【あおガルシナリオ集】想世(アンダー)サイド:第5章「神蔵」
2019年1月31日にサービス終了を迎えるスクウェア・エニックスのアイドルゲーム『青空アンダーガールズ! Re:vengerS(リベンジャーズ)』のシナリオ集をお届けします。
この記事では、想世(アンダー)サイド:第5章「神蔵」を紹介します。
想世(アンダー)サイド:第5章「神蔵」第1話「戦乙女の異世界探訪」
ーー校門前
●神蔵
よう、相棒。
ちゃんと靴下は脱いで眠ったか?
人間ってのは、足の裏で体温調整するらしいからな。
靴下履いたままだと、身体のほうは寝苦しいかもしれねぇぜ。
あ、ちなみに俺は関係ないぞ?
なんたって、幽霊に足はねぇからな!
AHAHAHAHAHA!
●プロデューサー
なんの話?
●神蔵
……冗談だ。本題に入る前の小粋なトークだよ。
っても、ゲストは到着済みみたいだけどな。
●ヴァルキュリア
…………。
●響香
……何? どうなってんの?
●アリス
ここは……また……!
●律
どこ? 何がどうなってるの?
●神蔵
レディはきちんとエスコートしないとな。
何度でも同じ説明をするのは、この仕事の宿命だ。
(説明が終わって)
●輝音
話は分かった。つまりここは、
無限の時間のなかで身体と精神を修行する部屋ということだな。
●アリス
え? な、なんの話ですの?
●栞歩
ゲームのしすぎです。
今日も練習に参加ぜずに、1人でポチポチと。
●輝音
なぬ? いまの元ネタはゲームじゃないぞ?
ゲーム化もされているが、元々は国民的人気のコミックスで――。
●栞歩
同じようなものです。
●輝音
違うぞ、シホ。
その発言は撤回したほうがいい。さもないと――。
●栞歩
没収しますよ、ゲーム。
●輝音
…………。
●神蔵
なんつーか、母親と子供って感じだな。
●輝音
ひとを見た目で判断してもらっては困るな。
……ああいや、アイドルだから見た目は大事なのだが。
●栞歩
速攻で話の腰を折らないでください。
いいから、今後の方針を考えてください。
●輝音
そうだな……。アリスはそこのコスプレイヤーとも知り合いで、
この世界にも来たことがあるのだな?
●アリス
は、はい! 巨大な虫みたいな化物がうようよいて、
できれば遠慮したかったのですが……。
●律
虫……うへぇ……。
●響香
あれ? アリリンって虫とかダメ系?
●アリス
だ、誰でも虫はダメに決まってますわ!
●響香
そう? アタシ、子供の頃クワガタ飼ってたよ。
名前つけてさ。
●アリス
そういう話では……。
●輝音
よし、分かった。その虫とやら、私たちで退治しよう。
●アリス
え、ええっ~!?
●輝音
なんだアリス、不満か?
●アリス
……と、とんでもありませんわ!
ワタクシも虫とか飼ってみたいと思ってましたの!
キョーカさん、今度クワガタのこと、詳しく教えてくださる?
●響香
いいけど、ここにいる虫ってのは、クワガタみたいなの?
●アリス
えっ!? い、いえ、ワタクシが見たのは
蜂みたいな感じでしたわ。
●律
蜂は余計に関わりたくない……。
そんなでっかいの、人間とかエサにしそうね。
●アリス
か、飼うって、ワタクシ別に、
ここの虫を飼おうというつもりでは!
●響香
飼うんじゃなくて、倒すんだよね。
●アリス
それはそれで、とても正気とは思えませんけど……。
●輝音
不満か?
●アリス
め、滅相もないです! ワタクシ、
田舎で蜂の子を食べたこともありますし、平気ですわ!
●輝音
決まりだな。
●アリス
どうしてこんなことに……。
●神蔵
……相棒。これが土方アリスのユニットみたいだ。
初対面のときに感じた、あの余裕のなさ……。
どうやら全部、ここで培われてるみたいだな。
●輝音
楽しみだな。正義のヒーローとして、困っているひとを
見過ごす訳にはいかないからな。
●栞歩
いつから正義のヒーローに?
●輝音
アイドルだからな。
●栞歩
はぁ……。よく分かりませんけど、
カノンがそう言うのなら仕方ありませんね。
●響香
…………。
●アリス
どうしたのですか、キョーカさん?
