【あおガルシナリオ集】新アイドル・友守唯衣花が活躍する「乖離するデザイア」
2019年1月31日にサービス終了を迎えたスクウェア・エニックスのアイドルゲーム『青空アンダーガールズ! Re:vengerS(リベンジャーズ)』のシナリオ集をお届けします。
この記事では、新アイドル・友守唯衣花(ともり・ゆいか)(声優:花守ゆみり)が活躍するイベント「乖離するデザイア」を紹介します。
「乖離するデザイア」第1話「不時着の小旅行」
●唯衣花
ご清聴、ありがとうございました!
●佐藤ばあちゃん
相変わらず、ゆいかちゃんの声は
べっぴんさんだねぇ~。
●湯地ばあちゃん
ホント! ばあちゃんたち、聴き惚れちゃったよ!
●唯衣花
いやー、どもども。
●湯地ばあちゃん
唯衣花ちゃんが楽しそうに歌っていると、
元気が湧いてくるわね~。
●唯衣花
えー、湯地ばあちゃん、元から元気じゃん!
朝早くから、道の掃き掃除とかしてるし!
●湯地ばあちゃん
そんなことないよぉ。
もうめっきり、腰が弱くなってね~。
●山川ばあちゃん
湯地さんはまだいいよ。
あたしなんか、台所にも立てないんだから。
●唯衣花
あ、山川さん! わたし、また家事しに行くね!
そろそろ冷蔵庫の卵、賞味期限切れるでしょ?
●山川ばあちゃん
すまないねぇ。だけど、気にしなくていいんだよ。
こうして老人会のみんなで、温泉に来られただけで十分だよ。
●佐藤ばあちゃん
そうそう。ゆいかちゃんには、やることがあるだろ?
●唯衣花
えと、学園へ編入すること?
●佐藤ばあちゃん
他に何があるのさ。
みんな、自分たちのことのように喜んでるんだから。
●唯衣花
……ありがとう。
期待と不安が半々、ってところだけどね。
●おばあちゃん
唯衣花。
●唯衣花
おばあちゃん……どうしたの?
●おばあちゃん
達者で、頑張ってきなさいね。
アンタの声は、年寄り共で専有するにはもったいない。
東京に行って、アイドルになって、
そしたら、私たちはテレビで唯衣花の歌を聴くからね。
●佐藤ばあちゃん
しっかりね、ゆいかちゃん。
●湯地ばあちゃん
寂しくなったら、いつでも帰っておいで。
●唯衣花
うん!
●おばあちゃん
それから……。
向こうでは、しっかりお友達作るんだよ。
ジジババじゃなくて、同じ年頃のお友達をね。
●唯衣花
もちろん! 東京では、たっくさん友達作るから!
みんなで遊んでる写真とか、バンバン送っちゃうし!
原宿でクレープ食べたり、SNSに写真アップしたり、
アイドル同士でサインの交換したり!
だから……おばあちゃんたちも、
ずっとずっと、健康でいてね!
●おばあちゃん
もちろんだよ。
本当のアイドルになっても、なれなくても、
唯衣花は私達の、永遠のアイドルだよ……。
私達のかわいい唯衣花……。
どうか、幸せになっておくれ……。
(学園長室にて)
●唯衣花
任せて、おばあちゃん!
わたし、世界一のアイドルになるからね!
●学園長
…………。
●萌
…………。
●唯衣花
あ、あれ?
●学園長
……トモリユイカ、さん? 意気込みは素晴らしいですけど、
私、まだおばあちゃんって年じゃないと思うの。
●唯衣花
す、すみません!
ちょっと精神世界に小旅行に行ってました!
●萌
学園長、大丈夫ですか、このひと?
経験者の私の勘では、マジの激ヤバなんですけど。
●学園長
大丈夫よ。なぜなら、この前のひなたちゃんたちも、
ちっとも大丈夫に見えなかったでしょ?
●萌
つまり、どっちも大丈夫ではないのでは?
●唯衣花
それで! あの! わたしの所属する学プロって!?
●唯衣花
たくさんの友達と、原宿行ったり、SNSに写真アップしたり、
サインを交換しあわないといけないんです!
●萌
えぇ……。レッスンしましょうよ……。
●学園長
コホン……。話がそれちゃったわね。
友守唯衣花さん、改めて神楽ヶ丘学園へようこそ。
そして、あなたの所属する学プロだけど……。
●唯衣花
はい!
