スティーブ・ジョブズが会社の命運を「トイ・ストーリー」に賭けたワケ

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倒産寸前のピクサーを救ったジョブズの巨大な賭け


ジョブズは、もしピクサーの運営にどれだけのコストがかかるかを知っていたら、最初から買わなかったと認めています。しかし、幸運なことに、ピクサーの創業者の一人であるジョン・ラセターが、独自のビジネス戦略を考えました。

それは、ピクサー自身が開発した3Dアニメーションの技術を使って短編映画を作るというものです。

制作した作品の中には、アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた「ルクソJr.」や短編アニメーション作品として初めてオスカーを受賞した「ブリキのおもちゃ」などがありました。


そして、ジョブズはピクサーの社員の可能性を見て、自分たちが持っているアニメーションの技術を、既存の映画会社に売る必要はないと気がつきました。

その後、ジョブズはピクサーのハードウェア部門を200万ドル(約2億5千万円)でバイアコムに売却しました。なお、この会社は、数年後に倒産してしまっています。


その後のピクサーは、ショートフィルムやコマーシャルで収入を得ることに専念します。しかし、それでも会社の運営費を回収することは出来ませんでした。

そこでジョブズは、ピクサーの歴史上、最も重要な取引を行います。それは、ディズニー社と2,600万ドル(約33億円)の契約を結び、ピクサー初の長編映画3本を制作するというものでした。


ディズニー側としては、自分たちの映画にこのような3D技術を導入する前に、ピクサーを使うことで観客の反応をテストしたかったのです。

そうしてピクサーの制作チームが手掛けた映画が、かの「トイ・ストーリー」です。これがその後、ピクサーを代表する作品となります。


一方、ジョブズは財務責任者のローレンス・レヴィを雇い、株式公開に向けた組織再編成を行いました。


ジョブズは、「トイ・ストーリー」の公開の直後にIPOの日を設定しました。つまり、映画が成功すれば会社も成功し、映画が失敗すればピクサーも潰れてしまうリスクを背負うことを意味します。

これは、まさにハイリスク・ハイリターンの賭けです。しかしジョブズにとっては、何百万ドルも費やした赤字の組織が「利益を生み出せる会社」に生まれ変わる絶好のチャンスだったのです。

幸運にも、「トイ・ストーリー」は公開週末だけで3,000万ドル(約38億円)、最終的には全世界で3億6,500万ドル(約460億円)を稼ぎ出すことが出来ました。

これは、ピクサーの株式公開が成功することを意味し、株式は高い人気を誇り、上場は成功したのです。


上場初日、ピクサーの株価は39ドル(約5,000円)で評価額は15億ドル(約1,900億円)でした。しかし、それはジョブズにとって、ほんの始まりに過ぎませんでした。

ピクサーは、ディズニーとの契約により、映画のライセンス収入で損をしていました。そこでジョブズは、5本の映画のライセンス契約を結び直し、コストと利益を両社で均等に分け合うことにしたのです。

これにより、ピクサーは大ヒット作を出す度に多くの収入を得ることができるようになりました。

2002年、この契約が切れると、ジョブズは再びピクサーの成功に乗じて、ディズニーとより良い契約を結ぶための交渉に乗り出しました。しかし、ディズニーの当時のCEO、マイケル・アイズナーは、この新条件に同意しませんでした。

そこでジョブズは、両社の提携を解消することを公言しました。しかし、2005年にディズニーのCEOがボブ・アイガーに変わると、状況は一変します。


アイガーはディズニーのアニメーション部門が低迷している中で、ピクサーの「ファインディング・ニモ」や「インクレディブル」が人気があることを認識していました。そこで、ディズニーのアニメーションを強化するには、人気作品を作るピクサーを買収するのが手っ取り早いと考えたのです。


アイガーはジョブズに「とんでもないアイデアがあるんだ」と買収案について話しました。ジョブズはこの話に合意し、最終的に74億ドル(約8,000億円)という金額で売却されました。

そして、ジョン・ラセターとエド・キャットマルに相談し、両者とも同意した上で、ジョブズは2006年1月にピクサーをウォルト・ディズニー・カンパニーに譲渡しました。

ジョブズはピクサーのCEOではなくなりましたが、ディズニーの取締役に就任し、7%の株を手に入れました。つまり、ジョブズはディズニーの筆頭株主となったということです。


Appleを追われたジョブズは暗黒時代に、ジョブズはネクストとピクサーという2つの会社を立ち上げ、そしてAppleとディズニーという世界で最も価値のある2つの会社で素晴らしい地位を確保したのです。



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