WWDCへ殺到する開発者達 後日レポート

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この記事は@hotmiyacchiからの寄稿です。先日公開したこちらのレポート(WWDC基調講演 全快ジョブス全開キーノート目撃談)も必見。

WWDCへ殺到する開発者達


目次

WWDCってどんなとこ?

ジョブスの今年のびっくりどっきりメカ紹介(キーノート)、から始まるサンフランシスコでのWWDC(World Wide Developers Conference)巡礼が終わりました。

総括すると「もっと日本勢にこの盛り上がりを伝えなければ!!」と思うことしきりなので、なんで高い旅費を工面してそんなところに行くのか、なにがメリットなのかを紹介したいと思います。

ジョブスのびっくりどっきりショー(キーノート)のおかげでWWDCの存在自体は広まってると思いますが、おそらく「わざわざ現地に行ってる人ってなにやってんの?そんなに祭りが好きなのかしら?」と素で思う人も多いんじゃないかと思いますが、平たく言えばWWDCとは朝9時から晩飯前の6時、月曜から金曜まで続くAppleの最新兵器(新型ハード・OSなど)の勉強会です。

勉強することは新兵器に限らず、いろんな開発のためのツボをAppleの開発者がまとめてアドバイスしてくれたり、プレゼン形式の勉強セッションの他に、いろんな分野の開発者が巨大なブースで待機してて、そこに直接自分のMac,ゲームを持っていって「ゲームプレイ中に減るバッテリー量を改善したいんだけど一緒に見てもらえますか?」とか相談することが出来たりします。

今年はどんな感じ?

WWDCへ殺到する開発者達


「当たり年だ!」初日を終わる頃には口々にそんな感想が漏れるほど充実したWWDCでした。

iPhone4/iOS4が切り開いたものの大きさたるや計り知れず、かつ、発表の段階で既に濃厚な成熟度を感じます。
ちなみにAppStoreという超革命が発表されたのもWWDC。その年のWWDCではAppStoreという革命に乗じる指南がいきなりその場でその週ぶっ通しで行われたと言えば、どれだけ重要な会合か想像しやすいのではと思います。

WWDCの意義

WWDCへ殺到する開発者達


近年のAppleの破竹の勢いを支える技術の面白さは、つくづく味わい深いことこの上ないもので、ちょっとiPhoneやMacのプログラムをかじろうとすれば、そのバックグラウンドの歴史の紹介から学ぶことになります。

かいつまんで言うと20数年前にAppleを追い出されたジョブスが再起を賭け、理想を追求して少数精鋭で作ったNextStepという会社のOSが今日の全ての基盤なのですが(そして、倒産間際のAppleに吸収合併されて現代のMac,iPhoneの基礎を全て作った)

その基盤を作った人たちは今なお現役で、彼らがなにを思いこうしたのか、どういう枠組みを考えて最小限で簡単に誰でも使えて素晴らしいパフォーマンスの環境にしたのか、そして現代にはどうした課題、応用、長所があるのかを生で直接プレゼンしてくれます。

織田信長とは言いませんが、武田信玄がなにを思って風林火山を掲げたのかを直接教えてくれるくらい、長い歴史と説得力の感動があります。

そんな中、とにかくみんなが前のめりになって勉強をします。

プログラムっていつも思うのですが、実際問題、勉強なんてそんなにしなくても、割と適当に出来るんですよね。

それでも、こんなにたくさんの人、どうみても僕より年上の人(ちなみに今36)が最前列で一生懸命ノートを取って勉強する姿を見ると胸が熱くなります。

なんでこんなに勉強するかというと


1.OSの意図を学ぶことで成熟したコーディングが出来る

成熟したコードって、そのまま読みやすい・分かりやすい文章と同じ意味を持ちます。

逆に未成熟なコードは読みにくくてわかりにくいです。

成熟と未成熟の違いはアプリの完成度にも関わるのですが、未成熟なコードだと誰が見てもわかりにくいので問題提起もしずらいし、なにより書いた人が見せたがらない傾向にもなって、完成度の伸びに欠けたものになりがちです。悪くすると誰も見たくなくなる死んだコードになります。

成熟したコードはいろんな人が目を通しやすく、その分改良・改善のスパンも早く、どんどん伸びていく、という寸法です。

iOSの成熟は20年前のNextStepから伝承されてるので、前述の通り、多くの人の目にさらされ、成熟したバランスを取ってきました。
OSになにかしら更新があったということは、そこには向上の意図があるわけで、その意図をプレゼンで聞くことで、「知らないうちの追加になってる部分があるけど、よくわかんないから使わなくてもいいよね」と下手すればなってしまうより、熱意あるプレゼンを見て理解を深めることで自分のアプリにも意図通りの向上をもたらすことが出来ます。


