召雷”は、Vita版で強すぎた術なので多少調整しています。ただし、Vita版でできた戦い方を完全に消してしまうような調整はしていません。ほかの戦い方でも攻略できますし、あまりに強すぎた技や術には手を入れている、くらいのイメージでとらえていただければと思います。

河津:もともと『サガスカ』では“魔法が使いづらいけど強い”理由があり、世界観として設定していました。魔法を使える人は、すごく限られているという大本の世界観設定があり、それを引きずっていたので魔法は強いけど使いづらいという仕様になっています。実際に遊んでみるとストーリーにまったく出てこない設定なので、今回はもう少し魔法の使い勝手をよくする調整を入れました。

──新しい技や術も大幅に増えていますが、これらはどのような基準で追加されたのでしょうか?

生田:新技に関しては、ご褒美的な物が多いです。修得するのは難しいのですが、覚えたらその武器種の中でエースになれる技が多いですね。覚えにくいけど強力な技と、地味だけど便利な技を中心に追加しました。術に関してはちょっとコンセプトが違っていて、あまり補助系の術が多くなかったのでそこをフォローしています。

河津:バトルのイベント自体も100個以上追加しているので、かなり増えています。

──術に関しては、今回どの系統の術を覚えるかといった表示やランクアップに必要なフラックスが表示されるようになって、意識的に覚えやすくなりましたね。

生田:そこもユーザーの声がありつつ、我々も感じていたところだったので手を入れた部分です。

──術や技だけではなく、新しいイベント敵も増えていますが、プレイヤーと戦える十二星神は増えていいないのでしょうか?

河津:実際に戦える十二星神はヴァッハとマリガンだけですね。星神はプレイヤーの敵ではないので、すべてと戦えるわけではありません。

▼戦える星神はVita版と同じ2柱。今回は戦闘中にしゃべってくれるのでヴァッハ神のキュート&神っぽい気まぐれさがアップ!(写真はPS4版)


──その代わりというべきなのか、今回は恩寵の発動率自体がかなり高くなっているように感じました。とくに“イムホキエルの加護”が戦闘の早い段階で発動するような……。

生田:はい、恩寵の発動にも調整が入ってます。

河津:Vita版のイムホキエル神は、バトルの終わり間際に出てきて「今頃出てきてどうするんだ!」という意見が多くて、生田君がみなさんに突っ込まれていたので「変えます!」と言っていましたね(笑)。

生田:ユーザーの声を拾っていくとイムホキエル神に対するみなさんの声が多かったので、そこはできる限りで調整しました……(笑)。

河津:3人くらい力尽きてから出てきて、今更出ても遅いよということが多かったので戦闘の早い段階で出現するようになっています。発動すれば、パーティがかなり堅くなりますよ。

生田:Vita版よりは、発動することで強さを感じられるようになったのではないでしょうか。

──今回から初めて『サガスカ』を遊ぶ人もいると思われますが、お三方がオススメする陣形やお気に入りの技を教えていただけますか?

生田:今回は、各主人公が最初から選べる陣形が1つずつ増えています。戦闘開始時からBPが5つある陣形が増えたので、その陣形を使えばバトルの序盤でいろいろな手が取れるでしょう。新しい戦い方を含めていろいろできるので、ぜひ試してみてください。ただ、この陣形は長期戦向きではないので、慣れてきたらちゃんと相手を見て陣形を考えてもらえればと思います。各主人公の初期陣形は普通に戦えるバランスになっているので、特殊な陣形を使いすぎて勝てないときは1回初心に返ってもらうのもいいかもしれません。

術のオススメは、今回新しく追加された“アーマーブレス”という術ですね。一見すると地味な効果なのですが、アーマーブレスで防御力を高めたキャラクターにプロテクトさせることで、戦闘が一気に楽になります。

──なるほど。今回は槍にもプロテクト技が追加されていて、プロテクトがより活用しやすくなっていますね。

生田:槍は使い勝手の良い武器になったと思います。プロテクト技が増えるだけで選択肢も増えていますし、それ以外にも調整が入りました。

市川:『サガ』シリーズを初めて遊ぶ人は、難易度が高いかもしれないとか、物語が自由すぎてわからなくなるのではないか、という不安があると思います。そういう人は“ウルピナ編”が一番ベーシックに物語を楽しめるのでオススメです。

自分はVita版だと“バルマンテ編”が一番好きだったのですが、バルマンテ編は今までのシリーズを遊んだ人でも少し変わった体験が楽しめる主人公だと思います。レオナルド編はいわゆる『サガ』ならではの自由さがありますね。今回はボイスが入ったことで、いろいろな掛け合いがすごい楽しくなっていますよ。