●学園長
ないわ♪
●唯衣花
……んー?
●学園長
ごめんなさい……。
なんせ編入の話が急だったもので……。
しばらく、友守さんにはフリーで活動してもらおうと思うの。
●唯衣花
…………。
……なして?
「乖離するデザイア」第2話「ふたつ巴の日」
ーーレッスン場
●唯衣花
(……おばあちゃんと兄貴に勧められて、
東京のアイドル学園に編入したはいいけど)
(1人で公開レッスンに参加って何!?
都会人の群れに、田舎もんをいきなり放り込むフツー!?)
●残念そうなアイドル(茜)
あー、アカネったら、珍しく1人になっちゃったなぁー。
イリオモテヤマネコくらいの希少さだわー。
レッスンの相手、どうしようかなー。
アカネと組める、幸せ者は誰かなー。
●唯衣花
(……あのひと、わたしと同じ空気を感じる。
絶対、同じ田舎者だと思う)
やっぱり、わたしはここでも1人なのかな……。
まだSNS映えしてないのに……。
●都会人アイドル(巴)
ちょっと、そこのアンタ。
●唯衣花
は、はひぃ!? ……わ、わたし?
●都会人アイドル(巴)
他に誰がいるのよ。
そこにいられると、邪魔なんだけど。
アンタは後半の組なんだから、その白線から出ないで。
●唯衣花
わわっ! ごめんなさい!
●都会人アイドル(巴)
……ふん。これだから田舎者は。
●唯衣花
(おばあちゃん、都会は恐いところです……。
唯衣花は早くも帰りたい気持ちでいっぱいです……)
●都会人アイドル(巴)
ほら、アンタはこっち。
さっさと壁の方向いて。
●唯衣花
は、はい!
●都会人アイドル(巴)
こうして私が背中を合わせるから、
ほら、両腕を絡ませて。
●唯衣花
はい!
●都会人アイドル(巴)
そう、そのまま私の背中に体重を預ける。
そしてグーッと、背筋を伸ばすイメージで。
●唯衣花
はい! そのままグーッと……あれ?
(な、なんでわたし、このひととストレッチしてるの?)
●都会人アイドル(巴)
はい、次は私の番。早く背中ひっぱって。
●唯衣花
は、はぁ……。
…………。
●都会人アイドル(巴)
…………。
……よし、いいよ。
次はアンタが床に座って。私が背中押すから。
●唯衣花
あ、あの。
●都会人アイドル(巴)
何?
●唯衣花
(こういうとき、なんて言ったらいいんだろう?
……とりあえず)
あなた、お名前は?
●都会人アイドル(巴)
どうしてそんなこと、教えないといけないの?
●唯衣花
すみません! 出過ぎたことを聞きました!
●都会人アイドル(巴)
いいから早く、床に座る。
●唯衣花
はい~っ!
(やっぱり恐いよ~! なんなのこのひと!?)
●都会人アイドル(巴)
……馳巴。
●唯衣花
へ?
●巴
はせ ともえ。
私の名前よ。アンタが聞いたんでしょ?
●唯衣花
あ……う、うん!
●巴
で、アンタは?
●唯衣花
わたしは友守唯衣花!
先週、ここに編入して来たの!
●巴
そう。物好きなのね。
……ま、分からないことがあれば、私に聞くのはアンタの自由よ。
●唯衣花
う、うん? ありがとう?
●巴
……ふん。
●唯衣花
(分かった。多分このひと、素直じゃないだけだ)
(ちょっと訂正。
おばあちゃん、東京には、変だけど怖くない人もいます)
「乖離するデザイア」第3話「斬り結ぶ言葉」
ーー学食
●唯衣花
わ、わー! すごーい! かふぇてりあだ!
かふぇてりあで、と……友達と……お茶してる……。
●巴
カフェ……? ただの学食だけど。
●唯衣花
い、いいんだよー! 憧れだったんだもん!
(さりげなく友達って言ってみたけど……否定されなかった!
これはもう、公認ってこと!?)
●巴
あと、別に友達になった覚えはないから。
●唯衣花
時間差!? 意外とガード固い!?
(ま、まあ、いきなりだもんね。
ゆっくり時間をかけて、仲良くなっていこう……)
と、ところで馳さん、お願いがあるんだけど……。
●巴
やめて。
●唯衣花
まだ何も言ってないよ!?
