ロシアの最終兵器キンジャールは「米軍でも迎撃不可能」は本当か?

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スクラムジェット以外の課題とは?


まず最初の問題は、あまりの速さに空気の分子が圧縮され、プラズマ化することです。このとき、ミサイルは大きな発光体となり、可視光や赤外線のセンサーによって、たとえ宇宙からでも発見することができてしまいます。

次の問題は、極超音速をすると通信途絶になってしまうことです。スペースシャトルが地球に帰還する際に通信が途絶えるのと同じように、極超音速ミサイルも通信を送受信することができなくなります。通信途絶の原因は、プラズマによって電波が遮断されるためです。さらに、極超音速ミサイルの前方にある視覚センサーや赤外線センサーが溶けてしまって、前が全く見えなくなってしまう可能性もあります。

そして、最大の問題は熱です。マッハ5で飛行すると、ミサイルは1800℃から2200℃まで加熱されます。そのため、ミサイルが熱で溶けないようにする必要があります。しかし、スペースシャトルに使われているシリカタイルは、空気力学的に多くの問題を引き起こすため使えません。ミサイルが溶けないようにするには、どうすればいいのでしょうか?

1つの解決策は、ミサイルを二重壁にして、燃料を冷却材として利用するという方法です。ちなみに現在、極超音速ミサイルは、空気密度と温度が海面より低い1.9万〜4万メートルの上空を飛行することによって、熱の問題を部分的に緩和しています。しかし、地上の目標に接近させるには極超音速ミサイルを、より暖かく密度の高い大気圏に降下させる必要があります。

そして、溶融を防ぐためには、従来のミサイルと同じような速度まで減速しなければなりません。従来の弾道ミサイルは、最終的にはマッハ3で飛行します。ただ、スクラムジェットはマッハ5からしか動きません。つまり、熱の問題を解決しない限り極超音速ミサイルは最終的には弾道ミサイルと同じように無動力飛行になってしまうということです。このように、極超音速ミサイルはスクラムジェットエンジン以外にも数多くの課題が存在するのです。

ただ、ロシアは「キンジャール」と「ジルコン」という2つの極超音速ミサイルを保有していると主張し、これらを「止められない極超音速兵器」だと宣伝していました。ところが、ジルコンが船にぶつかる映像は、極超音速ミサイルの割には大したダメージがないと「Not What You Think」は指摘しています。


ロシア政府は、ミサイルに爆発物の弾頭がなかったからだと主張していますが、もし本当にマッハ5以上で飛んでいたら、爆薬が積んでいなくてもTNT数トンに相当する運動エネルギーがあるはずです。確かに〝極超音速で飛ぶ〟兵器は作れていても、超速でコントロールでき、「米軍でも撃墜が不可能」といえるような真の極超音速ミサイルは、まだどこも製造できていないといっていいでしょう。

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