消防隊が到着しても鎮火できなかった理由とは?
午前8時半過ぎ、サンディエゴ海軍基地のFedFireの隊員が、現場に到着しました。アメリカの海軍基地には、FedFireと呼ばれる連邦消防局が常駐しています。しかし、ボノム・リシャールから消防局に連絡した者はいませんでした。なんと、基地内で働いている人が煙に気づいて、連絡していたのです。全く船内の連携が取れていない証拠です。
消火活動を効率的に進める為には、船員とFedFireに的確な指示ができるリーダーが必要です。ただ、本日のCDOは出勤初日です。そのため、的確な指示を出すことができませんでした。そこで、FedFireは、独立した部隊として活動することにしました。
さらに、不運が重なります。なんと、FedFireが持っていた消火ホースは、艦内の消火システムと互換性がありませんでした。どういうわけかFedFireは船の消防システムに接続するための適切なアダプターを持っていなかったのです。
火災発生から約1時間後の9時5分、メールを受け取ったボノム・リシャールの司令官がサンディエゴ海軍基地に到着し、サンディエゴ消防署の下に組織された各自治体の消防隊員も到着しました。しかし、FedFireの隊員とサンディエゴ消防署の隊員は、無線に互換性がなく、連携が取れませんでした。
調査報告書によると、司令官、CDO、その他のボノム・リシャールのリーダーは、消防士と船員を統合しようとはしませんでした。つまり、複数の組織がバラバラに作業をしていたということです。このような状況は完全な無秩序です。
9時15分頃、ボノム・リシャールのリーダーは、煙が大きくなってきたため、適切な呼吸器を持っていない船員に避難を命じました。その後、午前9時30分に全職員が避難を始めています。
この時点で、上階にあった可燃物が下階からの放射熱で発火し、さらに火災が発生していました。サンディエゴ消防署とFedFireは、最終的に約45分間、火災に対処しました。しかし午前10時半過ぎ、サンディエゴ消防署とFedFireの指揮官は、火災の状況が悪化していると判断し、船からすべての消防士を撤退させました。
最後の消防士がボノム・リシャールから降りてから5分も経たない午前10時50分、大きな爆発が船を揺らし、桟橋に瓦礫を飛ばしました。爆発の後、すべての職員は桟橋から完全に避難しています。その後4日間、ヘリコプターやタグボートによる消火活動が続けられましたが、ボノム・リシャールを復活させることはできませんでした。
その後、火災を止められなかった原因は「乗組員の準備が不十分で、効果的な火災対応ができなかったこと」「消防士に船上火災の訓練をさせていなかったこと」「指揮官が効果的な指示を出せなかったこと」と結論付けられました。船の修理は、最大で7年、32億ドル(約4.2千億円)の費用がかかると見積もられたため、2021年4月15日に退役しています。