●巴
じゃなくて、呼び方。
●唯衣花
へ?
●巴
上の名前、嫌いなの。
言いにくいし、なんかクシャミみたいだし。
●唯衣花
く、くしゃみ? よくわからないけど……。
(やっぱり、少し変わってるなぁ)
●巴
それで、何?
●唯衣花
あ、うん。あの、わたしと写真を撮って欲しくて。
●巴
やめて。
●唯衣花
やっぱり断られた!?
もしかして写真苦手?
あ、でも、撮られると魂抜かれるってのは迷信でね!
●巴
私をいつの時代のひとだと思ってるの?
●唯衣花
あ、そっか……。
でも、だったらどうして?
●巴
単にアンタと一緒に写りたくないの。
●唯衣花
もう少し言葉を選んで欲しいな!
●巴
安心して、他意はないから。
●唯衣花
余計に安心できないよ!
●巴
……冗談よ。
●唯衣花
(冗談きっついなぁ……)
●巴
本当は、その……分からないだけ。
どんな顔して写ればいいとか。
意外かもしれないけど、私、愛想笑いとか苦手なの。
●唯衣花
(意外どころか、見たまんまだよ)
どうしてもダメかな?
おばあちゃんたちに写真を送らないといけなくて。
●巴
おばあちゃん?
●唯衣花
あ、おばあちゃんたちってのはね、
私のこと、小さいときから面倒見てくれたひとたちで……。
わたし、約束して……。
学園に行ってたくさん友達作るって……。
でも、アイドルだって真剣に考えてて……。
アイドルは、おばあちゃんと兄貴に勧められたんだけど……。
(って、うまく説明できてるかな?
緊張して、あんまり自信ない……)
(もう少し、きちんとお話したいんだけど……)
●巴
……食堂は、少し騒がしいね。
●唯衣花
え? な、なんの話?
●巴
私、ミルフィーユが食べたい。
この世で最も尊い食べ物よ。
だから私はカフェに行く。
……そこに、アンタがついてくるのは自由よ。
●唯衣花
……あ。
うん! そうしよう!
わたしももっと巴ちゃんのこと知りたい!
●巴
そう。私は別に、私のことを話さないけど。
でも、ミルフィーユを食べながらだと、
機嫌が良くなって、少しだけお喋りになるかもね。
「乖離するデザイア」第4話「はじめてのトモダチ」
ーーカフェ
●巴
なるほどね、それで急に編入を。
●唯衣花
そうなの。なのに、入る学プロがないって
学園長に言われちゃって……。
●巴
友達、いないのね。
●唯衣花
どうしてそこだけ!?
あ、うん! 友達作るのも目的だけど!
(でも、巴ちゃんがいるから、
その目的はちょっとだけ達成しました、なんて……)
巴ちゃんは学プロ、入ってるの?
●巴
フリーよ。ユニットも組んでない。
●唯衣花
そ、そうなんだ。ふーん。
(こ、これはチャンス!?)
(友達から同じユニットメンバーになれたりしたら、
それはもう、親友を通り越して結婚してるようなものよ!)
あの! 良かったらわたしと!
●巴
ひゃっ!?
●唯衣花
あ、ご、ごめん……。
大きな声、出しちゃって……。
(うぅ……。失敗しちゃったよ……)
●巴
別にいいけど……。どうしたの?
●唯衣花
(もう一度、言うのよ唯衣花!
わたしと結婚! ……じゃない、ユニット組んでくださいって!)
●巴
ちなみに、アンタとユニットは組めないから。
●唯衣花
わたしと一緒にユニットを――
ってえぇ~!? なして!?
●巴
なんでって……。
●唯衣花
わたしが田舎者でそそっかしくて思い込み激しいから!?
勢いで行動してあとで自己嫌悪するタイプだから!?
●巴
……自己分析はちゃんとできてるのね。
そうじゃなくて、私は1人でやりたいの。
その……アンタに問題があるとかでなくて。
ユニットを否定する気はない。
私には合わないって思うし、やりたいことじゃないだけ。
言うなれば、私は1人で書く小説があってるの。
大人数で作る映画にも、ちょっと憧れがあったとしてもね。
●唯衣花
つまり……わたしは温泉にはタオルを巻いて入る。
だけど巻かない派のひとにちょっと憧れもある……って感じ?