2.魔法のようなデバイス、を演出する方法を知る

WWDCへ殺到する開発者達


開発者ならわかる話、Appleのハードはどんなことでも簡単にユーザーに魔法のような体験をプログラムできる程パワフルなものではないです。

言うなれば、マジックの仕掛けセットがSDKなら、正しい仕掛けの使い方を知らねば観客を魅了するものを作ることが出来ないのと一緒です。

Appleはその点、観客はどんなことで冷めてしまうのかをとことん追求して、そうした失態がないことを前提に全てを設計してると言っても過言ではありません。

前述と同様、プログラムは割と簡単に誰でもできますが、魔法のようなプログラムを組むための方法論を共に学び、優れたショーを見せるアプリを知るのもWWDCの重要な一面です。

顕著に伸びる盛り上がり・顕著に減った日本勢

WWDCへ殺到する開発者達


今年の盛り上がりは昨今の市場の動向を見れば当然のように、例年からさらに加熱し5千人の参加枠が一週間で埋まる新記録の盛り上がりでした。この3年で参加の盛り上がりは数倍に跳ね上がってることになります。

当然ですがiPhone/iPadの普及台数は伸びるばかり、さらにiAdなどの新たな収入原理も導入され、慢性的な問題だった超競争過多に埋もれて収益を上げられず沈むという傾向に新たな突破口が作られたのと、その野心的な試みと導入の容易さ、新世代の市場体系を聞いて開発者達は一様にコブシを握りました。

iAdってナニ?って人も多いと思いますが、平たく言えばiPhoneアプリにテレビCM入れましょう、みたいな感じです。

知っての通り?iPhoneアプリは異常なまでに安いんですが、ほとんどの場合競争の流れで仕方なくやってるようなもんで、収益につながらない、赤字で撤退か倒産という実情も少なくないのですが、広告収益モデルはそんな状況に新たな突破口をもたらす新世代の仕組みです。

広告収益モデル自体は既にあるんですが、ある程度高額な商品で十分な経済循環を起こさないと、開発者に十分な予算がバックできなくなっちゃうので、従来、広告代理店はそうした商品の広告を獲得する役割であったのですが、これからはそれをAppleが一手にやります、という新世代戦法がiAdです。

端的にいえばテレビと同じ原理で広告収益でアプリ制作が出来るようなものなので、昨今のタダみたいな料金で厳しい生活や戦いをしてる開発者達に、タダみたいな値段のままでもやってけるようになるオプションのようなものです。

もっと言えば今回は発表されなかったですが、AppleTVなどにもiAdが搭載されれば、iTune上でタダのドラマコンテンツやゲームアプリが流通する=70年近い天下のテレビの仕組みと大激突の原動力でもあります>iAd

そんな鼻血モノの次世代決戦プランは世界から集まった血気盛んな開発者の目を充血させましたが、あれ?日本人少なくない??というのも今回のWWDCの傾向の一つでした。

っていうか日本人少なくなりすぎたせいか、なんか凄く日本人だけで同盟的に固まってた気がします(^^;

参加者が減る理由のひとつはゴールデンウィークの直前にWWDC開催告知があって、会社の承認がもたついて締め切られた、という意見と、もう一つは、、、、日本はちょっと特殊な地域性だからじゃないかな、、という意見を聞いて、少なくなる日本人開発者の集いで危機感を感じさせられました。

AppStoreでやってくには応援のレビューが原動力

これは私の1開発者として聞いて欲しいお願いでもあるのですが、開発者の集うカンファレンスでは一様に問題提起の声があがっても公では言いずらいことで、日本のアプリ市場にはちょっと残念な、そして開発者には厳しい影響を与える悪のり的なレビューが世界でも突出して多いのに悩まされがちです。

たまにアプリのレビューで、私の関わったものに限らず、高評価は身内の自作自演だろ、乙!とか、いわゆる2ちゃん的な煽りで☆ひとつをつける人を見かけますが、そういう日本特有の悪のりで評価が他の国に比べて目に見えて減ってしまう=ダウンロードも減る=プロジェクトの進行に直接、深刻なダメージがあり、顕著に減る日本人開発者を見るに、こうした実情の理解がないままだとやばいんじゃないかという危機意識は今年はいっそう高まりました。

