【FGO】爆発的な成長の秘訣は「捨てる、プロデュース」。『Fate』らしさとは奈須きのこであること
本日2018年8月23日(木)にパシフィコ横浜で開催されているゲーム開発者向け技術交流「コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2018(CEDEC 2018)」で『Fate/Grand Order(FGO)』の企画・運営・開発で知られるディライトワークス(以下、同社)がセッションを行いました。
▼本セッションは、取材申請をしたメディア以外は撮影・SNSでの投稿がNGなセッションです。

「ディライトワークス、FGO PROJECTをプロデュースする。~ Fate/Grand Order 成長の軌跡 2015-2018 ~」をテーマに行われたセッションには、庄司 顕仁氏(同社代表取締役社長)、塩川 洋介氏(執行役員 クリエイティブオフィサー FGO PROJECTクリエイティブプロデューサー)、石倉 正啓氏(執行役員 マーケティング部長)が登壇。
『FGO』ローンチ前(2015年)、ローンチ後(2016〜2017年)、現在(2018年〜)の時系列ごとに、3つのプロデュースエピソード(物語)が紹介されました。
▼3つの物語は「それは、自らを知る物語。」、「それは、自らを取り戻す物語。」、「それは、自ら届ける物語。」。

「Fate」とは何かを再確認するプロジェクト立ち上げ物語
最初に登壇した庄司氏は、「それは、自らを知る物語。」をテーマにプロジェクトが立ち上がった際のプロデュースワークについて紹介しました。
■ゼロベースからプロジェクトを再設計
プロジェクトが立ち上がったのは、今から5年前の2013年10月。
当時、TYPE-MOONの武内崇氏から「スマートフォンゲームに詳しい人を紹介してほしい」と庄司氏に依頼があり、その時に見せてもらった企画書には、当時から多忙だった奈須きのこ氏にできるだけ負担をかけないよう、シナリオ的な要素がほとんどなかったそうです。
▼当時の企画書。別会社が作成したもののため、ボカシが入っています。


当時のソーシャルゲーム市場を鑑みて、人気IPであればシナリオがなくてもそれなりの数字は出るだろうと武内氏に伝えたところ、あまりいい反応がかえってこなかったといいます。
庄司氏は当時そこまでTYPE-MOON作品に詳しくなかったため、2〜3週間ほど時間をもらって『Fate』の勉強をしたそうですが、そこで強烈な違和感を覚えたそうです。
強烈な違和感とは、とてつもないコンテンツパワーに対して販売実績がともなっていないこと。『Fate』のゲーム作品は当時、平均して10〜20万本を販売するタイトルでしたが、もっと売れていいはずだと感じた庄司氏は、販売実績についてどう感じているのかTYPE-MOONに聞いてみたそうです。

するとTYPE-MOON側は『Fate』は超ニッチなコア向けコンテンツで、狭い層に深く刺さる深淵のタイトル、コアなファンは10万人ぐらいであると特に違和感を覚えておらず、庄司氏は自己認識が足りていないと感じたとのこと。
きっかけさえあれば生涯の1本になり得る作品であり、気づいていない人が多いだけなのではないかと考えた庄司氏。もっと多くの人に知ってもらうため、新しいステージに向かうためにもっと真剣に考えるべきだと武内氏や奈須氏に伝えたといいます。
そんな庄司氏の熱意がだんだん通じたのか、元のスマホゲーム企画をいったん白紙化し、ゼロベースからプロジェクトを再設計することになります。
■100万人に届く新たな『Fate』を創る
プロジェクトを再設計するにあたって、一番最初に行ったことは「『Fate』とはどのような作品なのか?」、「『Fate』ファンはどんな人たちなのか?」について各社と話し合うことでした。
すると、これらの認識はTYPE-MOON、アニプレックス、ディライトワークスでそれぞれバラバラだったといいます。その後、数時間にわたって議論を行い、全員が合意するプロジェクトの骨子を構築したそうです。

新たに構築されたプロジェクトの骨子と目指すゴールは、「もっとも新しく、もっとも身近で手に取りやすく、しかしながらもっとも『Fate』らしい100万人に届く新たな『Fate』を創る」というものでした。
共通認識がない「『Fate』らしさ」とはどこにあるのか? 『Fate/stay night』と『Fate/EXTRA CCC』はどちらも『Fate』であると言えますが、ゲーム内容はまったく違います。
テストとして『stay night』の登場キャラクターをそのままカード化したことがあったそうですが、『Fate』らしさは生まれなかったそうです。
そこからさらに議論を進め、キャラクター、世界観、設定、伝奇など、いくつもある『Fate』らしさのパーツを分解し、それらを繋ぎ合わせて至った結論は、「『Fate』とは奈須きのこである」ということでした。
奈須氏本人も含めて再認識したこのタイミングが、プロジェクトの大きなターニングポイントになったといいます。
庄司氏は、プロデュースワークで大事なことは「クリエイターの生み出す作品をすべての潜在ファンに届けること」と表現。老子の言葉である「知人者智、自知者明」を引用し、まだ先にある自分の限界を知らずに「これでいい」と妥協してしまうのはもったいないとまとめました。

