時価総額40兆円、インテルやサムスンが頼る「半導体産業の最重要企業」ASMLの全貌

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ITバブル崩壊からの劇的な復活を遂げるASML


ITバブルは、2000年代初頭についに崩壊し、株式市場全体、特にハイテク企業に打撃を与えました。

チップ業界は好景気と不景気のサイクルを繰り返すことが多いため、ASMLは景気後退を予想していました。しかし、不景気は予想よりはるかにひどいものでした。

ASMLは、投資家に対して2001年の売上は2000年とほぼ同じになると説明していたため、期待値を抑えていました。しかし、2001年3月になると、売上高の目標を超えることが不可能であると明らかになったのです。

ASMLは新たな契約を凍結、既存の契約を完了させることだけに集中しましたが、企業は次々と契約から手を引いていきました。

例えば、インテルは1億ドル(約130億円)の発注を取りやめました。


2001年末には、売上高は2000年の31億ユーロ(約4,000億円)から18億4000万ユーロ(約2,500億円)へとほぼ半減してしまいました。

ASMLも4億2240万ドル(約560億円)の損失を出してしまいました。

当然、株価もよくありません。2002年10月までに、ASMLの株価は2000年のピーク時から90%もダウンしていました。


厳しい下落にもかかわらず、ASMLは最終的に回復し、史上最高値を更新したことを考えると、業界の他の企業よりもずっと良い結果を出しているといえます。

しかし、2000年代初頭、ASMLは悪化の一途をたどっていました。

2001年末、ニコンはASMLを相手取って特許侵害訴訟を起こしたのです。ニコンは、ASMLがマイクロリソグラフィ装置に関する7つの特許を侵害していると主張しました。

ASMLは、ASMLの特許を侵害したのはニコンであるとして、2002年4月にニコンを反訴。しかし、これはASMLにとって良い結果にはならず、最終的にはASMLがニコンに8700万ドル(約100億円)を支払い和解に至りました。


この訴訟の後、ASMLの状況はようやく好転しはじめます。

ASMLは、画期的なデュアルステージ技術を採用したツインスキャンシステムの出荷を開始し始めました。


このシステムを使えば、ウェーハを測定し、位置合わせをしてから露光するという2つの工程を同時に行うことができるようになりました。

この技術により、より小さなチップをより早く、より効率的に生産することが可能になったのです。

また、ASMLは2010年に最初のEUV露光機「NXE 3100」を出荷し、それ以来、EUV露光のリーダーとしても活躍しました。


さらに、新技術の展開とは別に、ASMLは水面下で企業買収を進めていました。

例えば、2001年にはシリコンバレーグループを16億ドル(約2,100億円)で買収しました。

同様に2007年には、Brion テクノロジーを2億7000万ドル(約360億円)で買収しました。そして2013年にはCymerを25億ドル(約3,300億円)で買収しています。

これらすべての買収により、ASMLは2013年半ばにはITバブルのピーク時の水準に戻ることができました。ただ、ASMLの勢いはまだ始まったばかりです。


過去5~7年間、ASMLがこれまで以上に好調なのは、3つの主な理由によって半導体産業がこれまで以上に好調だからです。

2017年、AMDはRyzenのプロセッサーを発表し、ゲーミングコンピューターをこれまで以上に手頃でパワフルなものにしました。

これにより、より多くのゲーマーがPCマスターレースに参入し、CPUとGPUの需要を大幅に増加させました。




同じ頃、ビットコインは2万ドル(約260万円)へと上昇しました。この時点で、ビットコインのマイニングにGPUを使うことは、すでに意味をなさなくなっていました。



しかし、イーサリアムのマイニングにGPUを使うことには意味があります。そして、イーサリアムのマイニングが有益であったため、マイニング業者はGPU市場全体を買い占めました。

NvidiaはGPUの需要の大きさを見て、2000シリーズの発売で大幅な値上げを決定しました。そして、この価格は一度も下がっていません。


さらに、パンデミックによって供給不足をもたらし、サプライヤーは価格を上げ、利益率を上げることが容易になったのです。

この半導体ブームを考えると、ASMLの売上と利益が数倍に伸びたと聞いても、驚くことはありません。


2010年代半ば、ASMLは毎年60億ドル(約8,000億円)から70億ドル(約9,000億円)の収益を上げています。直近の12カ月間では、200億ドル(約2兆6千億円)以上の収益をあげています。

同様に、2010年代半ばには、ASMLは毎年約15億ドル(約2,000億円)の純利益をあげています。直近の12ヶ月では、ASMLは64億ドル(約8,600億円)の純利益をあげています。


テック系メディア「wccftech」によれば、チップ製造の歩留まりに悩まされるサムスンのCEOは最近、ASMLを訪問するため自らオランダへと飛んだとのこと。また、世界最大のチップメーカーであるインテルも、このASMLが製造する最新装置の獲得に向けた取り組みを強化しています。

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