気に入って応援してくれる人に反発して「どうせ身内だろ、☆1」という悪のり的なレビューが出るのは世界でも日本だけなので、全世界の集計を見る側から見れば、地元にそうした風潮があるのは大きなハンデになってしまっています。

AppStoreは商品を買う唯一の棚にユーザーの声を直接書くので、こうしたレビューを棚に書き込まれると感覚的には1970年代に頑張って屋台のラーメン屋開いたら暴走族がやってきてどんぶりにゴキブリ突っ込まれて「なんやこれはわれぇ!?」と常に暴れられてるような感じなんですが、当時の暴走族は取り締まられたりしましたが、ネットの世界の対応は一端そうした風評が発するとほとんどの開発者が屋台がぼろぼろになってくのを血の涙を流して見るだけというようなネット治安の悪さでもあり、開発者の成長のチャンスを潰してしまいかねません。

そうした傾向と問題意識は開発者の集いで語られるのですが、問題の理解を得ることはずっと課題のままでもありますし、諸外国に比べて実情の理解を促す情報はこれまで少なかったのではないかとも思います。

先ほど開発者を屋台のラーメン屋と例えましたが、iPhoneのアプリ開発者は多くても3人くらいの小さい会社は非常に多く、それだけで十分に優れたアプリが作れるのもプラットフォームの魅力です。

会場では気さくな人も多く、ランチのテーブルについた人同士、簡単な自己紹介をしてちょっとでもマッチする分野があれば、あわよくば一緒に働かないかともちかけたりすることもザラです。

WWDCへ殺到する開発者達


WWDCへ殺到する開発者達


会場にあるホワイトボードには誰が促すともなく、求人や自分がやってることのPR、有志を募るための連絡先が書き込まれており、独立系(=屋台クラスの会社)達が協力や応援をしあうことはWWDCの大きな意義の一つです。

そうした屋台クラスの会社のアプリを応援する文化は日本より諸外国のが充実してる面があり(逆に言えば日本は前述のような傾向に潰されがち・・・)、アメリカを始め、各国でユニークな味わいのある独立系のアプリが次々と注目を集めていますし、そうした実情により、上記のホワイトボードを賑わすような小さい会社からの参加が非常に活発です。

こうした違いを見ると、日本からももっともっと、WWDCに出てアプリを磨く術を学んだり、ユーザーの皆様にももっともっと応援をいただけるような流れを作る必要がある!と思うことしきり、ちょっと脱線で恐縮ですが、こんな提案をしてみたいと思います。

日本を強化するためのレビュー

開発競争の重要な起点となるWWDCに参加するのは高額な旅費が生じるので、WWDCに行く参加者を増やすには、より厚い応援をいただく流れが不可欠。恐縮ながら、こうした流れにご賛同いただければ、来年の参加者増え、アプリの質も高まるのではというポイントをいくつかお話させてください。

こんな理由で低いレビューを付けると損ばかり

「概ね気に入ってるんだけど、これがないから嫌だ、対応して!☆一個!」というレビューをたまにみかけますが、強烈に開発に負の影響を与えてしまいます。
低い☆評価は投票として辞任を要求してるようなものなので、「XXを作って欲しい、でもその前に辞任もして欲しい」という矛盾で、ホントに要望が欲しいなら☆一個というくくりは、開発停止につながる逆効果です。

開発側の理想を言えば、要望・苦言の場合はサポートに連絡し、人にお勧めできると思ったことはレビューに書いていただくのが全員が迅速に得をする流れです。
そうすることで経済効果は高まり、対応への余裕を得ることも出来るようになります。

実際のところ開発者のほとんどがじり貧でなけなしの予算や自腹出血でやってるので、☆一個という強烈な宣告を受けながら、対応をすればレビューが改善するのかどうかを暗中模索で進む、というのはかなりハードルが高く、気持ちがへし折れる例も少なくないと思います。
飢餓に苦しむ人が非常に多い市場なので、ご要望の際には声援を添えていただくと対応の糧・原動力になると思っていただければ幸いです。

愛用してるアプリはたまにストアでチェックして上げてください

もし、応援してる、愛用してるアプリがストアで前述のような日本特有の煽りを受けてるのを見かけた場合、反論や議論などはもちろんすべきではないのですが、もしまだ未レビューだった際には、是非正しい気持ちでレビューや☆を投稿してあげてください。

人間、流れには逆らえないモノで、三つくらい負の流れが続くとあとはそのまま悪い方へ行ってしまいがちなのですが、ほとんどのアプリは人に役に立ち愛用されるのを願って作られてますし、実際に使用をしているアプリが負の渦に巻き込まれても誰も得をしません。

