6,800億円で砂漠を〝水の都〟にする実在の都市計画

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国のほとんどが砂漠であるクウェートが進めるプロジェクト「サバ・アル・アフマド・シー・シティ」。このプロジェクトは砂漠の国には似合わない「水の都プロジェクト」です。

このプロジェクトを完成させるためには、自然の力と工学的な問題を克服しなければなりません。プロジェクトの詳細と課題について、海外YouTubeチャンネル「neo」が解説しています。



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*Category:テクノロジー Technology *Source:neo,laalaalkuwait,wikipedia

目次

水の都「サバ・アル・アフマド・シー・シティ」の全貌とは?


「サバ・アル・アフマド・シー・シティ」とは、クウェートのアフマディに建設されている200kmの人工海岸線にある都市です。この都市の特徴は海と直接繋がり、住民が自分のビーチアクセスを持っていることです。なぜ、クウェートはこのような街作りをしているのでしょうか?

1980年代後半、原油の輸出で豊かになったクウェートには、新たな住宅地が必要でした。しかし、小国であるクウェートには、この需要を満たすだけのスペースがありませんでした。また、砂漠の内陸に建物を建てるのは「供給できる資源がない」「地盤が不安定で建設に適さない」「乾燥した暑さ」などの理由から好ましくありません。

そこで、クウェートが考えたのが海岸部の開発です。海沿いであれば、潮風が吹いて昼夜の温度差が少なく、穏やかな気候で生活できます。


しかし、計画が具体化する直前の1990年にイラクがクウェートに侵攻し、湾岸戦争が勃発します。そのため「サバ・アル・アフマド・シー・シティ」の計画は頓挫することになります。

1991年に湾岸戦争は終了するものの、甚大な被害が発生し、高価な新工事を再開させることはできませんでした。そして、都市計画が再開されるまで、さらに6年の歳月を要したのです。


「サバ・アル・アフマド・シー・シティ」は、環境とうまく付き合う必要があります。プロジェクト地域には、潮の満ち引きによって水位が上下する2つの潮流が存在します。そこで、この潮流を利用して、複雑な水路システムを構築し、さらに2つの海の入り口を設けるというプランが立案されました。

しかし、この方法にはいくつかの問題があります。その1つが、水路の循環が悪くなり、水質が悪化しやすくなることです。定期的な水交換が行われなければ、藻類が繁殖し、悪臭を放ちかねないことになってしまいます。また、住民が快適に泳げるように、水路の水流をコントロールする必要もあります。さらに、計画的に設計された形状の水路が、長い年月をかけて自然の力によって変形し、住宅に浸水する可能性もあります。

それらの問題を解決するために風速や風向き、海流に関する膨大なデータを収集し、精密なシミュレーションが行われました。


その結果、水流が速すぎると判断された場所には、追加の接続水路を導入することができました。また、別の水路を導入することによって、水の行き場が増え、流れが緩やかになり、副次的効果として海岸浸食のリスクも軽減できます。

しかし、シミュレーションによる調整で改善が見込めたとしても、水の交換が不規則すぎて、水質が悪くなってしまう部分もあるようです。水質を維持するためには、ポンプで水を汲み上げなければなりません。ただ、ポンプには多くのエネルギーが必要で、コストもかかります。また、ポンプで水を汲み上げるということは、解決策ではなく、回避策です。

そこで技術者たちは、自然の力だけでラグーン(水深の浅い水域)を完全に流すというアイディアを思いつきます。そのアイディアを実現するために、ティガルゲートと呼ばれる水門が設置されました。


このゲートは、満潮時には水圧で開くようになっています。一方、干潮時には水の流れが逆となり、水の力でゲートは閉じた状態になります。このように、このシステムは完全に自己制御されており、シミュレーションでは、このゲートを使うことで水の流れが大幅に改善されることが示されています。


2000年代初頭、このプロジェクトがようやく具体化し、2004年には掘削機が最初の運河を掘ります。ただ、これほど広大な敷地を改造するのは大変な挑戦で、数え切れないほどの浚渫(河川や港湾などで水底の土砂等を掘りあげる工事)が必要です。

しかし、このプロジェクトは年々発展し、定期的に新しい区画が開設されています。最終的には、この都市に25万人が住むようになるとのことです。これまでに作られた海岸線のビーチの長さは84km以上で、新たに作られるビーチの長さは203km以上になると予想されています。

「サバ・アル・アフマド・シー・シティ」の総事業費は約50億ドル(約6800億円)かかるようですが、完成すればクウェートを完全に変貌させてしまうでしょう。

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