●巴
たぶん違うけどそれでいいよ。
ていうか、ひとが例えたのをさらに例えないでよ。
わけわかんないでしょ……。
●唯衣花
そっか……。残念だけど、仕方ないよね。
…………。
●巴
……でも、私がレッスンしてる横で、
アンタが一緒にレッスンするのは、アンタの自由よ。
そして私はミルフィーユを食べると機嫌が良くなるから、
そんな日は少しくらい、教えてあげることもあるかもね。
●唯衣花
……巴ちゃん。
うん! じゃあ毎日一緒にレッスンして、
終わったらここでお茶しようね!
●巴
誰も毎日だなんて……まあ、いいけど。
●唯衣花
やったー! じゃあこれからもよろしくね、巴ちゃん!
(おばあちゃん、どうやら唯衣花にも友達ができたみたいです)
(少し素直じゃないけど、
友達思いの、とってもいい子です!)
「乖離するデザイア」第5話「恥じらいデイブレイク」
ーー廊下
●巴
そうね。レッスンといってもまだ最初だし……。
●唯衣花
基礎練習でも、なんでもばっちこい!
地道な努力が地力を作るんだよね!
●巴
とりあえず、手当たり次第、そのへんのユニットに
ケンカ売ってみましょうか。
●唯衣花
超攻撃的だった!?
●巴
別にふざけてないよ。
『ライブバトル』について、説明されなかった?
●唯衣花
あ……うん、聞いたかも。
●巴
かも?
●唯衣花
説明受けてる間、ちょっと精神世界に小旅行してて……。
●巴
……唯衣花って、少し変わってるよね。
●唯衣花
あはは……。よく言われる……。
●巴
ライブバトルは、学園内の公式試合よ。
勝敗数によってアイドルランクが変動したり、
それによって学園内での待遇も変わる。
ランクが高いほうが優先的に学内の施設を使えたり、
予算も当然、多くもらえるの。
●唯衣花
おお……。世はまさに。アイドル戦国時代……!
●巴
そういうこと。
自分の実力を知る意味でも、まずは適当に戦って……。
コテンパンのけちょんけちょんに敗北して、
失意のなか己の不甲斐なさに打ちひしがれるといいよ。
●唯衣花
だから言いたいこと分かるけど、
もう少し言葉を選んで欲しいな!
●巴
事実は正確に伝えないとね。
●唯衣花
(むしろ悪い方向に誇張してるよね?)
●巴
ええと、手頃な対戦相手は……。
●金髪のアイドル(セリア)
ふふふ……忍者的ヒキョー術の前に、
名もなきモブユニットは儚く散るのデス!
茶運び人形にトコロテン入り湯呑を運ばせて、相手が
飲めへんやないかーい! と動揺しているところを叩くデス!
●ギャルっぽいアイドル(佳奈恵)
モブ相手に反則技って、
アタシら相当追い詰められてない?
●関西弁のアイドル(楓李)
違うで佳奈恵はん。うちらはいつも全力なだけや。
知り合いの生徒に声かけたと思ったらまったく別人やったけど、
そのまま知り合いのテイで貫き通したときの彩はんくらい全力や。
●スリムなアイドル(彩)
ギャー! なんで知ってるのよ!?
アンタ学年違うくせに!
●巴
あれでいいか。
●唯衣花
別の意味で手頃でない気がするんだけど……。
●巴
いいから、ほら早く行きなさい。
●唯衣花
うん……。
(……えと、ライブバトルするのはいいんだけど)
●巴
どうしたの?
●唯衣花
な、なんて話しかけたらいい?
●巴
は?
●唯衣花
だってわたし、いつも1人だったから……。
たまにひとと話しても、余計なこと言っちゃうみたいで……。
●巴
ライブバトルの恥はかきすて。
仲良しこよしになろうってわけじゃないんだから。
●唯衣花
そうだけど……。うぅ……。
●巴
……分かった。仕方ない。
早く自分から話しかけられるようになってね。
●唯衣花
かたじけのう……。
(なんだかんだで、面倒はみてくれるんだ)
(というか巴ちゃんは、
どうして最初、わたしに声かけてくれたんだろう?)
「乖離するデザイア」第6話「天衣無縫のシンデレラ」
ーーライブ会場
ーーステージ裏
●セリア
ふっ……負けたぜよ、完璧に……。
だけど、なぜか悪くない気分でありんす。
きっと、敗北の哀しみよりも、
新しき時代の到来を、喜ばしく感じてるからデスね……。
●佳奈恵
ついさっき100連敗したアタシらが言うと、
ひと月で100回時代が変わったことになるけど、そのへんOK?
