なぜAppleはサファイアクリスタルの生産に取り組むのか。その狙いは?

去る11月4日にアメリカのアリゾナ州は、Apple が新工場の建設を計画していることを明らかにしました。

Apple の投資額は5億7,800万ドルにもなります。工場では700人以上の従業員が働き、他企業と契約して「サファイアクリスタル」を生産する予定です。

サファイアクリスタルは傷に強く、iPhone 5 以降の機種でカメラの保護レンズに使われているほか、iPhone 5s の Touch ID センサーにも使われています。

iPhone 5s


とはいえ、今になって Apple がサファイアクリスタルの生産能力を強化しようとする理由は何なのでしょうか?

今回は「サファイアクリスタルとは何か?」をご紹介しつつ、「Apple がサファイアクリスタルの生産能力を強化する理由」を考えます。

サファイアクリスタルとは?

特徴その1:人工的に生産される物質である

サファイアというと宝石をまず思い浮かべますが、iPhone に使われているサファイアクリスタルは人工鉱物です。

人工鉱物とは、天然の鉱物と同じ成分・構造の物質を人工的に作り出したもの。そのために採掘することなく、工場で生産できます。

制約はありますが、様々な形のサファイアクリスタルを製造できます。

サファイアクリスタル


(画像引用元:HEM Sapphire for Optical Applications – GT Advanced Technologies)

特徴その2:傷つきにくい

傷つきにくさを表す単位としてモース硬度がよく使われます。ある物質を別の物質で引っかき、傷が残るかで傷つきにくさをランク付けしていきます。

例えば A を B で引っかいた時に傷がつき、逆のテストでは傷が付かなかった場合、A は B よりもランクが低いと評価されます。

サファイアクリスタルは、そのモース硬度で10段階中「9」に当たります。「10」のダイヤモンドに次ぐ傷つきにくさを持っています。

ただし「硬度」とは言うものの、一般的な意味での「硬さ」とは違います。サファイアクリスタルでも強い衝撃を与えると割れてしまいます。

Gorilla Glassとの違いは?

TechCrunch によれば、サファイアクリスタルの衝撃に対する強さは Gorilla Glass などの化学的に強度を高めたガラスの4倍になるそうです。

一方で、サファイアクリスタルは密度が高いので同じサイズでは重くなってしまうこと・反射率が高いこと・製造コストが高いことも指摘されています。

Appleが先行投資する「GTAT社」

話をアリゾナ州に建設される予定の工場に戻します。

今回 Apple が契約を結んだのは GT Advanced Technologies(GTAT)社で、これまでにもサファイアクリスタルの生産を行ってきました。

今年開催されたイベントでは、iPhone 5 にサファイアクリスタルから製造したスクリーンプロテクタを装着し、コンクリート片で削るデモンストレーションを行っています。

(動画は Pocketnow.com が GTAT 社のブースを取材したもの)

発表によれば、Apple は5億7,800万ドルを GTAT 社に先払いし、これを同社が2015年から5年にわたって返済するとしています。

このことから、Apple と GTAT 社は最低でも5年間はサファイアクリスタルの生産・販売の契約を結んでいることが伺えます。

Appleの目的は?

なぜ Apple は GTAT 社に5億7,800万ドルもの投資を行うのでしょうか。

サファイアクリスタルの安定供給

アメリカ国内に工場を設けることで Apple が生産工程・品質を監督しやすくなり、サファイアクリスタルを安定的に生産できるようになります。

これはサファイアクリスタルを Apple 製品に多用する上で欠かせない条件です。もし生産量・品質が不安定であれば、製品販売に影響するので多用はできません。

加えて、いわば「工場直送」なので安定した価格、しかも安価に大量のサファイアクリスタルを購入できると考えられます。

iPhone・iPad・Macに使う

サファイアクリスタルを安定して入手できるようになれば、iPhone だけでなく iPad や Mac でも使えるようになります。

例えば、Touch ID を iPad/Mac に搭載する・iPhone/iPad のスクリーンをサファイアクリスタルで製造することも可能になるかもしれません。

サファイアクリスタル


新製品に使う

Apple が開発していると言われる、ウェアラブルデバイス「iWatch」に使われるかもしれません。昨今では腕時計のように装着するものではと言われています。

サファイアクリスタルは、時計の文字盤を覆うガラス(風防)にも使われており、こうした用途にはピッタリと言えるかもしれません。

ただ iWatch は2014年発売と噂されており、後述するようにこの工場の稼働開始は間に合わないかもしれません。

工場の稼働は2015年から?

アリゾナ州の発表では「Apple が工場建設を計画中」とあり、GTAT 社の発表では2015年から Apple に返済を開始するとしています。

したがって、工場は遅くとも2015年には稼働を開始すると見られます。

サファイアクリスタル安定供給の影響が Apple の製品群に表れるのは、2014年から2015年にかけてかもしれません。

参考(順不同)

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