生田:レオナルド編は、一番お気楽なパーティかもしれません。

市川:Vita版のときは、レオナルド編の難易度は少し高いかもしれないという方向で推していたのですが、いろいろなアイテムが手に入るので育成しやすいですし、最初から遊ぶ人にもオススメかもしれません。

生田:自由度を求める人はレオナルド編からのほうが遊びやすいですし、よくわからないけど『サガ』シリーズを遊んでみたい人はウルピナ編がいいですね。人によってシナリオの合う合わないがあると思うので、少し遊んでみて「この主人公は違うかも?」と思ったら、別の主人公で遊んでもらうのもアリだと思います。

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──バルマンテ編はアーサーとの友情も見どころで、女性人気も高そうなイメージですが移動制限が多かったり、アーサーのワナがあったり、『サガ』らしいトラップがありますね。

生田:アーサーのワナ(笑)。

市川:バルマンテ編は、そこがすごくおもしろいんですよ。ホームズとワトソンみたいなタッグで、今までのシリーズと比較してもキャラが立っているところが魅力的です。

──自分は、Vita版から“タリア編”を最初に遊ぶのですが、今回は大魔女も話に絡むようになってきて、より彼女の背景が見えやすくなっているように感じました。

市川:そうですね。タリアは魔女関連のストーリーが追加されています。

河津:タリアで遊ぶとネタ晴らしをしてくれるので、世界観的な部分を楽しみたい人はタリアですね。

生田:「結局、コレは何だったの?」と思ったらタリアで遊ぶといいと思います。

市川:ボイスが入ったことで、よりキャラクターに愛着が湧いて、パーティのメンバーにも愛着が湧くから決めづらくなりましたね。カーンの仲間のキラーズも個性的なキャラクターをしていますよ。

▼かなり笑えるセリフをしゃべるキラーズの面々。顔グラフィックをタッチする、もしくはR3ボタン(PS4の操作)を押し込むことでしゃべるひと言も必聴だ。


──キラーズいいですよね。トマトさんが「中身が出る!」とか叫んだり、スネイルが「やめて、割れちゃう!」とか叫んでいたり、この人たちは何を言ってるんだろうと(笑)。

生田:あの辺のセリフは、さすが河津さんだなとボイスを聞いていて思いました。

市川:聞いていて一生忘れないセリフが多いと思います。

河津:収録の時に、声優さんからよく「このセリフはどういう意味なんですか?」と聞かれたんですよ。「トマトだから中身が出るイメージです」と返して「わかりました」とやってくれるのですが、本当に納得していただけたのかはわかりません(笑)。

生田:横で聞いているほうは楽しかったですよ(笑)。

河津:「ラップ風にしゃべってください」とか、かなり無茶を言ってお願いしました。真面目なシチュエーションで変なことを言われるので「お前な!」と思わず、突っ込んじゃうかもしれません。そこが逆におもしろくて、本当に二度とないようなシチュエーションでボイスをしゃべってくれるので、そこを楽しんでもらいたいですね。

──ちなみに、河津さんは自分が遊ぶときにお気に入りの陣形や技はありますか?

河津:自分はオーソドックスなものしか使わないんですよ。ただ、よく武器を取り換えるので、武器用の陣形で誰をメインに置くかは必ず決めています。逆に、アングリーマーチのような色物系の陣形は使わないですね。

最初は全員が同じ武器で、弓が5人いるような陣形も作りたいという話をしていたのですが、あったらあったでバランスをとるのが大変なので、そのような陣形はやめました。

最終的には、ネタ系よりも使って意味のあるものが入っています。いや、自分で遊んでいても「この陣形はなんなんだろう。どうやって使いこなせばいいんだろう」というものも確かにありますが……(笑)。

生田:一応、ネタに見える陣形でもこの編成や行動パターンだったら使えるという形にしていますよ(笑)。

河津:編成によっては初期BPが足りなくて話にならないものもありますし、メンバーの構成によって使える陣形がまったく違ってきますから、自分で試してもらうしかないです。

生田:特定のロールをセットすることで輝く陣形もあります。今回は強敵が追加されているので、敵に負けたときに変な陣形を試してもらえるといいですね。

──リワードのボーナス条件などを考えると、最終的には15人くらいをローテーションで鍛えて、いろいろな陣形を試したほうが良さそうですね。

生田:じつは、リワードのボーナス条件は満たさなくてもいいんですよ。毎回、3つすべてを満たしてプレイすることは推奨していません。

そこまでやり込むこと自体は止めないのですが、今回は素材の入手手段が増えているので、ボーナス条件をガチガチに気にするよりも、ついでにやってみようくらいの気持ちで遊んだほうが楽しめると思います。ボーナスに関しては1回の戦闘で1個満たすだけでも十分ですし、ボーナスを1つも満たさなくてもクリアできるようにバランスを取っています。

