NASAを凌駕する「インドのロケット技術」の強みとは?


現在もっとも宇宙開発で注目されているのは、イーロン・マスクがCEOを務める米国のSpaceXです。同社はロケットの打ち上げコストを大幅に下げることに成功し、多くの賞賛と喝采を浴びています。

しかし、国の宇宙機関でみれば、インドの宇宙研究機関である「ISRO」の存在を無視することはできません。数十年にわたって、軌道上ミッション、月ミッション、さらには火星ミッションなどに革命を起こし続けてきたISROの功績について、海外YouTubeチャンネル「Logically Answered」が解説しています。




*Category:テクノロジー Technology|*Source:Logically Answered,wikipedia,ISRO Official

インド宇宙研究機関「ISRO」が開発してきたロケット


ISROは1969年8月15日に正式に設立されましたが、そのルーツはさらに前までさかのぼります。最も古いルーツは100年以上前で、インドの物理学者であるS.K.ミトラによって1920年代に設立された機関だといわれています。

ミトラは、電離層サウンディングに関する実験で有名な人物です。電離層サウンディングとは、ある地域で最適な電波の周波数を特定するための電気通信技術のことです。そして、この情報をもとに、上層大気や地球近辺の宇宙環境について理解を深めることができました。

最初の大きな飛躍は、1940年代に物理学研究所とタタ基礎研究所が設立されてからのことです。この2つの組織は、科学者のヴィクラム・サラバイとホミ・バーハによってそれぞれ設立され、大学や研究所と協力して宇宙線に関する実験、上層大気の研究、高高度実験などを行いました。

そして、1962年にサラバイがネルー首相を説得して、インド宇宙研究委員会を設立することになります。その後、すぐに観測ロケットの実験が始まり、1969年にISRO(インド宇宙研究機関)が設立されることになったのです。

それ以来、ISROは5種類のロケットを開発しました。最初のロケットは積載量が40kgとかなり小型の「SLV」です。SLVは1979年の初打ち上げに失敗したものの、1年後の1980年にはロヒニRS-1衛星の打ち上げに成功し、インドは衛星を軌道に乗せた6番目の国となりました。

その後、SLVは2回打ち上げられますが、結果は散々なものでした。3回目の打ち上げは成功したものの、衛星の軌道が低すぎたため、打ち上げから9日後に軌道から外れてしまいました。4回目の打ち上げは1983年に行われ、このミッションは成功し、ISROは地球観測衛星を軌道に乗せることができました。

SLVの成功と失敗を受け、ISROはSLVをさらに発展させたASLVの製作を試みます。ASLVは5段式の固体燃料ロケットで、静止軌道に人工衛星を投入することを目的としたロケットです。しかし、このロケットはASLVは生涯で4回の打ち上げを行うも、そのうち3回も失敗に終わりました。

結果的にISROはこのロケットを廃止し、「PSLV(Polar Satellite Launch Vehicle)の開発に力を入れることを決定します。PSLVは太陽同期軌道に人工衛星を運ぶために設計されたロケットです。そして、このロケットこそがISROの能力を証明するものになりました。

1994年のPSLVの初打ち上げは失敗してしまいますが、PSLVは後に50回の打ち上げを成功させることができました。そして、PSLVは現在も使われており、36カ国342基の外国の衛星をさまざまな軌道に乗せてきています。また、PSLVは1回の打ち上げで最も多くの衛星を太陽同期軌道に投入したという記録も持っていました。

そしてインド製ロケットであるPSLVがなにより優れているのがコスト面です。PSLVの1回の打ち上げ費用は1,800万ドル(約24億円)から2,800万ドル(約37億円)と見積もられています。実際にかかった費用は、高く見積もっても、1回あたり2,500万ドル(約33億円)だったそうです。

PSLVは3,800kgを地球低軌道に投入できるため、1kgあたりのコストは6,579ドル(約90万円)ということになります。

NASAのSLSは70トンを軌道に乗せることができますが、1回の打ち上げコストは20億ドル(約2,600億円)以上です。よって、1㎏あたりのコストは28,572ドル(約400万円)ということです。この価格はPSLVの4倍以上となります。

ちなみに、SpaceXのファルコン9は、1㎏あたり2,193ドル(約30万円)しかかかりません。これは、PSLVの1/3のコストです。それでも、1980年代から90年代にかけて設計されたPSLVが、現在のNASAのロケットよりもはるかに効率的だというのは驚異的です。

そして、2000年代初頭に開発された最新ロケットである「GSLVマーク3」は、低軌道に1万㎏を運ぶことができる、ISROで最も強力なロケットです。

PSLVと同様に、GSLVマーク3は、㎏あたりのコストという点では、非常に効率的です。GSLVマーク3は、1回の打ち上げに5,100万ドル(約68億円)かかるため、1㎏あたり5,100ドル(約68万円)ということになります。これまでのところ、GSLVマーク3は4回しか打ち上げられていませんが、そのすべてが成功しています。

NASAの1/10のコストで成功したISROの火星ミッション


現在のISROの活動の中でも興味深いのが火星探査ミッションです。2013年11月、ISROは火星探査機「マンガローン1号」を火星に向けて打ち上げ、2014年9月に火星周回軌道に乗せることに成功しました。これにより、インドは初の試みで火星周回軌道に乗せた最初の国となりました。

このミッションの素晴らしいところは7,400万ドル(約98億円)という記録的な低コストでミッション全体を完了させたことです。

NASAの火星周回ミッションは通常、数億ドルの費用がかかります。例えば、「マーズ・オデッセイ」は2億9700万ドル(約400億円)、「MAVEN」は6億7100万ドル(約890億円)、「マーズ・リコネッサンス・オービター」は7億2000万ドル(約960億円)もかかっています。

単純計算でいえば、マンガローン1号は、NASAのマーズ・リコネッサンス・オービターほぼ1/10のコストしかかかっていません。ISROが宇宙ミッションのコスト削減に関して大きな前進を遂げたことは明らかですが、彼らの挑戦はまだ始まったばかりです。

ISROは、2022年に「アーディティア L1」を太陽に向けて、2023年にシュクラヤーン1号を金星に向けて、2024年にマンガローン2号を火星に向けて打ち上げる計画を立てています。また、木星へのミッションも計画されていますが、その詳細はまだ分かっていません。

ISROの予算は年々増え続けており、将来は明るいはずです。ISROの予算は過去10年間で3倍になりました。これは、50年前に予算がピークに達したNASAとは対照的です。

費用対効果という点ではSpaceXには及びませんが、他の政府出資の宇宙開発プログラムと比べれば、はるかに優れています。そう考えると、ISROが人類を軌道に乗せ、最終的に月や火星に到達させるのは時間の問題なのかもしれません。

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