●響香
そこのカグライっちっていうコスプレイヤー……の、声。
どこかで聞いたことある気がするんだよね。
●アリス
も、もしかしてキョーカさんも、こちらの世界に
来たことがあるのですか?
●響香
どうだろう? もっと身近で聞いたような
気がするんだけど……。
●神蔵
…………。
想世(アンダー)サイド:第5章「神蔵」第2話「火神栞歩という女」
ーー校門前
●神蔵
そうか、あれが火神栞歩か。
こんなに近くで相対するのは初めてだ。
●プロデューサー
知ってるの?
●神蔵
ちょっと、な。まあせっかくの機会だし、
あとで説明してやるよ。
しかし、真面目でかわいらしい子じゃねぇか。
へへっ。やっぱり俺に似たのかな。
●輝音
ふふ、シホが真面目でかわいらしいだと。
面白いことを言うんだな、コスプレイヤー。
●神蔵
少なくともアンタよりは真面目に見えるぜ。
●輝音
それはそうだな。
●神蔵
認めるのか……。
●輝音
だが、私のほうがかわいい。
それは間違いない。
●神蔵
それはひとによるんじゃねぇか。
アンタもカッコイイと思うけどよ。
●輝音
……だったら見せてやろう。キョーカ。
●響香
はいはーい。呼んだ?
●輝音
彼らにシホのアレを見せてやろうと思う。
頼んだぞ。
●響香
おっけー!
やり方はなんでもいいの?
●輝音
任せる。
●響香
アイアイサー!
●プロデューサー
何をするの?
●輝音
見てれば分かる。
●神蔵
……相棒。あとで俺と火神栞歩の関係を教えてやると言ったな。
ちょうどそのチャンスがありそうだ。
アイツらについて行くぞ。
想世(アンダー)サイド:第5章「神蔵」第3話「答えあわせ」
ーー下駄箱
●栞歩
と、いうことで、瘴念<ノイジー>と呼ばれる虫たちには、
ひとの負の感情に呼び寄せられる性質があるようなの。
だからここで負の感情を高めて、瘴念をおびき寄せる。
そこをプロデューサーさんたちに叩いてもらいましょう。
●アリス
分かりましたわ!
●律
承知。だけどその作戦に、カノンやキョーカも参加するの?
●栞歩
さあ。キョーカはともかく、カノンはひとに言うだけ言って、
自分では動かないことが多いから。
まあ、それでいいのだけど。
それが許されるだけの実力が、あのひとにはあるわ。
ーー校門前
●輝音
首尾はどうだ、キョーカ。
●響香
準備おっけー!
シホたちも、アタシたちに気づいてないよ。
にしても、面白いね想世<アンダー>って!
こんなものが道端に落ちてるなんてさ!
●プロデューサー
こんなもの?
●響香
トリモチバズーカ!
これでシホの顔面を狙い撃ちよ!
●神蔵
想世はひとのイメージの集合体だ。
欲しいと強く願えば、それが具現化する場合もある。
●プロデューサー
何をする気?
●輝音
見ていれば分かる。キョーカ。
●響香
はいよ! トリモチバズーカ発射!
ベチャッ!
●響香
よし! 顔面に命中した!
●輝音
行くぞ! 乗り込めー!
●アリス
あっ! か、カノンさん、キョーカさん!
●律
またなの? 本当に懲りないわね……。
●輝音
そう言うな。さっき、漫画とゲームを一緒くたにされた恨み……
ではなく、新参者にシホの紹介をしようと思ってな。
●律
もう本音、全部漏れてるのだけど。
●響香
トリモチをとろうとすれば、一緒に眼鏡も外れるはず。
そうすれば……。
●栞歩
貴様たちは、俺と戦争でも始めようというのか?
●輝音
ぶふっ――!?
●響香
出た! シホの十八番!
●栞歩
また性懲りもなく……。おいお前ら!
親からもらったこの声に文句があるなら、相手になるぞ!
●輝音
これがシホの地声だ! コイツ、眼鏡をとると
まるで男みたいな声に! 面白いだろ!
…………ん?
●神蔵
…………。
●アリス
白い髪のコスプレイヤーは、櫻花ひなたのプロデューサーですわ。
カノンさんもシホさんも、会ったことありますの。
●輝音
そうだったか?
●律
けど、そっちのコスプレイヤーが動じないのは、
どういうことかしら?
●神蔵
ふっ。アンタらにだって、自分の声を聞いて
笑い転げる趣味はねぇだろ?
●栞歩
なんだと?
●アリス
え? え?