●楓李
え、それは困るわ。うち、季節の変わり目に体壊しやすいねん。
何回夏風邪引くかわからんわ。
●佳奈恵
どうでもいいけど、誰か負けたことを悔しがったりしないの?
●楓李
悔いなんてあらへん。
悔いが残るほど、真剣にレッスンしとらんもん。
●彩
え? いや、私は普通に悔しいんだけど……あ、あれ?
●巴
……なんなの、このひとたち。
こんなヘンテコなアイドル、みたことない。
●唯衣花
…………。
(……勝っちゃった。初めてのライブバトルで)
(だけど、温泉旅館のステージとは、全然違った……)
(審査員のひとたち、全然笑顔じゃないんだもん。
おばあちゃんたちは、みんな喜んでくれたのに)
(みんな、真剣な目してた。
……そうだよね、アイドルは遊びじゃないんだ)
●巴
唯衣花。
●唯衣花
あ、うん! 巴ちゃん! わたし、ライブバトルに勝ったよ!
●巴
そうね、おめでとう。正直、信じられない気持ちよ。
相手も同じEランクとはいえ、唯衣花よりずっと経験値は上。
それを初戦で破るなんて……。
なんか、腹立つね。
●唯衣花
巴ちゃんって、感情表現が素直だよね。
●巴
……このひと、意外に才能あるのかも。
私レベルが見ても分からないけど、見る人が見れば……。
●お姉さまなアイドル(響香)
へー、またまた面白そうなニューフェイスじゃん。
●巴
っ!?
●セリア
響香! 響香じゃないデスか!
●響香
やっぴーセリア。最近、よく会うね。
どうよ、例の件は?
●セリア
順調デスよ。最終段階にきてるでありんす。
あとは30年前の凱旋門から、宇治抹茶粉末をばら撒いた
ハンドルネーム、まりもグリーンさんの協力さえ仰げれば……。
●佳奈恵
よくもまあ、そんな適当がベラベラでてくるよね。
ウチの弟たちも最近、
セリアの真似してわけのわからないことばっかり言ってるわ。
●響香
敢えてなぜとは言わないが、
それは阻止したほうがいいと思うぜアタシは!
●唯衣花
誰だろう……。なんだかセリアさんと似てるし、
もしかして同じEランクのひとかな。
●巴
……とんでもない。
●唯衣花
へ?
●巴
彼女は『天衣無縫の猫』風早響香。
学園最強のユニット『ヴァルキュリア』の現No.4よ!
●唯衣花
が、学園最強!? えぇ~!
●響香
やーやー、ご丁寧に紹介ありがとうね。
えっと、唯衣花ちゃん、だよね?
ちょっとお話があるんだけど、いいかな?
●唯衣花
話って、わたしに!? は、はいっ!
●響香
そんな固くならずに、りら~っくす。
●唯衣花
(そ、そんなこと言われても!)
(このひとが学園最強! 何か失礼があったら、
どんな目にあわされるか……あわわわわ!)
●響香
単刀直入に言うね。
さっきのライブバトルを見て、ピンと来たよ。
あなた、うちのレッスン受けてみる気ない?
●唯衣花
…………え?
えええぇぇぇ~!?
「乖離するデザイア」第7話「戦乙女の裏側」
ーー校外レッスン場
●栞歩
はい! そこで立ち位置変わる!
アリス、足元は見ません!
●アリス
はいですわ!
●栞歩
アリス! 腕があがってないですよ!
背筋も伸ばして、身体が床と直角になるように意識して!
●アリス
は、はい~!
●唯衣花
……どうしてこうなった、わたし。
(この時間、本当なら椎茸をパック詰めして、
ひたすらベルトコンベアに流してたはずなのに……)
(そんなわたしがアイドル!? しかも学園最強のユニットに
目をつけられて、レッスンを見てろって!?)
(あわわわ……おばあちゃん!
唯衣花はいま、逃げ出したい気持ちでいっぱいなのです……!)
●栞歩
リッちゃんも少し前に出すぎです。
もう3センチ、つま先を引いて。
●唯衣花
(……でも、唯衣花は逃げません。
だって、これはわたしが望んだことだから)
(ちゃんと、勉強しなきゃ!)
