中国・ロシアとの「極超音速ミサイル開発競争」で米国の危機に日本が学ぶべきこと

米国が極超音速ミサイルの実用化競争で大きく遅れをとっている理由とは?


極超音速ミサイルに関する米国国防総省の実績は、決して良いものではありません。実際、過去10年間、成功よりも失敗の方が多かったのです。

失敗したテストの多くの原因は、ブースターと分離機構の欠陥です。このような欠陥がある場合、極超音速に達する前にミサイルが破壊します。そのため、大量のデータが失われるか、あるいは収集されないままとなります。

公開された資料によると、2010年以降に行われた16回の極超音速ミサイル実験のうち、4分の1は通常型ロケットブースターの不具合で失敗しています。さらに2回の実験が分離の問題で失敗し、最後の1回の実験が未公表の理由で失敗しています。つまり、ほぼ50%の実験が極超音速に達する前に終了したことになります。


ここ数年、空軍は極超音速ミサイル技術を開発するための、より優れた試験場の建設計画を提出してきました。しかし、予算の制約から、これらの必要なものの多くは断念させられています。このことは、極超音速ミサイルが将来的にどれほど重要なものになるかを知っている研究開発チームにとって、非常に大きなフラストレーションとなっていることでしょう。

実験場以上に重要なのは、ミサイルを安全にテストするための地下トンネルです。極超音速ミサイルの実験に必要な速度と温度に耐えられる地下トンネルは、現在、米国に1つしかありません。しかし、このトンネルは米軍のものではなく、NASAが所有しているのです。当然ながら、NASAにはNASA独自の技術やミッションがあり、実験トンネルを使う時間を確保するのは至難の業です。


米国が極超音速ミサイルの研究を停滞させているのは、資金や資源の不足だけでなく、タイミングも関係しています。1990年当時、米国は極超音速技術を最初に習得する国になると思われていました。この時点では他のどの国よりも何年も先を行っており、有望と思われる航空機の設計も数多くありました。

しかし、その後、紛争が勃発しました。湾岸戦争に続いて中東が不安定になったため、米国は新しい技術を開発するよりも、すでに戦闘で実績を上げている既存の技術に時間、資金、資源を集中させることにしたのです。実際F-14トムキャットやF-22ラプターなどが大量に生産され、極超音速ミサイル技術は後回しにされました。


その後、ロシアとの緊張が再び高まり、中国の経済と軍事力の発展が米国の海外影響力に対する新たな脅威となっている今、ようやく米国政府は先端兵器の研究に資金を投入し始めました。2020年、国防総省は極超音速技術の開発に20億ドル(約2,800億円)強を割り当てました。そして2021年には、32億ドル(約4,500億円)に引き上げられています。さらに、2022年には38億ドル(約5,300億円)を投じています。

政府が資金提供しているプログラムは約70あります。しかし、すべてが極超音速ミサイルに関係しているわけではありません。ただ、少なくとも7つの極超音速ミサイルがこれに該当します。これは米国が現在保有している極超音速ミサイルよりも7つ多いことになります。

また、極超音速技術の開発に関して、米国にはもう1つの利点があります。それは、ロシアや中国とは異なり、民間企業が充実していることです。実際スペースX、ボーイング、ブルーオリジンなどの企業は、宇宙旅行船を開発する際に、独自の極超音速技術の開発に取り組んでいます。米国政府は、これらの企業と契約し、彼らのアイデアや技術を使うこともできるのです。


米国が考える極超音速ミサイルは、他の2カ国と比較して、もう一つ大きな違いがあります。ロシアと中国が開発した極超音速ミサイルは、主に核弾頭を運搬するために作られたようです。もしそうなら、そのミサイルが比較的正確に飛行し、最後は核弾頭が仕事をすることになります。

一方、米国は現在、精度が高く、非核の弾頭を搭載できる極超音速ミサイルの開発に力を注いでいます。つまり、米国が極超音速ミサイル計画でやろうとしていることは、ロシアや中国で開発されてきたミサイルよりもはるかに複雑だということです。

もし核兵器が発射されたら、それが極超音速ミサイルであろうが弾道ミサイルであろうが、結果は同じです。核戦争が勃発し、地球は核の冬になります。そのとき、極超音速技術は意味をなさなくなります。しかし、もし米国が極超音速ミサイルの技術を開発し、精度を高め、かつ通常爆弾を発射することができれば、そのミサイルは優れた抑止力となり、戦闘では止められない武器となります。


現時点では、3カ国とも極超音速ミサイル技術を拡大する計画を持っています。ロシアは極超音速対艦ミサイル「3M22ジルコン」の開発に取り組んでいますが、これまでのものよりはるかに高い機動性と精度が必要とされます。一方、中国は、極超音速のフラグメンテーション軌道爆撃システムであるDF-41計画の完成に向けて取り組んでいます。


このように、米軍は最近になってようやく、極超音速ミサイルの開発競争の舞台に立てた、という状況です。ただ、これは中国、ロシアに比べて数年遅いことは明らか。そして現時点でも、極超音速技術に関して、米国はまだ両国からかなり遅れています。

米軍の開発がここまで遅れた原因は、軍部の指導者たちが極超音速ミサイル技術の開発が急務であると感じていなかったからです。ロシアと中国がすでにこの技術の最先端を走っていることを知るまで、米軍はほんのわずかな実験を行っただけでした。

また、研究・生産を拡大するための資金もありませんでした。米国の極超音速ミサイルのプロジェクトに資金が回らず、真剣さが欠けているのは、間違いなく官僚主義が影響しています。おそらく、米軍はここまで中国・ロシアに差を付けられたことを後悔しているでしょう。

そしてこれは、アメリカ以上に官僚主義が強いといえる日本も学ぶべき事例です。アメリカの極超音速ミサイルのように「気づいたころには何年も遅れていた」という事態になる前に、日本も官僚主義の脱却をしないとまずいのかもしれません。

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