応援をしてそのアプリの作者がWWDCへ行ってより成長をすれば、もっと良いアプリをもたらしてくれます。

目の肥えたユーザーの多い日本だからこそ厳しいレビューも多いとは思いますが、現代では不利な点も多く、そんな中でも世界に出れる面白いモノを作りたい屋台のラーメン屋レベルからのスタートをする人も多いので、そうしたベンチャーを支援する声こそ、来年のWWDC参加者にダイレクトに影響すると思います。

よりよい関係・応援の輪のために

ちょっと脱線が長かったですが、是非日本でも、諸外国のようなユーザーと開発者の良い協力関係を発展させたいと願うのと、やはり日本では「お客様は神様」の格言通り、開発者は一歩も二歩も引いて、逆に理解関係を作るための意思表示も少ないとも思います。

近年Twitterなどで理解関係も充実をし始めてると思いますが、日本的なネガティブな風潮に負けないためにも、理解と応援、そして期待に応える循環を強化しなければ、日本勢が少なくなりゆく危機はますます高まると思って、提案を上げさせていただきました。

これから出るiOS4/iPhone4そして続々と出る新ガジェットをより楽しむためにも、是非開発者へ暖かい応援をよろしくお願い致します!

iOS4/iPhone4へ

WWDCへ殺到する開発者達


間違いなくiPhoneやiPadは未来のコンピュータ、OSの進化形に発展し始めました。

従来のiPhoneでも十分に「なんて未来的なんだ!」と思う体験はしこたまあると思いますが(お店で流してる音楽にiPhoneをかざして曲名がわかったり、撮った写真が瞬時に加工出来たり)、iOS4の進化の過激さは相当なもので、マルチスレッドサポートに並んで、マルチスレッドプログラミングが劇的に強化されました。

一概に「処理速度が劇的に向上」と言われても、その恩恵がいまいちピンとこないというか、ここ数年のパソコン的には「複数のアプリを起動してももっさりしなくなった」が処理速度の恩恵の具体的な感想という人も少なくないと思いますが、iPhoneでは劇的にクリエイティブな開発者が増えてるので、前述のようなこれまでは夢だったあれこれがさらに圧倒的に実装しやすくなりました。

カメラで捉えた映像をリアルタイムに解析したり、合成したりのARは新次元の精度になるでしょうし、早ければ来月にでもiPhone4とiMovieだけで撮影・編集した短編映画が世界中からわき出るんじゃないかと思います。

既にユーザーのコンピューティングへの要求は机の前に座ってリッチなグラフィックを見たり、表計算をしたりするだけに収まらず、モバイルでいつでもさっくりソーシャルネットに繋がったり、目の前の風景を表現豊かにカメラに納め好きなように編集したり、聞きたい音楽や新しいコンテンツの楽しみを出先でも自由に探したりするレベルに変わってしまいました。

そうした次元でまだ実現されてない、未知の便利、楽しみは無限にある中、挑戦と創造をする楽しみと、その基盤となる技術を学ぶ会、同士と交流・協力する機会を得ることはより重要になりますし、その中心のWWDCへの開発者の殺到ぶりは凄まじいものがあります。

殺到する人達、というとガチムチのでっかい外人のおっさんばかり、というのが去年の印象だったのですが、今年はなんか、、、なんか、、美人がやたら増えてた気がしました。いや、確実に女性が増えてて、しかもなんかかっこいい人、美人の人が多かったです。

Appleの引力は日増しに強くなりますが、こんなに老若男女が肩を並べて必死にノートを取り合う場、ということ事態、なんかエネルギーに満ちてる気がしました。
とあるセッションでは隣でインド系のすらっとした女性がチョコレートケーキをぱくぱく食いながらノートをばしばし取ってるのがなんか不思議でした。

iPhoneのオープンな開発環境は今まで想像も出来なかった層をどんどん開拓してるんだなぁと実感する出来事の一つでした。

来年のWWDCへ

iOS4・iPhone4、伸び続ける普及台数と共に、開発者はオーディエンスの方がたにとって口コミし甲斐のあるより楽しい体験創出をし続けるでしょうし、iAdなどの挑戦的枠組で、利用者にはどんどん安価で充実した環境が行き渡ると思います。

そうした夢のような好循環を発展させるためにも、お互いの応援の輪をどんどん広げていきましょう。願わくば日本からのWWDC参加者が3倍となるように!!


こちらのレポートも必見: WWDC基調講演 全快ジョブス全開キーノート目撃談

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