●響香
…………。
●唯衣花
(わたしは素人だけど、それでも分かる。
みんな、すごくうまい……)
(動きは完璧に覚えてる。
誰も周りを見てないのに、まったくぶつからない)
(……あ、回るときも、身体が先で顔は最後まで
お客さんのほうを見てるんだ)
勉強になるな……。
実際にできる気はしないけど……。
(レッスンが終わって)
●栞歩
おつかれです、みなさん。
完成度はもう2歩、3歩足りないって感じですね。
●アリス
申し訳ございませんわ……。
ワタクシがまた、みなさんの足をひっぱって……。
●響香
えー、今日はアタシも間違えたし、
別にアリリンだけじゃないって!
あんまりジメジメしてると、頭にキノコ生えちゃうわよ!
●律
だけど、私のほうにはみ出してくるのはやめて。
逆ならお好きにどうぞって感じだけど。
●アリス
す、すみませんリツさん! 気を付けますわ!
●響香
そういうリッちゃんも、はける方向間違えたでしょ?
アタシは見逃さなかったけどなぁ。
●律
……目ざといわね。
●唯衣花
(あれだけ完璧にやっても、まだ全然納得いってないみたい……。
これが、学園No.1ユニットのレッスンなんだ……)
●栞歩
それでキョーカ、そろそろゲストの方を
紹介してくれませんか?
●響香
ああ、そうだったね。
チチチチチチ……おいでおいで~。
●アリス
そんな猫みたいに……。
●唯衣花
っ! よ、呼ばれてる!?
はい! ただいま~!
な、何か御用でしょうか響香センパイ!?
●律
猫っていうか、犬ね。
●響香
自己紹介してくれる?
●唯衣花
はいっ!
友守唯衣花! 14歳!
先週、この学園に転入してきました!
アイドル経験はありません! 日課は椎茸の仕分けとパック詰め!
いま一番欲しいものは友達です! よろしくお願いします!
●律
椎茸? 友達?
●響香
面白いでしょ、この子。
●律
まさかそれだけで連れてきたわけ?
●唯衣花
(え、そうなの!?)
●響香
さあどうだろうねー。
そうとも言えるし、そうじゃないとも言えるよ。
●唯衣花
(結局どっちなの!?)
●律
まあ、どっちでもいいけど。
●唯衣花
(良くないよ! わたしが一番気になる!)
●栞歩
なんにしても、彼女のことはカノンが来てからです。
彼女がいないことには、何も話が進みませんから。
●アリス
というか、カノンさんはどうしたんですの?
●響香
新しいゲームの発売日だって言ってたよー。
予約もしてるけど、当日並んで買うのがロマンだーって言って。
●唯衣花
(え? そ、そんなことが、レッスンに優先するの?)
●アリス
……なら、仕方ないですわね。
●唯衣花
(仕方ないの!? 許しちゃうの!? えぇ~!)
(ダメだ。常人には理解できない世界だよ。
わたしもいつか、この環境に慣れるのかな……)
「乖離するデザイア」第8話「チャンス」
ーー校外レッスン場
●律
……来たみたい。
ドタバタと、相変わらず品のない人。
●輝音
シホ、シリアルコード入りの初回限定盤が無事に手に入った!
2つあるから、いまから私の部屋で……!
……おや?
●栞歩
もうとっくにレッスンは始まってますけど。
●輝音
それはなんだ?
●栞歩
キョーカが連れてきたんです。
見どころがありそうだって。
●響香
可愛いでしょ~。髪の毛もふわっふわなんだから。
ほら、よしよ~し。
●唯衣花
あ、ちょっ、そんな撫でられると……。
●響香
よしよ~し。
●唯衣花
……く、くぅ~ん♪
●アリス
鳴きましたわ!?
●栞歩
本当にワンコみたいですね……。
尻尾をフリフリしているのが、見える気がします。
●律
……かわいい。
●響香
ねぇ、カノカノ。
ちゃんと世話するから、ここで飼ってもいい?
●輝音
ふむ、そうだな。犬は好きだ。
●響香
ホント!? やったー!
良かったね、ユイユイ!
●唯衣花
ユイユイ……。
というか、わたし、犬なんですか……?
●響香
ここは話をあわせて。
カノカノはNo.1の権力者だから、目つけられると恐いよ~。
●唯衣花
ワン! ワンワン!
●輝音
ただし、私が好きなのは、芸をする犬だ。
お前、何かできるのか?
