iPhone 5 に使われるかもしれない「リキッドメタル」とは?

2010年8月に Apple はリキッドメタル・テクノロジ社から、同社が開発した「リキッドメタル」を電化製品に限って全世界的に独占使用する権利を購入しました。

それから1年と8ヶ月、6月に開催される開発者向けイベント WWDC を前に iPhone 5 にはリキッドメタルが使用されるのではないか、という噂が出てきました。

そこで気になるのが「リキッドメタルとは何か?」「何故リキッドメタルを使う必要があるのか?」ということ。

この2つの疑問を解決すべく、今回はリキッドメタルについて調べてみました。

リキッドメタルはアモルファス合金の一種

「リキッドメタル」はリキッドメタル・テクノロジ社が販売する商品の名前です。その材質からアモルファス合金の一種だと考えられています。

アモルファス合金は一般的な合金とは異なり、原子の配列が不規則です。この原子の配列が不規則というのは通常、固体ではなく液体に見られる現象です。

これによる利点はいくつかありますが、特に大きなメリットは2つあります。第一に高い強度を持っていること。第二に加工がしやすいことです。


高強度である理由

それは金属で発生しやすい結晶の変形がないからです。結晶が変形してしまえば、物質そのものも変形してしまいます。

また、物質を固体として成立させている結晶構造の欠陥や異常も変形の原因となりますが、そもそも原子の配列が不規則なのでこれも起きません。

また、同様の理由から折り曲げへの耐性にも優れています。


加工がしやすい理由

アモルファス合金の中には一定の温度でガラス転移が生じるものもあります。これを金属ガラスと呼びます(窓などに使われているガラスとは異なります)。

ガラス転移とは溶けたガラスのようにその素材が柔らかくなることです。ガラス細工を想像すると分かりやすいですが、こういった状態では素材が加工しやすいのです。

中には吹き込み成形が行えるアモルファス合金もあります。吹き込み成形とは、熱した液体状の素材を型に流し込み、高圧の空気を送り込んで、その型の形に成形する技術です。

この技術はプラスチックやガラスの成型によく利用されていますが、ガラス転移を起こすアモルファス合金でも同様にこの技術が利用できます。

これによる利点はつなぎ目の少ない金属が成形できることにあります。

例えば iPhone の背面と側面を1つのアモルファス合金のボディで構成する、といったことも可能になるのです。


リキッドメタルの特徴

リキッドメタル・テクノロジ社のウェブページには8つの特徴が紹介されていました。それらを1つ1つ見ていきましょう。


1. 高い降伏強度を持つ

降伏強度とは、元に戻らない変形が生じることなく、その物質にかけられる力を指します。これが高い、つまりリキッドメタルは元に戻らない変形が生じにくいと言えます。

ただし、元に戻らない変形が生じにくい=元に戻るような変形が起こりにくいではありません。


2. 高い硬度を持つ

硬度は物の硬さを示します。これが高いということは硬いということです。


3. 重量あたりの強度が優れている

従来の金属に比べて、軽くても一定の強度を保てることを意味します。

リキッドメタル・テクノロジ社のウェブページによれば、同じ重量のアルミ合金に比べて2倍の強度を持っています。


4. 弾性限度が優れている

弾性限度は降伏強度に似ていますが、材料工学の見地からすると厳密には異なるものであるようです。ただ、一般的には降伏強度と同義であると捉えても良いようです。


5. 高い耐食性を持つ

腐食に強い、つまりさびにくいということを意味します。


6. 高い耐摩耗性を持つ

削れにくい、つまり簡単には傷が付かないということを意味します。


7. 独特の音響学的特性を持つ

金属にはその種類に応じた、音響学的特性があります。ただ、この特性がどういったものなのかはよく分かりませんでした。

また、たとえそれが素晴らしいものであったとしても、それが次期 iPhone においてどのように作用するのかも不明です。


8. 成形収縮率が低い

成形する際は物質を熱するので膨張します。成形後に型から取り出すと冷却されるので、その物質は収縮します。この収縮の割合を成形収縮率と呼びます。

これが低いということは、成形後の完成品に歪みが少ないということも意味します。よって、収縮率を厳密に計算した上で成形しなくても、設計に近い完成品が生産できます。

生産面においても扱いやすいということですね。


リキッドメタルが iPhone に採用される理由

次期 iPhone でこのリキッドメタルが利用されるとすれば、どのような理由が考えられるでしょうか。上記8つの特徴から考えてみます。


1. 重量を軽くするため

これは3番目の特徴「重量あたりの強度が優れている」に関係します。

パーツに金属を使用するということは、その部分に通電させたい・アンテナとして利用したいからという他に、その部分に強度が欲しいからです。

リキッドメタルはこの3つの条件を満たせると考えられます。特に強度については、同じ重量のアルミ合金に比べて2倍の強度を持っています。

そんなリキッドメタルを採用すれば、その使用量は単純に考えてアルミ合金の2分の1で済むわけですから iPhone の重量を軽くすることが可能ではないか、と考えられます。


2. 今までとは異なるデザインにするため

これは8番目の特徴「成形収縮率が低い」に関係します。

例えば iPhone のデザイナーが他には類を見ないデザイン案を制作したとします。しかし、そのデザインの iPhone を構成するパーツを大量生産することが難しければ、製品化は不可能です。

その意味で加工がしやすく、成形後の歪みも少ないというリキッドメタルの特徴は有利に働きます。これは大量生産にも向いているという特徴でもあります。

よって、次期 iPhone は今までの金属では生み出せなかったデザインのものになるのかもしれない、と考えることもできます。


3. 壊れにくくするため

これは1番目の特徴「高い降伏強度を持つ」と3番目の特徴「重量あたりの強度が優れている」、そして6番目の特徴「高い耐摩耗性を持つ」に関係します。

リキッドメタルは重量あたりの強度が高く、そして耐摩耗性にも優れています。例えばこれをバックパネルに使った場合にはへこみにくく、傷つきにくいものになります。


リキッドメタルは iPhone 5 に使用されるのか?

その可能性についてはまったく予測がつきません。

ただ、Apple が電化製品についてはリキッドメタルを全世界的に独占使用できる権利を持っていることは確かです。故に、その権利が切れるまでにリキッドメタルが Apple のいずれかの製品に採用される可能性は残っています。

逆に考えてみると、他社にリキッドメタルを利用されたくないがためだけに Apple がその権利を買い取ったという可能性もなくはありません。

今後の動向に要注目です。


参考(順不同)

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