想世(アンダー)サイド:第5章「神蔵」第4話「ぶつかる言葉」
ーー下駄箱
●神蔵
俺はいまでこそ幽霊みたいな存在だが、
昔は相棒と同じく、現世<エイドス>でも肉体をもつ人間だった。
生前は、アンタらもよく知ってる、
久石かぐらのプロデューサーだったんだよ。
●アリス
久石かぐらって……が、学園長ですの!?
●律
う、嘘……。聞いたことないわ。
●神蔵
言っただろ? 想世<アンダー>で瘴念<ノイジー>に魂を
喰われると、はじめからいなかったことになるって。
幸い……と言っていいか分からねぇが、
俺は食い残しがあって、想世でだけ存在が残った。
調停者<プロデューサー>としての能力は大半が失われたがな。
そして、現世でも魂の欠片だけが残ったらしく……。
●響香
……あー、アタシさっき、カグライっちの声、
どこかで聞いたことあると思ったんだよね。
●律
もしかして……。
●神蔵
そう。残った魂の欠片は、とある生前の女の子のなかに
入り込んだ。それがアンタだ、火神栞歩。
●栞歩
…………。
●神蔵
声が俺と同じなのは、その影響だ。
……これでようやく、長年の謎が解けただろ?
●栞歩
……神蔵とやら。
●神蔵
何、気にするな。ハナから俺たちは違う人生を歩んでいる。
ある意味父親のような存在だが、それに縛られることなんて――。
●栞歩
貴様が原因か。この、諸悪の根源め。
●神蔵
……へ?
●栞歩
貴様のせいで、俺がどれだけひとに……
特にそこのカノンにバカにされたか! おい分かってるのか!
●神蔵
え、なっ……。そ、それはたしかに悪かったが、
ここはもうひとりの父親と再会したような、温かい気持ちに……。
●栞歩
なるわけないだろう!
●輝音
ふひっ! ひひひひひっ!
た、たしかに同じ声だ! 同じ声でケンカしてる!
●響香
あははははははは! まさかシホがオッサン!
声だけじゃなく、マジでオッサンだったなんて!
傑作、傑作じゃん! あー来て良かった!
ひっ、ひーっ……! お腹痛い……!
●栞歩
……まさに耐え難い恥辱。
これほどの言いようのない怒り、感じたことがない。
●律
どうでもいいけど、負の感情が高まってるんじゃない?
これで瘴念<ノイジー>をおびき寄せられるはず。
●律
もしやあのコスプレイヤー、そこまで計算してこの話を?
……そうだとしたら、なかなか策士ね。
●プロデューサー
違うと思う。
●神蔵
……なんだこの扱い。オジサン、深く傷ついたよ……。
瘴念人<ミアノイジー>、生んじゃいそう……。
想世(アンダー)サイド:第5章「神蔵」第5話「素直100%」
ーー下駄箱
●神蔵
さて、と。
さっきのは悪い夢だ。忘れることにするぜ。
とりあえず、瘴念<ノイジー>を一網打尽にする計画が
決まったようだ。
ちと、それぞれのガールズたちの様子を覗いてみるか。
●アリス
つまり、負の感情を高めるために、
嫌なことを思い出せばいいのですわね。
●神蔵
ま、平たく言うとそういうことだ。できそうか?
●アリス
ええ。であれば、造作もありませんわ。
あの、忌々しい黒瀬麗華を思い出せば、それでいいのですわ!
●律
私は……そうね。
そこのコスプレイヤーのことでも考えようかしら。
●神蔵
……って、相棒のことか?
●律
そうよ。聞いたわ。
アリスをかばって助けたそうね。
私、そういうの、大嫌いでだから。
●アリス
り、リツさん!? 仮にもワタクシ、
命を助けられましたのよ!?
●律
本当のことよ。
改めまして。私は『碓氷律』。
アイドルでありながら、『フレイヤプロダクション』という
学プロをプロデュースしているわ。
●プロデューサー
プロデューサー?
●律
そうよ。
そして、プロデュース方針は、完璧な個人主義。
だから、自己犠牲の精神とか、大嫌いなの。
敵をかばって怪我するなんて、ありえないわ。
●プロデューサー
敵?
