日本企業の死角。スティーブ・ジョブズCEO時代から「Appleがこだわり続けるデータ」とは?

[PR] 本ページで紹介しているECサイトやメーカーなどから購入実績などに基づいて手数料を受領する場合があります。

Appleが製品開発をする上で一番大切にしているモノとは?




今、iPhoneは信じられないほどの人気を博していますが、スマートフォン市場を支配しているわけではありません。

2019年の第3四半期の市場シェアで見れば、iPhoneはわずか12%しかなく、Huaweiの18%とSamsungの21%に負けています。


そして、Macの市場シェアは7%前後で推移していて、Dellの17%、HPの22%、Lenovoの25%のシェアに大きく遅れをとっています。


しかし、Appleには市場シェアを支配している製品があります。それはiPadです。

iPadは2位のAmazonの約2倍のシェアである26.5%を獲得し、業界をリードしています。


しかし、どのApple製品もApple Watchにはかないません。Apple Watchはスマートウォッチ市場を絶対的に支配しており、2位のSamsungの13%のシェアを大きく突き放し、48%のマーケットシェアを獲得しています。

つまり、世界のスマートウォッチユーザーのほぼ半数がApple Watchを持っているということです。


ここから分かることは、Apple製品のシェア率はデバイスによってかなりの差があるということです。あるものは他のものよりもずっと業界を支配しているということです。

そして、これはAppleが市場支配を目指していないことの完璧な証拠です。

このApple製品のシェアは、Appleが本来のビジネス戦略を曲げずに行った結果であり、このシェアによって製品開発を決定するということはありません。


Appleが「シェア率」よりも重要視するデータは「利益率」です。Appleは、地球上で最も価値のある企業のひとつであり、その市場評価額は、1.4兆ドル(約180兆円)です。

つまり、Appleはコンピュータやスマートフォンを最も多く販売しているわけではありませんが、これらのカテゴリーから最も多くの利益を得ているのです。

Appleは常に高価格で、競合他社よりも高い利益率をもたらすプレミアム製品を作ることに注力しているということです。


ティム・クックが2018年にApple製品の販売台数の報告をやめ、代わりに各製品カテゴリーからどれだけの収益が上がったかを共有することにしたのもこのためでした。

そうすれば、アナリストは収益に基づいてAppleの成功を測ることができ、ハードウェアの売り上げが鈍化し始めたときの否定的なメディア報道を防ぐことができます。

そして今のところ、このビジネス手法はAppleにとって非常に成功しています。実際、この利益を求める戦略こそが、90年代後半にAppleを倒産の危機から救ったのです。


1985年にジョブズがAppleを去ると、当時AppleのCEOであったジョン・スカリーはAppleの製品ラインを拡大し、安価なコンピュータモデルを作り、売上を伸ばし、市場シェアを獲得しようとし始めました。

この戦略を10年間続けた結果、Appleには何十種類ものコンピューターが存在するようになりました。


その結果、製品ラインナップは細分化され、混乱し、販売員はApple本部から送られたマニュアルを見ながら、どの顧客にどのモデルが最適なのかを調べて販売していました。

そして倒産が近づくにつれ、金銭的な面だけではなく、従業員のモラルも低下していったのです。このような「底辺への競争」は、Appleにとって大きな痛手となりました。


Appleの元チーフハードウェアデザイナーである、ジョナサン・アイブは、経営陣から「安くて大量生産できるデザインを作るように」と言われていたようです。


それを言われて、アイブはAppleを退社しようと考えました。



しかし、1996年にジョブズがAppleに復帰すると、状況は一変します。

役員として入社したジョブズは、会社の新しいビジネス戦略を考える上で、非常に実践的なアプローチを取りました。


それは、拡大したコンピュータのラインナップに時間を割くことはしないということです。ジョブズは、製品のほとんどを廃止する代わりに、主要なカテゴリーを代表する4つのコンピュータ・モデルの製造だけをすることにしました。

そしてその4つのカテゴリーとは、コンシューマー向けデスクトップ、プロフェッショナル向けデスクトップ、コンシューマー向けノートブック、プロフェッショナル向けノートブックです。

この新しい戦略は衝撃的なものでしたが、そのおかげでAppleは最高のデザイナーとエンジニアを各製品に投入することができました。その結果、Apple史上最も強く、分かりやすいラインナップが誕生したのです。


そして、iMacは、一般的なデスクトップよりもかなり高い1,300ドル(約16万円)という価格で発売されました。しかし、その高価格にもかかわらず、それまでで最も売れたコンピューターとなり、Appleが約10年ぶりに黒字になるきっかけを与えました。

それ以来、Appleは、販売台数やマーケットシェアにこだわらず、高価格の高品質な製品を数台しか作らないという経営戦略を貫いています。


2007年にジョブズはApple製品についてこのように発言しています。

私たちの目標は世界で最高のパーソナルコンピューターを作り、私たちが誇りを持って販売し、家族や友達に勧められる製品を作ることです。そして可能な限り最低価格で販売します。

また、我々が誇りに思えない製品は、発売することはできません。


この考え方は、今のAppleにも受け継がれています。

2011年にジョブズが退社して以来、Appleはより収益性が高くなっています。また、ユーザーにとってより関係の深い新しいカテゴリーに注力するため、MP3市場、ルーター市場、外部ディスプレイ市場から基本的に撤退しています。

最近のAppleは、安価な「iPhone SE」や「Apple Watch SE」や、一般ユーザー向けのカラフルな「iMac」などを展開し、シェア率に注目しはじめたようにも見えます。しかし、シェア率と利益率のバランスは難しいもの。Appleがこれまでこだわってきたプレミアム戦略を転換することは、そう容易ではないはずです。

1 2
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次