Appleやトヨタを悩ませる「半導体不足」が終わらない根本的理由

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半導体不足が解消されない理由とは?


もしトヨタの車が飛ぶように売れた場合、即座に販売予測を修正するでしょう。前月の販売台数が1,800万台であれば、少し余裕を持たせて、2,000万台の注文をするはずです。

しかし、トヨタの注文は直接工場に行くわけではありません。トヨタの注文は最初、パナソニックのような会社に向かいます。なぜなら、パナソニックは、カーナビゲーション・ユニットなどの納入を担当しているからです。

一方、パナソニックは、2,000万台の注文を見て、少し余裕を持たせて、2,100万台の注文といった注文をします。

同様に、別の仲介業者に発注した場合でも、その仲介業者は多めに注文します。そして、実際のメーカーが注文を受ける頃には、元の注文とは似ても似つかぬものになっている可能性があるのです。

このプロセスの各段階では、独立した企業が、限られた情報の中で最も論理的な決断を下しています。その結果、全体としてみれば、需要はますます歪んでいきます。とはいえ通常であれば、この影響は既知であり、対処可能です。

しかし、「半導体不足」という不安により、このプロセスが破綻するのではないかという不安が多くのメーカーに生じました。そして一度に注文が殺到すると、メーカー側は簡単に圧倒されてしまうのです。

半導体不足が解決しない根本的理由

半導体不足でも、トイレットペーパーやマスクや紙おむつの不足と同じことがおきています。一人でも不足を危惧する人がいれば、買いだめを始め、最終的には多くの人が買いだめを始めてしまうのです。

メーカーとして致命的なのは、発注漏れです。これを防ぎ、かつ優先順位を上げるために、発注を拡大させます。しかし、製造に時間がかかる半導体の生産力を上げるには、工場を増やすしか方法がありません。この工場を作るには、何年もかかってしまいます。

半導体メーカーにとって本当に重要なことは、自身の生産能力に自身を持ち、買い手を安心させることです。もし、自分たちの生産能力を買い手に納得させることができれば、買い手は注文を膨らませることを止め、少なくとも不足分の一部は自然に解消されるでしょう。

また、海運価格が高騰し、中国企業が米国の制裁を恐れて買いだめしている可能性もあります。しかし、どの程度が単なるパニック買いなのか、誰にも本当のところはわからないのです。

実際のところ、本当に不足している半導体の量は大したことではないのかもしれません。 しかし、もし本当に不足しているとしたらどうでしょう。また、今は供給が極端に制限されていませんが、もしこれが思い込みだとしたら、実際はどうでしょう。

このような不安材料がある限り、多くのメーカーは発注を増やし、結果的に半導体の生産能力がパンクしてしまうのです。そして半導体は、その性質上、少数の企業が独占することがほぼ確実です。

まず、新しい工場を開くには、100億ドル(約1.3兆円)以上、最先端であればその2倍ものコストがかかります。しかし、技術の変化が速いため、5年程で使えなくなる可能性が非常に高いといわれています。つまりこれは、半導体の工場が5時間ごとに100万ドル(約1.3億円)を消費していることになります。

また、ミスや生産性を落とすことは絶対に許されません。工場は365日24時間、例外なく稼働し続ける必要があります。これだけ設備投資がかかるとなると、新規参入は非常に難しいところがあります。

現に2002年に25社あった競合他社は、2016年にはわずか3社にまで減少しています。チップ技術の大きな変革のたびに、勝者はその利益を再投資します。そして、次の革命ではさらに業界を強く支配する存在になります。

厳密に言えば独占企業ではありませんが、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(TSMC)は、Appleやトヨタといった企業の生産を担う受託企業としては、明らかに勝者です。そしてTSMCの工場の90%以上は、台湾という1つの地域に固まっているのです。

これは、1つのカゴにたくさんの非常に重要な卵が入っているようなものです。半導体が問題無く流通しているときは、その存在がいかにすごいものであるかを誰も気に留めません。

しかし、コロナ渦などの影響によって半導体の流通が止まったことで、この業界の脆さが露呈し、メーカーの不安が爆発したのです。結局の所、この漠然とした不安がメーカー間にある限り、半導体不足は終わらないでしょう。

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