FlashからiPhoneアプリを作れる「Packager for iPhone」がもたらすもの

この記事は某なんとか仮面Z様からの寄稿です。

AppBankをご覧の皆さん、こんにちは。
私は「某なんとか仮面Z」というものだ。以後、お見知りおきを。

さて、今回寄稿させて頂いたのは他でもない。

iPadの登場後、少しだけ世間を賑わせたFlashアプリをiPadで動作させるという記事を見て、いてもたってもいられなくなったからだ。

そう、FlashからiPhoneアプリを作れるという
「Packager for iPhone」。

これが我々iPhoneユーザにもたらすものは一体何なのか。それを考えてみたいと思う。


メリットとデメリットとそれ以外のこと

まず、Packager for iPhoneのメリットとデメリットを上げてみよう。


「メリット」
・既存のFlashが簡単にiPhoneアプリになるらしい。
・既存のFlash開発者でiPhoneアプリ参入を狙ってる人には嬉しいはず。


「デメリット」
・UIKitが使えないことによるUI一体感の欠落(現時点の情報)
・アプリ数の更なる増大
→AppStoreのカオス化
→審査期間の長期化を招く
→アプリのアップデート遅延化
→AppBankにおけるレビューアプリチョイスのカオス化


「メリットなのかデメリットなのか微妙な点」
・アプリ価格の更なる低価格化
・iPhoneSDKバージョンアップ時の対応が不明確


Adobeの企業戦略に振り回される既存のiPhoneユーザとiPhoneアプリ開発者

恐らく多くの人が望んでいるような普通のFlashプラグインをiPhoneでも使えるように、ということなら、まだ話はわかる。Appleもようやく頑なな姿勢を崩した、ということになり、そして更なる「完全なウェブ体験をiPhoneで」ってわけだ。

だが、この「Packager for iPhone」となると話は変わってくる。

このような製品が出るということは、つまり
「今後、iPhoneにFlashプレイヤーは搭載されない」
ということに他ならない、と私は考える。

まだ本来のFlashが搭載される可能性が少しでもあるなら、こんな製品など不要なはずだからね。

そして先日発表されたiPadにも搭載されていないことを、Adobe幹部自らがiPadのFlash非対応を批判することで、自ら明言してしまったという痛々しい出来事も記憶に新しい。

これはAdobeにとっては痛烈な一撃だっただろう。

appbank追記:恣意はありませんがこういうタイムリーな内容の記事もありましたね。
グーグルはクソ食らえ、アドビーは怠け者 « maclalala2

今後は更にiPhoneプラットフォーム(モバイル分野でiPhone、ホームユースでiPad)が加速度的に世間に浸透していくのは目に見えている。

自ら有料コンテンツの配信フィールドを有さないAdobeは、もはや「Packager for iPhone」に命運をかけるしかない。
つまり、Flashプラットフォームの生き残りを賭けた、Adobeの苦肉の策といえる。

まあ、百歩譲ってそれ自体はいい。
Adobeだって企業である以上、そういった努力はすべきだ。
それをダメだと言ってしまっては、あまりにも救いがなさすぎる。

しかし、だからといってPackager for iPhoneはiPhoneユーザとAppStoreのことを、ちゃんと考えていると言えるのだろうか?

まず、恐らくアプリ数の増加スピードは、飛躍的に加速されるであろう。

これ以上のペースでアプリが増え続ける必要性は、本当にあるのだろうか?

一見すると、アプリ数が増えることは良いことのように見えるが、それは市場が発達中の場合の話であって、今でも日々リリースされるアプリの数が止どまることを知らないAppStoreにおいては、一年前ならさておき、もはや当てはまらないと言っていいだろう。

そんな状況が何を生み出すのかは、AppBankの読者なら容易に想像できるはずだ。
今ですらアプリが多すぎてどれが良いアプリなのか、どんなアプリがあるのかすらよくわからないというのに。

こんな状況を考慮すると、Adobeの企業戦略に振り回されるのは、既存のiPhoneユーザであることは明白である。

また、一般的には無料でWebに公開されてることの多いFlashなので、「Packager for iPhone」で作成されたアプリも、恐らく無料アプリとしてリリースされることがほとんどなのではないだろうか。

それが意味するのは、「市場価格の更なる低価格化」である。

ユーザにとっては嬉しい話しかもしれないが、既存のiPhoneデベロッパーにとっては、今まで以上の死活問題にもなりかねない。

結局、得をするのはAdobeとFlash開発者だけで、既存のiPhoneユーザとiPhoneアプリ開発者は損をするだけ、ということになるであろう。


iPhoneアプリを作りたいFlash開発者は今こそ奮起すべき

では、Packager for iPhoneがなかったら、今後iPhoneアプリは増えないのか、という疑問も出てくるだろうが、その答えは「今後も増えるだろうね」である。
無論、数が増えるのは悪いことだけではない。
アプリの選択肢が広がるのは良いことだ。選択する術さえあれば、の話だが・・・

