ロシア経済は「史上最悪の制裁」で崩壊するのか?

ウクライナを侵攻したことによって、ロシア経済はどのようになってしまったのか?


クレムリンがロシア経済の大部分を強力にコントロールしながら「プーチンの視線」を浴びない程度に、中小企業が成功を収める方法はまだありました。

かつて、ロシアと西側諸国との関係が比較的友好的であったため、ネスレ、イケア、H&M、アディダスなど数百の西側諸国企業がロシアに進出し、拡大する中産階級にサービスを提供しロシア経済を活性化させていました。


しかし、ロシアのウクライナ侵攻は、外国企業による前例のないロシアからの撤退を引き起こしました。結果として、ロシア経済にとって推定2,000億ドル(約25兆円)相当の収益が引き揚げられたといわれています。


主な撤退内容としては、ネスレがロシアに定期輸入していた商品の大半を販売停止することや、ブリティッシュ・アメリカン・タバコはロシアでの事業から完全に撤退をするなどです。また、フィリップ・モリスはロシアでの製造を縮小し、ロシアへの投資を停止しました。


さらに、T.J.MaxxとMarshallsのオーナーであるTJXは、ロシアでの生産を縮小し、今後の投資も停止しました。またTJXは、ロシアで人気のオフプライス小売店であるFamiliaの株式も売却しました。

続いて、H&MとNikeもロシアでの販売を完全に停止しました。

ロシア国民にとって最も衝撃的なのは、トラックスーツを含むアディダス製品の販売停止でしょう。


また、ロシアの金融業界では、大手外資系企業の撤退が相次ぎ、大きな打撃を与えました。

フランス第3位の銀行であるソシエテジェネラルはロスバンクの株式を売却し、ロシアの金融機関は33億ドル(約4,000億円)の資本を失うことになりました。


ドイツ銀行もロシアでの事業を縮小しました。そして、顧客がロシア国内での事業を停止することを支援しています。

ゴールドマン・サックスもロシアから事業撤退し、その数時間後にJPモルガンも続きました。


また、American Express、MasterCard、VISAは、ロシア国内で発行されたカードはロシア国外では使えないと発表し、海外に行こうとしているロシア人に痛烈な一撃を与えました。

そして、ロシア国内で発行されたカードは、ロシア国内でも使えないようにしたのです。


ロシアでは外国企業が大量に流出し、数十万人の雇用が失われ、3月に過去最低を記録した失業率は、さらに9%以上に急上昇しています。


制裁の影響で、ロシアの労働市場は大きな被害を受けました。そして外国企業の流出によって小売店の売上が10%減少したため、失業率が5%を下回ることは何年もないと予想されています。


これに対してロシア政府は、緊急給付金、臨時雇用、公共事業などに390億ルーブル(約800億円)を割り当て、大量の失業による経済的打撃を食い止めようとしています。


これは2008年の金融危機の際に雇用プログラムや給付金に数十億ドルを投資したアメリカのような国が行うと効果的な戦略です。


しかし、今のロシアのような国が行っても、1億4,400万人の国民にとって390億ルーブル(約800億円)の支援は微々たるもので、外国からの投資やビジネスがすぐに戻ってこない以上、その資金もわずか数ヶ月で尽きてしまうでしょう。


外国企業のロシアからの撤退の影響を抑えるために、クレムリンはかつて外国企業が運営していた多くの企業を国有化しました。

マクドナルドの店舗は、新しい国営の家族向けレストランのアンクル・ヴァーニャに引き継がれることになっています。

その目的は、欧米企業の突然の撤退による出血を止めることです。そして外国人経営者と債権者を置き換えて、雇用と収入を維持しようとしているのです。


ロシアは、「ロシアやその国民に敵対する」と見なされる企業の著作権や知的財産権を尊重しないことを決定しました。そのため、知的財産権に関する懸念は完全に無視されています。


しかし、ロシアの外貨準備金が凍結されているため、外国企業が出資していた膨大なビジネスは制限されています。

当然マクドナルドやKFCに行くのは、その店の味を好むからで、経営者が代わり、全く別の商品を提供する店では、人気は上がりません。


しかし、最も懸念されることは、外国の企業や投資家が、いつかロシアに再進出することを躊躇していることです。

なぜなら、クレムリンが、著作権法や知的財産保護法を完全に踏みにじるようなことをしたからです。

政府が他人のアイデアや製品を盗んで、国内の国民に与えるという恐れがあれば、外国企業や投資家はロシアに多額の資金を持ち込む動機がなくなります。

つまり、ロシアは今後、大企業や投資家を誘致し、近代的で前向きな経済を構築することが非常に難しいということです。


それどころか、西側がイノベーションで世界をリードし続け、ロシアは西側の製品やアイデアの単なる消費者であり続けるという未来が待っているかもしれません。

ロシアの状況は危機的状況ですが、自立した経済を構築しようとしています。

ロシアの今後1年間のGDPは11%減少すると予測されていますが、徐々に安定化すると考えられています。しかし、安定したからといって成長するわけではなく、今後数年間は微増にとどまると予想されています。


プーチンがロシア経済をソ連型の自給自足モデルに戻そうと頑張っています。そのため、ロシア国民にとっては破滅的な展開であり、ロシアの中間層が急速に減少し、ソ連時代の経済苦境に逆戻りすることになるでしょう。

ロシア経済が完全に崩壊することはないでしょうが、ソ連崩壊の中から自力で立ち上がり、一般のロシア人が享受し始めていた繁栄が終わりを告げることを意味しています。


さらにロシア経済にとって最大の打撃は、ロシアの芸術家、知識人、熟練労働者が大量に流出したことです。


また、権威主義的な体制に嫌気がさしたエリート層が大量に国外に流出し、競争力のある経済を構築することができなくなっています。

すでに科学・技術・工学・数学の専門家の不足が懸念され始めています。

プーチンが直ちに軌道修正し、世界が一夜にしてロシアのウクライナ侵攻を許すことにならない限り、ロシア経済の将来は徹底的に厳しいものになります。


しかし、その可能性は極めて低いため、ロシアは世界から経済的に孤立したままになり、ヨーロッパの中で劣る国家になることが決まっています。

西側諸国がロシアのエネルギー部門、つまりロシア経済の最も重要な部門から脱却しようとしているため、事態は悪化の一途をたどるでしょう。


西側諸国がロシアのエネルギーを完全に禁止すれば、ロシア経済は20%以上縮小します。すでに、今後数年間で、EU全域でロシアの石炭、石油、天然ガスを段階的に廃止する計画が立てられています。

これはロシアの最も重要な経済部門を麻痺させ、ウクライナへの侵攻を成功させることで得られる政治的利益を完全に無効化させます。これはロシアにとっても非常に厳しい状況です。


アジア諸国はロシアからの輸入をいずれ緩和していくでしょう。実際にインドは安価なロシアの石油を貪欲に買い占めています。ただ、ロシアにとってこの程度の少量の輸出は、ロシア経済を劇的に回復させるものではありません。

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