河津:全部満たしてもトロフィーが手に入るわけではないですから、ムリにボーナスを狙わなくてもいいですよ。

──そもそも、このゲームで一番難しいボーナス条件が“誰も戦闘不能にならない”ですからね。

生田:自分もなんとか条件を満たそうと思いながらプレイして無理だということが多いですし、ボーナスを全部満たせたらラッキー、くらいのつもりで気軽に遊んでもらえればと。

▼リワードのボーナス以外にも素材を集める方法が増えた本作。無理にボーナスを満たすよりもやり込み要素としてとらえよう。


──言われてみると『緋色の野望』では、仲間を派遣する斡旋所や武器を下取りしてくれる場所など、いろいろな方法で素材が入手しやすくなりました。これはどのような狙いがあるのでしょうか?

生田:素材集めは、Vita版だとあまりバランスがよくなかったところで「そもそも素材を集めるのがつらい」という声がありました。そこに対して何か手を入れようということで、開発当初に入手方法を増やそうと決めています。

まず、バトルで手に入る素材の種類に対して大きく手を入れたのが1点。それから、バトル以外の入手手段をいろいろ追加したのがもう1点です。今回はロード時間やゲームのテンポが早くなっているので、バトル以外の時間を意識的に増やさないと、全体的なプレイ感覚としてバトルとそれ以外の時間のバランスが悪くなってしまうと思ったんですよ。

そこをうまく配分したかったので、街を回って仲間を派遣したり、下取りで素材を交換したり、バトルをしていない時でも素材を手に入れられるようにしています。斡旋所は、あまりバトルで稼ぐのが得意じゃない人は、別の手段で稼いでもいいという選択肢として提示できればと思って入れました。

『サガ』シリーズ30周年に向けて

──来年で『サガ』シリーズは30周年を迎えますが、何か大きな展開は予定されているのでしょうか。

市川:30周年とは言わず、とにかくいろいろやっていこうということで動いています。今年、大きな節目だと思ったのは『緋色の野望』を出せたことと、小林智美さんの原画集を出せたことですね。小林さんが長くお仕事をされていたアーカイブを作れたのが、自分たちとしてはすごく大きな出来事で、本当に良かったと思っています。

それから秋葉原と大阪・梅田でコラボカフェをやらせていただく予定です。今年だけでもいろいろな施策がありますし、30周年も何かやろうという話はしています。今、発表されている『ロマンシング サ・ガ3』もそうですし、そのほかにもさまざまな展開があると思いますので、ぜひお待ちいただけるとうれしいです。

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──では最後に、本作の発売を待っているユーザーの方に向けてひと言ずつメッセージをお願いします。

生田:『サガ』シリーズは続きものじゃないので、どの作品からプレイしても大丈夫ですが、今回はさまざまなプラットフォームから発売されるので、初めて触る人もそうではない方も楽しめるようにきっちり作り直しました。難易度も含めて、いろいろな人に手に取っていただけることを重視して調整しましたので、ぜひ手に取っていただければと思います。

市川:自分たちは新作を作るくらいの作り込みで制作していますが、河津さんが作る『サガ』シリーズのなかでも『緋色の野望』のような形のバージョンアップは初めての試みです。

毎回新しいことをやってきているのが『サガ』シリーズの魅力ですが、今回の『緋色の野望』でどんな新しいことをやっているのかは、プレイしていただかないとなかなか伝わりにくいところがあるかもしれません。かなりおもしろい体験になっていると思うので、実際にプレイしていただきたいです。PS Vita版を遊ばれていた方はもちろん、Vita版を買うきっかけがなかった方も『サガ』シリーズの1つの集大成のような作品なので、ぜひ遊んでみてください。

河津:『緋色の野望』は、コマンドRPGのおもしろさやよさをギュッと濃縮したようなつもりで作りました。コマンドRPGが好きな方は、ぜひ遊んでもらえればと思います。

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【商品情報】
・タイトル:『サガ スカーレット グレイス 緋色の野望』
・メーカー:スクウェア・エニックス
・対応機種:PS4/Switch/Steam/iOS/Android
・ジャンル:RPG
・発売日:2018年8月2日(木)
・希望小売価格:
 PS4/Switch/Steam 5,800円+税
 Limited BOX【邪神】 18,500円+税
 iOS/Android 4,444円+税

(C) 2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. ILLUSTRATION: TOMOMI KOBAYASHI
※画面は開発中のものです。

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