スタジオディーン版『Fate/stay night』の魅力 〜山口祐司監督追悼コラム〜

本日2020年1月9日(木)、『Fate/stay night』や『断裁分離のクライムエッジ』などで知られるアニメーション監督・山口祐司氏の逝去が、複数の関係者によって公表されました。

本記事では追悼の意を込めつつ、山口監督が担当したTVアニメ『Fate/stay night』と、劇場アニメ『Fate/stay night UNLIMITED BLADE WORKS』を回顧します。

Fate黎明期に間口を広げたアニメ版


※画像はTVアニメ『Fate/stay night』公式サイトより。

山口監督によるTVアニメ版『Fate/stay night』は、原作発売の2年後である2006年1月から全24話が放送。Fateシリーズ関連作品が増えた昨今は、制作を担当したスタジオディーンにちなんで「ディーン版/DEEN版」と呼ばれることがあります。

元来は成人向けPCゲームだった『Fate/stay night』をより幅広い層へ届けることに成功した作品であり、DVDは2010年時点で100万枚突破の記録的大ヒットを実現しました。「はじめてのFate」がディーン版だった方は多いはずで、シリーズファンとして知られる声優・田中美海氏もそのうちの1人とのこと。現在まで続くFateシリーズへの貢献度は計り知れません。

■2006年版TVアニメの概要

原作は展開が大きく異なる3ルートによって構成されていますが、2006年版TVアニメは第1のルートである「Fate」(セイバールート)がベース。ただし、ほかの2つのルートやアニメオリジナルの要素も適宜加えられています。アーチャー対バーサーカー戦の詳細な様子が描かれ、特殊エンディングテーマまで用意された第14話「理想の果て」は代表的かつ象徴的な回でしょう。

制作には原作スタッフが密接に協力しており、各話の初稿プロットは奈須きのこ氏が担当。キャラクターデザインは当時の武内崇氏の絵柄を極力再現すべく、本人の監修が施されています。

TYPE-MOONの隆盛や先進的テクノロジーの恩恵を受けている近年の作品と比べると時代を感じることも多々あるかもしれませんが、放送開始から14年が経った今観ればタイムカプセルのようなもの。古典感・史料感もまた魅力と転じるはずです。

あくまでも私見ですが、2006年版TVアニメは全体的にとても真摯に作られており、Fateシリーズ初体験の1作としては今なお優れた選択肢だと思います。ベースとされたセイバールートは全年齢版『Fate/stay night [Realta Nua]』のアプリで無料プレイできるので、それぞれを比べて楽しんでも一興でしょう。

なおオリジナル要素であるボンデージ姿の間桐桜(原作スタッフ発案)は当時から賛否あるようですが、個人的にはなかなか気に入っています。インターネットミーム風に言うなら「ボンデージ姿の桜が出るまで観てください」という思いがなくもないです。

■Fateキャラクターの“第一声”

原作ゲームにはボイスが実装されていなかったので、2006年版TVアニメは登場人物の“第一声”が披露された機会でもありました。声優陣は杉山紀彰氏や川澄綾子氏を筆頭に、以後のシリーズ作品まで続投しているおなじみのキャストがほとんど。

音響監督は『機動戦士ガンダムF91』(シーブック・アノー役)や『犬夜叉』(弥勒役)などで声優としても活躍していた故・辻谷耕史氏が務めており、キャスティングにも参加しました。辻谷氏からの演技指導については近年になっても時折キャストから話題に挙がります。本作はFateシリーズにおける演技の原点と評しても過言ではないでしょう。

一方、黎明期ならではのさまざまな要素もみどころの1つ。当時のFateシリーズではまだ端役的扱いだったキャラクターが、現在とは異なるキャスティングやデザインで登場していることは、近年の作品でFateシリーズを知ったファンにとっては新鮮かもしれません。声が渋く口調が重厚なマーリンや、川澄綾子氏との交友をきっかけとして能登麻美子氏が演じたベディヴィエールなどは、今となってはレアですね。

■川井アレンジの名曲が物語を彩る

ディーン版を語るにあたっては、音楽の素晴らしさが絶対に欠かせません。担当者はなんと『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』や『機動戦士ガンダム00』などで知られる大御所・川井憲次氏

『THIS ILLUSION』(アニメ版主題歌ではdisillusionに改題)、『約束された勝利の剣』『エミヤ』といった原作の代表的楽曲が、深長かつきらびやかなあの川井節へとアレンジ。加えて、英霊たちの故郷を感じさせる異国情緒に充ちたオリジナル曲も多数使用されています。