●唯衣花
芸、ですか……。
椎茸……じゃない。家事全般は得意ですけど……。
(きっとそういうことじゃないよね。
芸、つまり、わたしの特技って言えるものって……)
えと……歌?
●アリス
えっ!?
●輝音
……ほう。
●唯衣花
あ、ち、違います!
いまのはつい、思ったことが出ちゃたというか……!
●律
『ヴァルキュリア』の前でそんなこと言うなんて、
この人もしかして……何も考えてない?
●唯衣花
あうっ!?
●響香
もしくは、よほどの大物かもしれないよ?
●輝音
まあいいだろう。ここに置いておく理由は、
私の暇つぶしの相手としてか、それともアイドルとしてか、どちらかしかない。
そして、本人が犬ではなくて、アイドルでありたいというのなら……。
●律
どうするつもり?
●輝音
勝負しろ、私と。
●唯衣花
え、えぇ~!?
●響香
良かったじゃん、ユイユイ。
●唯衣花
どこがいいんですか!?
無謀ですよ! だって相手はNo.1ですよ!
(……でもたしかに、勝つのは無理でも、
実力を認めてもらえれば、ここに置いてもらえるかも?)
(そうしたら、みんなと友達になって……)
●輝音
ちなみに、勝つ気のない勝負ならするなよ。
負けてもいい、などと思っている軟弱犬に、食わせる餌はないからな。
●唯衣花
あう…………。
●輝音
それで、勝負するのか、しないのか?
●唯衣花
(わたしの特技は歌。実際、これまでは周りの誰よりもうまかったし、
わたし自身も歌うことが大好きだった)
(だったら、これからも歌を特技だって言いたいなら……
勝負、するしかない)
やります!
●輝音
よく言った。
だがやるからには手加減はしない。
自信をへし折られても、泣くなよ?
「乖離するデザイア」第9話「天性の才覚」
ーー校外レッスン場
●響香
そこまで! カノカノの勝利!
●輝音
なんだ、もう終わりか。
思っていたより、根性がないのだな。
●唯衣花
……負けた。
ちっとも、かなわなかった……。
(完璧な負け……。ていうか、勝てる気がしない。
ダンスも、歌も、次元が違う……!)
(これじゃ、もう歌が得意だなんて言えない……。
そうか、好きを仕事にするって、こういうことなんだ……)
●響香
ま、仕方ないよ。
相手はあのカノカノだしね。
●律
…………。
●栞歩
どうしたんですか、リッちゃん。
物欲しそうな目で唯衣花ちゃんを見つめて。
●律
そんな目、してない。
だけど、そうね、キョーカが連れてきただけはある。
……あのひと、化けると思う。
●栞歩
敏腕プロデューサーのあなたが言うなら、
きっと本物なんでしょうね。
●輝音
ふむ。おい、ワンコロ。
●唯衣花
は、はい……。
(わたしは学園No.1に逆らったんだ。
きっと、もう学園にはいられない)
(ごめんなさい、おばあちゃんたち。
ごめんなさい、巴ちゃん……)
(友達、たくさん作りたかったなぁ……)
●輝音
お前をヴァルプロに置いてやろう。
レッスンにも参加するといい。
●唯衣花
はい……すみませんでした……。
…………って、え?
なんの話ですか?
●輝音
だから、ヴァルプロにいることを許可すると言っている。
ありがたく思うんだな。
●唯衣花
え……えええぇぇぇ!?
(退学どころか、ヴァルプロ入り!?
何がどうなっちゃってるの!?)
●アリス
カノンさん! どういうことですの!?
●輝音
不服か?
●アリス
い、いえ! 決してそういうわけでは!
ですが、あの試合内容で、ヴァルプロ入りだなんて……!
●栞歩
あの試合内容だからです。
この子には、才能があります。
●アリス
さ、才能……。そうですか……。
●響香
よかったじゃん、ユイユイ! おめでとう!
これで友達もたくさんできるからね!
●唯衣花
あ、ありがとうございます?
正直、理解が追いついていないんですが……。
って、友達できるんですか?
●響香
まあ、ヴァルプロだからね。みんなに一目置かれるでしょ。
内部にも、同学年のアイドルもいるし。
●唯衣花
友達……!
嬉しいです! わたし、巴ちゃんしか友達いませんから!
一生懸命、サイン考えて見せあいっこします!