爆発的な成長を遂げた秘訣は「『FGO』とは?」の再定義

続いて登壇した塩川氏は2018年3月まで開発の責任者を担当。「それは、自らを取り戻す物語。」をテーマにローンチ後の状況を振り返りました。
先ほどの庄司氏のエピソードを知ることなく入社したという塩川氏。入社時の『FGO』の状況を、有名なメンテナンス時間とプレイ時間を表した画像を紹介しながら「誰もが道を見失いながら必死にもがいていた」と表現。
関係者全員が全力で取り組んでいながら、思い描いていたことが実現できておらず、実現していたとしてもユーザーに受け入れてもらえず、実現してもゲームをプレイできる時間が限られていたと当時を振り返りました。

そこで塩川氏が真っ先に手を入れたのは、「『FGO』とは?」を再定義することでした。
▼塩川氏が再定義した「『FGO』とは?」。

「脱・予定調和」な体験を提供し続けることの例として、1,000万ダウンロード突破記念で実施された星5キャスター「マーリン」のピックアップ時に、とある芸能人の引退発表よりもTwitter上で話題になったエピソードを紹介。
これは意図していなかったそうですが、いつ、誰が、どのようなタイミングで情報を発信すれば話題にしてもらえるか、つねに計画しているそうです。
また、当時のソーシャルゲーム開発では「画面を何クリックしたらバトルに入らなければいけない」などの固定概念があったとのこと。この方針を捨て、シナリオライターの方々には何KBでも書いていいと伝えたそうです。


プレイヤーたちが操作する登場キャラクター(英霊:サーヴァント)の仕様については、当時、レアリティごとにかけられるリソースが決まっていたとのこと。
しかし塩川氏は、ゲームの都合でレアリティが低いかもしれないが、全員が主役であるとし、共通だったバトルモーションを変更するなど全英霊に同じコストをかける方針に変更しました。

そのほかにも、「自己満足を突き詰める」ということで、当時はあった対人要素の企画を必要ないと捨てたり、ユーザーのためのゲームを作るために、『FGO』ユーザーがよろこぶTYPE-MOON作品とのコラボイベント・スペシャルイベントを実施したりしていったそうです。

■2017年にMAUが2015年の2.6倍に
「『FGO』とは?」を再定義して開発・運営を行っていった結果、2015年と比較してMAU(月間のユーザー数)が2016年に約1.4倍に、2017年には約2.6倍に、平均月別売上は2016年に約2.2倍に、2017年に約5.3倍に急成長。2018年四半期の収益は世界1位を記録しました。


爆発的な成長の秘訣は自分らしさを再定義し、自分らしさ以外を切り捨てる優先度付けを行う「捨てる、プロデュース」にあったと塩川氏は語ります。
何をするかを決めることは、何をしないかを決めること。とてつもない勇気が必要なことですが、二年間でいろいろなものを捨て続けて『FGO』は爆発的な成長を遂げました。
▼スライドに書かれた「今、『FGO』を楽しんでいないユーザー」について、口頭では「今、『FGO』を遊んでいないユーザー」とも説明していました。

塩川氏は、自身がクリエイティブディレクターを務めた期間を『FGO』らしさを取り戻して、『FGO』らしくあり続けた愛と勇気の物語だとまとめました。
人を動かす大魔法
最後に登壇した石倉氏は、「肉会(MEAT MEETUP) Vol.2 FGO PROJECT マーケティングセミナー」でプレゼンテーションを行った「3つのマーケティング方法」(略してマ法)を振り返り、新たに4つ目の「人を動かす大魔法」を紹介しました。

「人を動かす大魔法」とは、マツリ。7月28日(土)〜29日(日)に行われた3周年記念リアルイベント「Fate/Grand Order Fes. 2018 ~3rd Anniversary~」の実績が公開されました。

「FGO Fes.2018」を訪れたユーザーは二日間合計で34,972名と過去最高のイベント動員数を記録したといいます。Twitter上では20位までのトレンドを『FGO』関連のワードでジャックし、Web上で配信された番組の視聴数は340万を超え、『FGO』関連の記事は二日間合計で1,700件を超えたそうです。
これらの影響もあり、当日は過去最高のDAU(1日のユーザー数)を記録。マメニ情報を発信して日常化し、マサカと驚く話題を提供、マヂカに感じられる縁を作り、マツリで大きな山を作る、と人を動かすマーケティング手法をまとめました。
▼代理店を入れずに自らが実施し、自ら会いに行くことを意識しているとのこと。

▼セッションの最後の塩川氏は、これからの『FGO』についてコメント。別の人間がプロデュースすることもあるかもしれないが「ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。」という企業理念を変えずに『FGO』に携わっていくとまとめました。

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(C)TYPE-MOON / FGO PROJECT