レゴ・グループを存続させるために行われた改革とは?
2004年、新たなCEOであるクヌッドストープ氏は、なぜ会社がこれほどまでに損失を出しているのかを解明する必要があると考えました。当初は、子供たちがテレビゲームや電子玩具など、現代的なものを求めるようになったからではないかと考えられました。
しかし、それは間違っていました。本当の問題は、会社の内部にあったのです。
レゴの経済学はシンプルです。レゴブロックがこれほど魅力的なおもちゃである理由は、どのセットも同じ基本ピースで構成され、それを創造的にアレンジして組み立てることができる点にあります。これが、レゴをこれほどまでに素晴らしいビジネスにしている要因でもあります。
1つの変わらない部品を製造し、後の商品と組み合わせて遊び続けられるというアイディアは、サプライチェーンとしては非常に優秀なことです。
レゴブロックのピースを作るには、8万ドル(約1,000万円)のプラスチック射出成形用金型が必要です。人気のあるブロックは6,000万回生産されることもあり、金型のコストは実質的にゼロになります。
しかし、レゴ・グループは10年間、新しいセットやテーマについて無謀な実験をしてきました。その結果、特殊なピースの数は6,000から12,000以上へと倍増していました。
レゴ・グループのデザイナーは、自分たちの決断がもたらす経済的コストから隔離されていたため、新しい刺激的なテーマに挑戦することが許されていたのです。例えば、あるセットでは、8種類の海賊と10種類の脚が用意されていました。
このような新しい作品は、それぞれ独自の金型を必要とするため、生産コストが急速に上昇します。
クヌッドストープ氏は、まず、不採算のセットを取り除き、うまくいったセットを倍増させるという統合を行いました。そしてレゴ・グループは、物語、特に映画のようなブランドシリーズを中心に据えました。
実はスター・ウォーズのような既存ブランドとの提携は、当初は社内で賛否両論ありました。なぜなら「家族向け」でクリーンなイメージが薄れることを懸念したからです。しかし、2004年には、スター・ウォーズとバイオニクルズのセットだけが黒字で、他の94%は赤字という結果になりました。
ただ、スター・ウォーズシリーズは新作映画の公開後にしか売れず、レゴブロックの売上は提携先の映画公開のスケジュールに大きく左右されるという問題がありました。こうした要因が重なり、レゴ・グループは近代的な時代を迎えることになります。
レゴ・グループは差別化と多様化を図るため、多くのブランドとライセンス契約を結び、さらに独自のブランドを立ち上げることを目指すようになりました。そして「LEGO Movie」の成功により、同社は自らのブランディングをコントロールし、若い世代の心に物語を刻み続けることができるようになったのです。
それでも、こうした判断には賛否両論があります。レゴブロックは長い間、多くの大人のファンを集めてきましたが、同社がハリウッドなどの映画のテーマを優先するあまり、創造的な原点を失ってしまったと考える人もいるのです。
また、今のレゴブロックは遊ぶことに重点を置きすぎていて、作ることに重点を置いていないと言う大人のファンもいます。
しかし、レゴ・グループは1934年に玩具のクリエイターとしてスタートし、今も変わらず製品にこだわりを持っています。特許の有無にかかわらず、顧客がレゴブロックを選ぶのは、単純にレゴの品質が良いからです。
事実、子供の頃に遊んだブロックが何十年後でも、スムーズにカチッと音を立てて遊べることを体験すれば、その良さがわかるでしょう。レゴグループの戦略は、大きく変化してきました。しかしその根幹は、大昔のブロックが今でも使えて、大人から子供までが遊べるというところにあるのです。