●律
あなたは新任のプロデューサー。
となれば、いずれは自分の学プロをもつことになる。
そして、アリスはヴァルプロの一員。だったら、
見捨てたほうが、ライバルが減ってよかったのに、という話よ。
●神蔵
土方アリスに聞いてはいたが……
ホント、極端な考え方をするんだな。
●アリス
リツさんはあまり動じないイメージですけど……
珍しいですわね。そんなふうにおっしゃるなんて。
●律
それは違うわ。
私はプロデューサーとして、常に冷静であろうとしているだけ。
勝手なこと言わないで。
●アリス
し、失礼しましたわ! そうですわよね!
●律
私は、アイドルも半端な気持ちじゃやってない。
まずはアイドルで頂点をとって、それからプロデューサーになる。
●アリス
す、すごいですわ!
ワタクシにはそういう明確なヴィジョンというか、
自分に自信をもてるようなことがなくて……。
もちろん、アイドルとして大成したいという思いはありますわ。
だけどそれを具体的に実現させる、武器が必要だと思いますの。
それが何なのかは、まだ……。
●律
…………。
……も、ものすごく個人的な目線の話だけど、
私は、あなたはそれを持っていると思っているわ。
●アリス
えっ。そ、それはなんですの!?
教えてくださいまし!
●律
……なんでもない。ていうか、自分で考えて。
●アリス
あっ! す、すみません!
そうですわよね、自分で考えないと意味ありませんわよね!
●律
ともかく、私は私で腹の立つことを思い出してみる。
少し1人になるわ。
●アリス
ええ。行ってらっしゃいまし~!
(律がいなくなって)…………。
はぁ……。ワタクシって、どうしてこんなに
失言ばかり……。辛い……生きていて辛いですわ……。
でも、ワタクシの武器って……?
個人的目線で、とは言っていましたけど……。
●神蔵
やっぱり、つらいんじゃねぇか。
ユニットの方針で、超個人主義とか言いながらよ。
●アリス
う、うるさいですわ!
●神蔵
でも、同じユニット内でまで個人主義じゃ、
かえって効率悪くないか?
●アリス
……ユニットとして、個人主義なわけではありません。
仲良く出来るのであれば、それに越したことはないですの。
ですが、メンバーのほとんどが、それを必要としていないのです。
ワタクシは、もっとリツさんたちと仲良くしたいですけど。
●プロデューサー
協力する。
●アリス
協力? それってもしかして、ワタクシとリツさんの仲を
とりもとうってことですの?
●プロデューサー
そう。
●アリス
ですが、貴方になんのメリットもありません。
そんな提案を持ちかけるだなんて。貴方、もしや……。
実は、すっごくいいひとですの?
ぜ、是非お願い致しますわ!
ワタクシ、もっとリツさんと仲良くなりたいんですの。
どうすればよいか、是非ご教授くださいまし!
●神蔵
……こいつも変なガールズだな。
ツンケンしてるのかと思いきや、急に素直になりやがって。
●アリス
初対面の時は、怪しすぎて警戒していたんですの!
●神蔵
まあ、悪いヤツじゃなさそうだ。
むしろ、根は素直すぎるのかもな。
想世(アンダー)サイド:第5章「神蔵」第6話「隣人は乙女」
ーー運動場
●律
……いけない。さっきは思わず口を滑らせそうだったわ。
アリス、別に嫌いではないし、同じユニットとして
仲良くすることに得はあると思うけど……。
積極的にこちらからどうこう、という気にはならないわね。
ただ本当に、あのヴィジュアルは……卑怯よね。
●プロデューサー
(声をかける)
●律
……あら、こんにちは。プロデューサーさん。
スパイにでもいらしたんですか?
●神蔵
なわけないだろ。
少しは信頼してくれよ。
●律
……私個人としては、
プロデューサーのこと、嫌いではないわ。
だけど、『アイドルのプロデューサー』としては
まったく尊敬できない。理由は、さっき話した通りよ。
アイドルは独り。周りはみな、敵。
なのにあなたは、敵であるアリスを身を挺してかばった。
理解できない。しちゃいけないと思う。
だから、距離を置きたいの。
●神蔵
はいはい。分かったよ。
ここでいくら話しても平行線だ。その話はまた今度だ。
だけどよ、相棒から距離を置くのは分かるとしても、
土方アリスとはもっと仲良くしてもいいんじゃねぇか?
向こうはもっとアンタとお近づきになりたいみたいだぞ。
●律
……まあ、そうかもね。
●神蔵
ほらよ。その土方アリスからだ。
●律
これ、手紙? 私に?
●神蔵
そうだ。一生懸命書いたんだぜ。
読んでやるくらい、いいだろ?