実はそれよりも重大な問題がある。
それが「iPhoneアプリとしての質」である。

Flashといえば、Webのコンテンツを素晴らしく見栄えの良いものに変えるのに最適な技術であり、素晴らしいゲームもたくさんある。
それは否定はしないし、事実、素晴らしいと思う。
しかし、それはWebとFlashの中での話であり、iPhoneアプリには直接通用しない。

iPhoneアプリには独特のUIと作法というものがあり、これを満たすことがもはや必須であり、逆に満たしていないアプリは激しいクレームの嵐に晒されてしまうだろう。

仮にFlashアプリに手を加えないでコンバートしたとしよう。
その結果は、果して幾多もある素晴らしいiPhoneアプリに引けを取らないものに果たしてなるのだろうか?甚だ疑問である。

もちろん、iPhoneアプリを意識したカスタマイズを施すことで、よりよいUIを実現したアプリに生まれ変わるのかもしれない。
だがそれは、「Packager for iPhone」の利点である

「簡単にiPhoneアプリを生成出来る」というポイントからすると、本末転倒なことであり、それなら最初からXcodeで作りなよ、と言いたくなる。

一番の危惧は、まさにこの点である。

誤解を恐れずに言えば、「Packager for iPhone」が注目されるということは、既存のFlashゲームをiPhoneアプリにコンバートするだけで簡単にiPhoneアプリにしてしまって、これを有料アプリにすればあわよくば儲かるかも?などと考えてるFlash開発者が、ひょっとしたら数多く存在するのか?ということだ。

そんな奴いないよ!
Flash開発者はiPhoneアプリの標準的なUIを満足した良アプリを作れるよ!
「Packager for iPhone」はそんな心配しなくてもちゃんとコンバートしてくれるよ!

というのなら、全く問題ない。
私が悪かった、陳謝する。

しかし、それなら尚更上で書いた疑問が矛盾に思えてならないのである。
それなら最初からXcodeで作った方が早いんじゃないの?と。

そんな、楽してiPhoneアプリを作ってAppStoreに依存して儲けようとか安易に考えてる開発者がそれほどいるとは思わないが、仮にそのような考えを持ってる人がいたら、忠告しておく。

iPhoneユーザを甘く見ない方が身のためだ。

恐らくそこに待ち受けてるのは、かつてないほどのアプリの洪水に飲み込まれながら、来る日も来る日もアプリをダウンロードし、不必要に見る目を醸成しているiPhoneユーザ達だ。
彼らの欲望は呆れ返るほど、とどまることをしらない。

iPhoneユーザをなめるんじゃない!!
痛い目に合うのがオチだぞ!!

Flash開発者がまずすべきことは、Objective-Cを学んでiPhoneアプリを作ること。
そしてiPhoneアプリの基礎を習得して、その上で「Packager for iPhone」を使って欲しい。

え?
そんな大変なこと、するつもりはない、と?

最初からそんな心意気なら、AppStoreに参入する資格も意味もないだろう。
どうせ成功などするはずもない。それこそ時間の無駄、というものだ。


新たなiPhoneアプリ開発者の誕生にエールを送る

新規の開発者にも、既存のFlash開発者にも言えることだが、iPhoneアプリをやりたければ、Objective-Cくらい覚えるべきだ。
大変勉強になるし、iPhoneアプリの設計思想を知るいい機会にもなる。
Flashほどではないだろうが、そんなに難しい言語ではない。

また、AppStoreはその程度のことすら出来なくて通用するほど甘い世界ではない。
Flashの素晴らしいコンテンツをiPhoneの世界に持ち込みたければ、奮起しろ!
それが出来ないなら潔く去るべきだし、それが出来ないというのなら、Flashが使えるようになると噂のAndroidのことを考えて、そちらに力を入れた方が身のためだ。
私ならそうするけどね。

否定的なことばかり書いてきたが、少しだけ補足をしておこう。
まず、技術者的な好奇心があることは認める。ちょっと気にはなる。
どんな風に開発出来て、iPhoneアプリとしてどこまでの動作が可能になるのか、非常に興味はある。
また、個人的、趣味的なFlashアプリをiPhoneでも使いたい、という用途なら、とても有効な手段だということも認める。
そんな、ほんのささやかな楽しい趣味程度のアプリ開発ならば、むしろ適していると言えるし、これを機会にiPhoneアプリ作成にも手を伸ばして頂きたい。

私はiPhoneアプリを作るのも、使うのも好きである。
なので、iPhoneアプリを作りたい開発者には、ちゃんと作って欲しいと思う。
また、市場やユーザを混乱させるようなことだけは絶対して欲しくない。
それが守られるのであれば、言うことはもう何もない。

共に、AppStoreという茨の道を歩んでいこうではないか!

[from 某なんとか仮面Z]

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