自然界は樹木を利用して二酸化炭素を酸素に戻し、生物が利用できるようにしてきました。しかし近年、世界の樹木資源は減少しています。そこでセルビア出身の科学者イヴァン博士は「液体の木」を開発し、この問題を解決しようとしています。
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1台で樹齢10年の木と同じ効果あり
イヴァン博士が開発したのは「LIQUID3」という、緑色の液体が入ったタンクとベンチが一体になっている装置です。内側から照明が当てられており、SF映画から飛び出してきたかのような見た目です。専門的には「バイオリアクター」と呼ばれ、都市環境に適した大気環境制御装置です。
タンク内では、微細藻類が600リットルの水で培養され、大気中のCO2と光合成をして酸素とバイオマスを生産します。LIQUID3は1台で、樹齢10年の成木1本、または200平方メートルの芝生1面に置き換えることができます。さらに、建設・設置を迅速に行うことができ、汚染された空気をすぐに処理することができます。
太陽光発電を行うパネルが設置され、光を取り込み電気に変えることもできます。照明が内蔵されているため、冬の薄暗い時期でも微細藻類は一年中光合成を行うことができます。また、携帯電話を充電するためのコンセントも備えています。
LIQUID3は、現在セルビアのベオグラードにあります。ベオグラードは、隣接する2つの石炭発電所の影響でPM2.5の数値が高く、大気の質に大きな問題を抱えています。セルビア全体では、人口10万人あたり175人の公害関連死者を記録しており、この指標はヨーロッパ最悪です。また、大気の質が悪い国としても世界第33位です。ひどい時には視覚、嗅覚、味覚ですぐにわかるほど汚染がひどいと言います。
都市の樹木をLIQUID3に置き換えるわけではありません。むしろ、木を育てるのが非現実的なスペースに設置できるように設計されています。さらに、樹木や草にはない効率性を発揮します。微細藻類は、成木の10倍から50倍の速度でCO2を除去することができます。一度成長した微細藻類は収穫でき、強力な肥料としても利用できます。
世界中で1兆本の樹木を植えることを目指す「トリリオン・ツリーズ・プロジェクト」のような取り組みも重要ですが、コンパクトなバイオリアクターの建設は非常に実用的です。初日から有用な量の二酸化炭素を回収できるという事実は、大きなメリットでしょう。さらに都市空間をSF映画に出てくるような未来的な都市景観に変えてくれるかもしれません。
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