ーー1時間前
●アリス
そうですわ! 手紙! 手紙でなら、
緊張せずにうまく気持ちを伝えられるかもしれませんわ!
●神蔵
お、いいんじゃねぇか? どう思う、相棒?
●プロデューサー
いいと思う。
●神蔵
じゃあ早速、したためるといい。
想い人に気持ちを伝える、純情な乙女になった気持ちでな。
●アリス
純情な乙女……。で、ですがワタクシ、
殿方とのお付き合いはさっぱりで……!
ど、どどどどうしたらよいのでしょう……!
まったくそういう気持ちが分からないのですわ……!
●神蔵
真面目か。
ったく、アンタが書くとすげー堅苦しい手紙になりそうだな。
親しく、楽しくを意識して書いたほうがいいぜ。
アンタ、好きなものはなんだ?
●アリス
好きなもの? ……ネコ、ですわ。
●神蔵
じゃあ手紙にネコをいれるといい。
好きなものについて語ってるときは、楽しいだろ?
●アリス
て、手紙のなかに、ネコを入れる……?
そんなかわいそうなこと……。
●神蔵
天然か。
そうじゃなくて、ネコ要素を入れろってことだよ!
楽しさってのは、例え手紙でも相手に伝わるもんだ。
文字ってのは、意外と書き手のハートに影響されるんだ。
(回想が終わって)
この手紙には、アイツの気持ちが詰まってる。
よろしく頼むぜ?
●律
誰も嫌だなんて言ってないでしょう。
読むぐらい、別に構わないわ。
……って、この便箋、かわいい。
花がらで、パステルカラーなんだ……。
●神蔵
土方アリスの自前だよ。
こんなもん持ち歩いてるなんて、かなりの乙女だぜ。
●律
……そんなこと、言われなくても知ってるわ。
彼女は誰よりも乙女で、気が弱くて、そして……。
●神蔵
そして?
●律
なんでもないわ。
いいから、貸して。読むから。
●神蔵
最後、何を言いかけたんだ?
想世(アンダー)サイド:第5章「神蔵」第7話「借りたネコの手」
ーー運動場
●神蔵
どうだ? 読んだか?
●律
……まだ途中よ。
だけど、だいたい分かったわ。
●プロデューサー
分かった?
●律
分かったというか、分かっていたというか。
普段の彼女から推測できる、そのままの気持ちね。
『ヴァルキュリア』にうまく溶け込めず悩んでいることも、
私やみんなと仲良くなりたいことも。
だけど何より、自分のことを卑下する文章が目立つ。
そういうところが、みんな一番直して欲しいのに。
でないと、きっとこれ以上仲良くなんてなれないわ。
●神蔵
……そうか。でもその答えが聞けるだけで、
土方アリスにとっては収穫だと思うぜ。
それ、直接言ってやれよ。
想世<アンダー>での記憶はなくなるが、
うまくいったことは、大概、現世<エイドス>でもうまくいく。
どういう理屈なのかは分からねぇけど、
そういうふうになってんだよ。
●律
……はぁ。分かってるわよ。
仲良くすることで、私にも得はあるから。
でも、まだ最後まで読んでいないのだけど。
あと一文だけ、残っているわ。
●神蔵
おっと、それは邪魔したな。
●律
とにかく、こんなワタクシですが、よろしくお願いします。
仲良くしてくれると嬉しいです……にゃん。
●神蔵
天然か。
ネコを入れろって言ったからか……。
そういう意味じゃなかったんだが――。
●律
ぶほはっ!?
●神蔵
な、なんだよいきなり……。
どうしたんだ?
●律
なん、でもない……。
ちょっとむせただけよ……。
●神蔵
本当か……?
●律
うるさい! それ以上詮索するな!
●神蔵
詮索って……つまりなんかあるんじゃねぇか。
……なあ相棒、どう思う?
絶対になんかあるよなぁ。
ーー選択肢1
●プロデューサー
ネコが好き。
●神蔵
その可能性は……ある、か?
だからって「にゃん」で興奮するとかチョロすぎだろ。
ーー選択肢1
●プロデューサー
アリスが好き。
●神蔵
どう見てもそんな感じじゃないだろ……。
でも明らかに土方アリスの「にゃん」に興奮してたよな。
……まあ、一度試してみるか。
想世(アンダー)サイド:第5章「神蔵」第8話「萌えいずる感情」
ーー教室
●アリス
黒瀬麗華は敵……黒瀬麗華は敵……。
い、いえ、でも嫌いとかそういうわけでは……。
悪い人ではありませんし……。
あっ。や、やっぱり悪い人ですわ!
