ミサイル防衛の切り札「THAAD(サード)」の仕組みと〝モヤモヤする〟迎撃率

核弾道ミサイルの「ミッドコース期」「ターミナル期」で迎撃する方法


ミッドコース期は最大で20分程度あり、弾道ミサイルを迎撃するチャンスが長くあります。ただ、このタイミングで迎撃することは非常に難しいです。この時の弾道ミサイルは時速約2.4万㎞という速度で飛行しています。これは平均的な弾丸の速度の9倍です。

しかし、米軍にはミッドコース期の弾道ミサイルを迎撃する方法が2つあります。その方法とは、地上配備型の迎撃ミサイルを使う方法と、イージス巡洋艦や駆逐艦から発射できる「SM-3ブロックIIアルファ」を使う方法です。

地上配備型迎撃ミサイルは、中長距離弾道ミサイルからアメリカを守ることを目的とした防衛システムの一種です。これは、400億ドル(約5.9兆円)規模の地上配備型ミッドコース防衛計画の一部です。

地上配備型迎撃ミサイルは、多段式固体燃料ブースターと大気圏外キルビークル(EKV)を搭載しています。大気圏外ではフィンによる操縦ができないため、推進システムがあるスラスターを頼って飛行します。このミサイルは宇宙空間の目標地点に運ばれ、放出されると地上支援・射撃統制システムのコンポーネントから送信される誘導データおよび搭載されたセンサーによって目標に接近し、破壊します。


現在アメリカ軍が保有する44ヵ所の迎撃ミサイル発射施設はカリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地とアラスカ州のフォートグリーリーにあります。また、地上配備型迎撃ミサイルは中距離と大陸間弾道の両方を迎撃することができます。ちなみに、 地上配備型迎撃ミサイルは一発7,500万ドル(約110億円)という巨額の費用がかかります。

地上配備型の迎撃ミサイルのほかに、弾道ミサイルを破壊する方法として、巡洋艦や駆逐艦、イージス・アショアから多段式迎撃ミサイルを発射するという方法があります。それが、衛星などのセンサーを頼りに中距離の弾道ミサイルを追尾・迎撃する「SM-3ブロックIIアルファ」です。この手法は「エンゲージ・オン・リモート」と呼ばれています。

この迎撃ミサイルは「キルビークル」と呼ばれる弾頭を宇宙空間に飛ばし、それで弾道ミサイルを迎撃します。ただ、SM-3には射程距離が短い、中距離の弾道ミサイルしか迎撃できないという欠点があり、弾道ミサイルを撃墜するには戦艦が適切な位置にいる必要があります。

迎撃の最後のチャンスは、弾頭が大気圏に再突入したときです。この段階は非常に短く、1分程度で終了します。とはいえ、ターゲットが近くにいるため、誤差も少なく迎撃には最も好ましい時間帯なのです。

この最終手段となるのが、米軍の防衛システム「THAADミサイル」です。THAADの地上システムは、自走またはトレーラーによる移動式です。THAADのミサイル本体が発射されると、赤外線で弾道ミサイルを捉え、標的に直撃することで撃墜します。

THAADは米軍のミサイル防衛システムの主力の1つですが、このシステムにも弱点があります。THAADは大気圏外での交戦に特化しており、ミッドコースでの撃墜はできません。

さらに、THAADミサイルが対応できる最高速度はマッハ9以下であり、最高高度150kmでマッハ5から8のミサイルを迎撃するように設計されています。そのため、マッハ24以上で大気圏に再突入する大陸間弾道ミサイルは撃ち落とすことができません。

他にもターミナル期に対応する防衛システムとしては、軍艦から発射されるアメリカ海軍の「SM-6ミサイル」、アメリカ陸軍の「パトリオット・アドバンスト・ケイパビリティ」などが存在します。


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