人間が生態系に与える影響は、時に予想外の結果をもたらします。その一例が、中国で行われた大規模な「スズメ駆除」です。農作物を保護するために行われたこの計画は、実際には大飢饉を引き起こし、数千万人の命を奪う結果となりました。この歴史的な出来事について、詳しく解説した記事が「History Defined」に掲載されています。
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大規模なスズメ駆除が引き起こした弊害
毛沢東は、中国の田舎の農民や労働者を味方につけ、実権を握った人物です。自身も農民出身だった彼は、中国の人々のために都市と農業の大改革を実行に移しました。
1958年から1962年にかけて、中華人民共和国は「大躍進」(第二次五カ年計画)という構想を掲げました。この中で、毛沢東主席が最初にとった行動のひとつが、「四大害虫運動」です。
四大害虫に指定されたスズメ
四大害虫に指定されたのは蚊、ネズミ、ハエ、スズメ。前者3つは病気を媒介することが知られていましたが、スズメは当時「米を大量に消費する」と考えられており、食糧の増産に力を入れていた中国政府にとって不都合だったのです。
1959年には、中国国民がスズメを狙うことに参加することを義務づける法律が早々と成立した。全国各地でスズメが巣で休めないように、人々が鍋やフライパンをぶつけ合いました。巣は破壊され、見つけた鳥は殺され、自然の生息地から追い出され、より安全な場所を探しました。
— 出典:History Defined
北京のポーランド大使館は、スズメ駆除への協力を拒否し、残ったスズメの避難所となりました。しかしそれでも、スズメの駆除を実行する手は止まらなかったそうです。
大使館を取り囲んで2日間太鼓を打ち続けた後、スズメは大使館の塀の中で力尽きたように死んでしまった。ポーランド人は、大使館内のスズメの死骸をシャベルで取り除いたと語っている。
— 出典:History Defined
毛沢東は、スズメ1羽につき年間4キロの米を節約できたと確信していました。しかしこれが、稲作にとってさらに破壊的な問題を引き起こしたのです。
スズメ排除によって発生した大飢饉
スズメは、農作物を荒らす多くの昆虫の捕食者です。その中に含まれるイナゴは毛沢東の害虫リストには入っていなかったものの、それはスズメが穀物と一緒に食べ、昆虫の数をコントロールしていたからでした。
1年後には、他の豊かな社会変化とともに約束された大躍進が、期待通りの成果をあげているとは言い難い状況になっていました。米の生産を中心に大飢饉が起こり、1500万〜5500万人の死者を出したのです。
結果的に政府は、生態系の崩壊を食い止めるため、ソ連から25万羽のスズメを再導入することになりました。
同様の例は他にも
このような問題が起こったのは中国だけではありません。アメリカのイエローストーン国立公園でも、オオカミを絶滅させ、他の問題を起こした例があります。
イエローストーン国立公園で野生のオオカミが殺された最後の公式記録は1926年であった。その後、オオカミの獲物となっていたワピチ(アメリカアカシカ Cervus canadensis)や他の動物が増加し、その結果、植生に被害が出た。オオカミが果たしていた捕食者としての役割の一部はコヨーテが果たすことになったが、成獣のワピチはコヨーテの捕食対象にはならず、またオオカミと並びイエローストーンの生態系の頂点を成していたグリズリーは雑食性であり、ワピチを捕食する割合は低く、いずれもワピチの増加を制御できなかった。
— 出典:Wikipedia
さらには、コヨーテの個体数が増加したことによって、コヨーテより小さな動物、特にアカギツネが減少してしまった。なおアメリカでは、生態系を回復させるため、約20年間をかけてオオカミの再導入が行われました。
「History Defined」は、地球の生態系について「機械の歯車が動くように、すべての面が一体となって機能しなければ成り立たない」と指摘しています。害をなすと思われていた生物の減少が、思わぬ問題をもたらす可能性は常にあるのです。
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