そう思わないと虫が寄ってきませんし……。
……虫、寄って来て欲しくありませんわね。
やっぱり黒瀬麗華は、悪くない人のほうが……。
●ネコ
にゃ~ん。
●アリス
わっ! ……び、びっくりしましたの!
●ネコ
にゃ~ん?
●アリス
ね、ネコちゃん!? この世界にも
ネコちゃんがいるんですの!?
くりくりお目目に、真っ白な毛並み……。
……か、かわいいですわ。
ーー廊下
●律
何? いますぐ手紙の返事をしろって。
そんなのあとでもいいでしょう。
●神蔵
よくねぇよ。こういうのは時間を置くと、
グダグダになって結局消えてなくなるんだ。
だからいまのうちに。
ほら、そこにいるだろ。
●律
……強引ね。
分かったわよ。別にそれくらいなら……。
●アリス
(律と神蔵が教室に移動して)ネコちゃん! キミはどこから来たにゃん?
ワタクシを慰めに、にゃんこの国から現れたにゃん?
あ~ん! こんな状況で負の感情を高めろなんて、
無理に決まってますにゃ~ん!
●律
ぶほっ!? ぼげっ! ぐぼほっ!?
●神蔵
お、おいどうした!?
急に血吐いて倒れたぞ!
●アリス
きゃっ!? な、何ごとですの!?
●律
(よろよろと起き上がって)か、かわいい……。
●神蔵
は?
●律
その、凶悪的に整ったヴィジュアルで……
そんなかわいい顔で……にゃんにゃん言われたら、私……。
●プロデューサー
どういうこと?
●律
…………。
私、本当にアリスのことは好きでも嫌いでもないわ。
だけど……。
だけど、顔だけはムッチャ好みなのよ……。
●神蔵
えぇ……。
なんだそりゃ……。
●律
ああ、彼女をセンターにしたユニットをプロデュースしたい……。
中身が……中身が私だったなら……。
いえ、むしろ中身は空っぽでいいわ。私が遠隔で操作して、
理想のアイドルを演じさせることができたらいいのに……。
●神蔵
こいつ、すげぇ危ねぇこと言ってるぞ……。
●アリス
あ、あの、さっきからなんの話をしてるんですの?
●律
……アリス。
●アリス
は、はいっ!?
●律
お願いだから、これから私の前で「にゃん」とか言わないで。
でないと、私、自分を抑えられそうにないから……。
●アリス
えっ、えぇ~! どういう意味ですの!?
●律
分かった?
●アリス
っ! は、はいですの~!
●神蔵
……なんか、誤解が生じてないか?
結果、溝が深まったような……。
●アリス
うぅ……。ワタクシ、また何か気に触ることを……。
もう、自分が嫌になりますわ……。
●神蔵
順調に負の感情だけ高まってるな。
……こんなはずじゃなかったんだけどなぁ。
想世(アンダー)サイド:第5章「神蔵」第9話「逆行する言語文化」
ーー学食
●神蔵
……むっ。誰だそこにいるのは!?
●響香
ふふっ、気配を消していたのに
なぜ分かった?
●神蔵
……そうだな。
気配が完璧に消えすぎていたからかな。
●響香
なんだと?
●神蔵
貴様ほどの巨大な気が、突然消えてみろ。
それは逆に不自然だろう?
●響香
…………。
●神蔵
…………。
●響香
カグライっち、面白いね!
これがSNSなら、いいねボタン1000億回押してるね!
●神蔵
サンキュー、ガール。
だが残念ながら、SNSはやってないのさ。
●響香
オッサンだから?
●神蔵
幽霊だから!
●プロデューサー
どうしたの?
●神蔵
あ、いや、ついこのガールに乗せられてしまった……。
勢いというのは恐ろしいな……。
●響香
ところでプロデューサー、
アタシ見てたよ、アナタの活躍!
●プロデューサー
活躍?
●響香
アリリンのこと、気にしてくれてたでしょ?