●栞歩
なんの話でしょうか?
●律
というか、ヴァルプロ入りよりも、友達できるって聞いた途端、
目輝かせなかった?
●輝音
ワンコロ、その巴ちゃんというのはなんだ?
●唯衣花
この学園に入ったばかりで、何も分からないわたしに、
手とり足取り、アイドルについて教えてくれた人です。
ちょっと……いえ、かなり変わってるんですが、
とても良い人ですよ? 今度、ご紹介させて――。
●輝音
必要ない。
●唯衣花
そ、そうですか……。分かりました。
●輝音
違う。紹介が必要ないと言っているのではない。
●唯衣花
だったら、どういう意味ですか?
●輝音
そんな友達、必要ないと言ったのだ。
●唯衣花
……え?
●輝音
どうせEランクの出来損ないだろう。
ヴァルプロに入るからには、これまでの交友関係は精算してもらう。
●唯衣花
ど、どうしてそんな!?
●輝音
『ヴァルキュリア・プロダクション』は、
常にトップを走り続ける最強の学プロだ。
そこに才能なき者がいては、悪影響だ。
もう一度言う。
その巴ちゃんとやらとは、縁を切ってもらう。
「乖離するデザイア」第10話「信じる道を往く」
ーー校外レッスン場
●唯衣花
巴ちゃんと縁を切る……そんな……。
●輝音
まだ出会って日も浅いのだろ?
心配せずとも、もっと有益な友人は、ヴァルプロにごまんといる。
もちろん、この条件が飲めないのであれば、
ヴァルプロ入りの話はナシだ。
●唯衣花
(……おばあちゃんたちと、約束した)
(たくさん、友達を作るって……。
アイドルになって、テレビに出るって……)
(ヴァルプロに入れば、きっとその目標に近づく。
それどころか、これを逃したら、もうチャンスはないかも)
(だって、わたしはダメダメだから。
気が弱くて、言ってはいけないことを言って、空気を悪くもする)
(これは、本当に幸運な話。逃す手はない……!)
●響香
…………。
●唯衣花
あの、わたし!
わたし、ヴァルプロに!
っ!?
●輝音
どうした?
●唯衣花
…………。
わたし、ヴァルプロに……
やっぱり! ヴァルプロには入れません!
(……って、あれ!? わたしは何を!?)
●輝音
そうか。
●唯衣花
(入らなきゃ、ダメなのに……。
おばあちゃんたちと、約束したのに……!)
●律
あなた、断るということが、どういう意味かわかる?
●唯衣花
…………いえ。
●律
私たちは別に困らない。
でも、貴方が私たちに呼び出されたことは、知れ渡ってるはず。
それだけで、妬みの対象になるのよ。
しかも、誘いを断ったなんて、もし知られたら……。
●唯衣花
……孤立する、ですか?
●律
そうね。友達を作るどころか、
どこの学プロにも入れてもらえなくなる。
それでも、いいの?
●唯衣花
…………。
いいわけ、ないです。
でも、巴ちゃんを裏切るのは、もっといいわけがない。
だって、巴ちゃんは私の初めてのお友達だから。
こんなわたしに、唯一優しくしてくれたんです。
もしこの先、一生、他のお友達を作れなくなったとしても……。
わたしは、たった1人の巴ちゃんを大事にしたい。
だから、ヴァルプロには入れません……。
●輝音
そうか、残念だな。
●唯衣花
失礼します。
●響香
あ! ユイユイ!
●栞歩
……悪いことをしましたね。
●輝音
ふむ、理解不能だな。
●律
私が言うのもなんだけど、まだ若いんだと思う。
少し大人になれば、今日のことをきっと後悔する。
●アリス
…………。
●響香
マズったかな……。
アタシ、余計なことしたかも……。
●輝音
まあ、こっちの展開のほうが面白い。
彼女がヴァルプロで飼いならされても、
将来的には『ヴァルキュリア』の一員に上り詰めるだけだろう。
●アリス
ヴァ……! え、えぇ!?
だけって、どういうことですの!?
●響香
ヴァルプロに入らず、フリーだったらどうなるの?
●輝音
あんな温室育ちの小型犬なんぞ、十中八九潰れる。
だがな……。
もし、何か奇跡的に歯車が噛み合って、
彼女が私たちの前に立ちはだかったなら……。
今度は、喰い殺されるかもしれん。
オオカミのような、鋭い牙でな。
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