みんなに馴染めてないからって。
ああいうの、すごく助かるんだよね。
本当はアタシらでどうにかするべきなんだけどさ。
●神蔵
すればいいだろう。
●響香
難しいんだって。まず、大半の人間がそういうことに興味がない。
得にカノカノがね。
リッちゃんもそうだし、シホは気にしてくれるけど……
根本的な解決にはなってないね。
●神蔵
アンタがいるじゃないか。
●響香
んー、できるだけ気にしてるんだけど、
向こうもアタシに遠慮しちゃってさ~。
一応、序列が上だし、学年も上だし。
なかなかうまくいかないものよ。
アタシたちのプロデューサーも、
そういうの気にしてくれるんだけど。
『ヴァルキュリア』って、学プロから離れて
独立部隊って感も強いから、なかなかね……。
アリリンも懐いてるみたいだったし、
プロデューサーにはうちのプロデューサーになって欲しいなって。
●プロデューサー
それはできない。
●響香
まあ、そうだよね~。だって、アナタには
帰るべき場所があるからね!
だけどプロデューサーが、こっちの世界では『ヴァルキュリア』の
パートナー的な存在だっていうなら……。
こっちにいる間だけでいいから、ユニットのこと、お願いね。
期待してるから!
じゃ、それだけ!
ばいびー。
●神蔵
バイビーとかナウいな……。
ナウすぎて死語だろ。
●神蔵
お気楽そうに見えて、ユニットのことを考えてる。
案外『ヴァルキュリア』では一番の常識人かもな。
想世(アンダー)サイド:第5章「神蔵」第10話「細切れ経験値の刑」
ーー運動場
●輝音
さて、どうだ諸君?
邪神を呼び出す悪しき感情は、存分に溜まったか?
●栞歩
ええ、そうですね。おかげさまで。
危険だという声も聞かず、冒険ごっこだと言って、
校内をうろうろうろうろうろうろしていた誰かさんのおかげで。
●輝音
新しいダンジョンは散策しないとな。宝箱もあるしかもしれんし。
そうだろう、キョーカ?
●響香
右に同じー。
●栞歩
この、ゲーム脳……。
●神蔵
まあ火神栞歩の負の感情は
いい具合に溜まってるな……。
そしておそらく、他の2人も……。
●アリス
はぁ……。一体、何がいけなかったんですの?
どうしてワタクシは、あんなにリツさんを怒らせて……。
●律
…………。
●神蔵
すごい睨まれてるな……。
喋ったら、細かく刻んでネコの餌に混ぜて地面に埋める、
みたいな目をしてやがるな……。
…………ん?
●プロデューサー
どうしたの?
●神蔵
……ああ、いや。気のせいか?
いや、でもたしかに。
すまん、相棒。詳しい話はあとでするが……
少しばかり、異常な事態が起こっている。
俺もこんなことは初めてで、
何がどうなっているのか……。
●瘴念<ノイジー>
ギシシシシ……。
●アリス
ひっ……!?
や、やっぱり何度見てもありえませんわー!!
●神蔵
っと、本当にお出ましになりやがったか。
●輝音
ほう、あれが……。
さながらRPGに出てくるザコ敵って感じだな。
●栞歩
関心してる場合じゃないでしょう!
●神蔵
相棒、仕事の時間だぜ!
ガールズが与えてくれたチャンス! 根絶やしにするぞ!
想世(アンダー)サイド:第5章「神蔵」第11話「調停者の意地」
ーー運動場
●瘴念<ノイジー>
ギシャアアア……。
●神蔵
いい調子だな。粗方片付いたぜ。
……ふぅ。結構な数だったが、
おかげでかなりキレイになったな。
●律
何、いまの動き?
合成か何か? ありえないのだけど……。
●輝音
あの神蔵とかいう男、戦えこそしないが、洗練された動きだな。
比べて、プロデューサーは……。
●栞歩
まだだまだ、荒削りですね。
ですが、地力で言えば、相当なものを秘めているかと。
●アリス
冷静ですわね……。
ワタクシも最初にこれを見たときは、目を疑いましたのに……。
●響香
でもさ、ワクワクしない、こーいうの?
なんだ、こんなに楽しいこと、世の中にあるじゃん! ってさ。
●アリス
お、驚きましたけど、キョーカさんの言っていること、
ワタクシは分からなくはない、ですわ……。
●神蔵
よし、撤収だ。数が多くてもザコはザコ。
案外あっけない戦いだったな。
●輝音
あっ。
●神蔵
なんだ、どうした?
●輝音
神蔵とやら、それはいわゆるフラグというものだ。
●神蔵
は? なんのことだ?
●輝音
つまり……。
●巨大な瘴念
オオオオオオオ……。
●アリス
な、なんですのあの巨大な化け物は!?
●神蔵
な……!?
あんな強力な瘴念<ノイジー>まで呼び寄せたというのか!?
●輝音
だから言ったではないか。
しかしここまでキレイに回収してくれると、むしろ清々しいな。
●栞歩
言ってる場合ですか!
●巨大な瘴念
オオオオオオ!
●神蔵
まずい! 攻撃が来る!
●プロデューサー
(受け止める)
●神蔵
相棒!
●巨大な瘴念
グオオオ……。
●律
あ、あっちからも来た!
●神蔵
なっ! し、しまった!
こっちに気をとられてる隙に!
だ、ダメだ! 間に合わねぇ!
●巨大な瘴念
オオオォォォ……!
●神蔵
相棒!?
●輝音
ふむ。1体を片手で抑えて、
もう片手で残りの1体を攻撃したのか。
●アリス
す、すごいですわ……!
●神蔵
やるなぁ……! まさに全盛期の俺を見ているようだぜ!
っし! 一気に片付けちまえ!
想世(アンダー)サイド:第5章「神蔵」第12話「特異な少女たち」
ーー運動場
●巨大な瘴念<ノイジー>
オッ、オォォォ……。
●神蔵
……はぁ。……はぁ。
……やったか?
…………ふぅ。
久々に、老体に堪える仕事だったぜ。
……俺は何もしてないけどな。
●アリス
や、やったー! やりましたの!
おつかれさまですわ、おふたりとも!
●響香
いえーい! コングラッチュレーション!
●神蔵
……お気楽なやつらだ。
一歩間違えれば、俺みたいに存在ごと喰われちまうってのに。
……特異体質の歌姫<ディーヴァ>、か。
本当、相棒の周りには特殊なヤツらばかり集まってくるな。
●プロデューサー
特異体質?
●神蔵
土方アリスのことだ。
俺も勘違いかと思ったんだが……間違いない。
●神蔵
彼女は歌姫だ。そして、歌姫でありながら、
瘴念人<ミアノイジー>が存在しない。
●プロデューサー
どういうこと?
●神蔵
相棒も見習いとはいえ、
調停者<プロデューサー>ならなんとなく分かるはずだ。
●神蔵
本来ならば、負の感情を溜めた人間からは、
黒い瘴気のようなものが溢れ出るのを感じる。
だが土方アリスは、どれだけ負の感情を溜め込んでも、
それが瘴気として流れ出てこなかったんだ。
瘴気が濃くなると、それが瘴念人となる。
だがそもそも瘴気のない土方アリスには、瘴念人は存在しない。
これは極めて特殊なことだ。
薊禰にも話しておく必要があるだろうな。
……と、言われてもいまはよく分からないだろう。
ひとまずそれでいい。
だがよく分からないついでに、もう1つ伝えておくと、
櫻花ひなたも特異体質だ。
●プロデューサー
どんな?
●神蔵
櫻花ひなたは歌姫だ。それは初めから分かっていた。
だが、櫻花ひなた以外のユニットメンバーは、
最初は歌姫ではなかった。
つまり、櫻花ひなたの「周りを輝かせる力」で、
他のアイドルを歌姫にしたんだ。
……だが、強すぎる光は、濃い闇を生む。
それだけは、知っておかなくてはな。
●プロデューサー
どういう意味?
●神蔵
……ま、ただの例えだよ。
歌姫が増える分には、調停者としてはありがたいしな。
●律
さっきから2人で何を話してるの?
仕事をしたのだから、現世<エイドス>に返して欲しいわ。
●神蔵
おっと、すまないなガールズ。
みんなの働きで、瘴念<ノイジー>を一掃することができた。
感謝してるぜ! またいつでも遊びに来いよな!
●輝音
そうさせてもらう。
●響香
また呼んでね、カグライっち!
●栞歩
できれば遠慮したいですね……。
●律
できればっていうか、頑なに遠慮したい。
●アリス
わ、ワタクシはその、どちらでも……。
●輝音
……ではな、プロデューサー。
なかなか刺激的で楽しかったぞ。
現世では今日のことは覚えていないが、
私たちと接点があれば遠慮なく頼ってくれ。
●響香
アタシは、プロデューサーが現実でも
プロデューサーしてくれるといいなって思ってるからね。
●栞歩
ええ、そうですね。
私たち、きっと現実でも仲良くなれると思います。
●アリス
ほ、本当にありがとうございましたわ!
●律
…………。
●神蔵
じゃ、送り届けるぞ。
現世でも、アンタらは巡り会えるよ。
例え覚えていなくてもな。それが青春ってやつだ。
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