ちなみに私がもっとも好きな楽曲は、毎回の予告に使われる『運命の夜』です。あのいかにもな伝奇らしさが『Fate/stay night』にぴったり。中田譲治氏によるセクシーなタイトルコールと合わせて強烈な印象が残っています。

なお、原作『Fate/stay night』から『Fate/Grand Order(FGO)』まで多くのシリーズ作品で音楽を担当する芳賀敬太氏は、近年のインタビューで川井憲次氏への尊敬を公言しています。古今のFateシリーズのサウンドトラックを揃えて聴き比べると、影響を感じられるかもしれませんね。

■2時間足らずで駆け抜けた劇場版UBW


※画像は劇場アニメ『Fate/stay night UNLIMITED BLADE WORKS』公式サイトより。

2010年に公開された劇場アニメ『Fate/stay night UNLIMITED BLADE WORKS』も、山口監督率いる2006年版TVアニメのメインスタッフ陣とスタジオディーンによって制作されました。

タイトルの通りに原作第2ルート「Unlimited Blade Works」(凛ルート)をアニメ化したものなのですが、尺が106分しかないという厳しい事情により、内容はコンパクトかつスピーディ。正直、名シーンダイジェスト的な性質は否めません。

それでもきちんと1本の映画として成立する構成にはなっていますし(作中設定の説明が極端に少ないのでシリーズ初体験には適さないと思いますが……)、何よりも独特の疾走感が大変味わい深いので、個人的には愛着がある作品です。これほどまでにハイテンションなアニメ版『Fate/stay night』は後にも先にも観られないのではないでしょうか。

原作を大胆に取捨選択した(せざるをえなかった)作品という性質ゆえに、創作にかかわる方にとっては、分野を問わず勉強材料になるかもしれません。

なお川井憲次氏による音楽は劇場用作品らしくさらに壮大になっており、TVシリーズにも使用されたあの象徴的楽曲は『エミヤ -Kenji Kawai ver.2-』として再アレンジされています。ぜひ優れた音響環境かヘッドフォンを用意してご覧ください

■山口監督版Fateを観られる定額配信サービス

サービス TV版 劇場版
Netflix
バンダイチャンネル
Hulu
Amazon Prime ×
dアニメストア ×

※2020年1月9日(木)編集部調べ。
※配信状況は今後変化する可能性があります。

余談:ほかの山口祐司監督作品について

個人的には、山口監督が別名義「虎田功」として担当した『Get Ride! アムドライバー』(2004年)に格別の思い入れがあります。

本作は、平和の中で徐々に見世物と化した職業ヒーロー「アムドライバー」に就職した若者たちを描く群像劇。序盤はお仕事もの的な性質が強いのですが、第1クール終盤に衝撃的な秘密が明らかになることで世界情勢が急変。主人公たちが無情な政治劇と欲望の渦、そして復讐の連鎖に巻き込まれていきます。理想と現実のギャップへの抵抗、スターの挫折と再起などといった普遍的なドラマの連続に、当時は毎週夢中になったものです。理想や正義が試されるという要素は『Fate/stay night』とも似ているかもしれませんね。

また、シリアスなばかりではない独特の作風も『アムドライバー』の魅力でした。外国文化を意識してか用語や台詞に横文字が多用された結果、某タレントの口調と紙一重な文芸。高頻度の食事描写による夕方の視聴者への「飯テロ」(本作で知ったソフトシェルクラブを近年になり初めて食べました。おいしかったです)。さらに本編外でも、絶大なインパクトで腹筋を不意打ちする玩具CMが続々放送。

完全オリジナル、夕方枠、4クールという条件ゆえか作画は決してリッチではありませんでしたし、玩具展開の混乱が影響したと思われる残念な要素もいくつかあったものの、おもしろくて刺激的なものを作ろうとする意欲を終始感じられる作品(企画)でした。

『アムドライバー』はいくつかの定額配信サービスで配信中なので、冒頭1クールだけでもお試しいただければ、いちファンとして大変幸いです。

山口監督作品の意欲といえば、第1話から最終話にかけて物語がさかのぼっていく構成の『桃華月憚』(2007年)は今なお時折話題に挙がる異色作。こちらは残念ながら定額配信サービスで見つけられませんでしたが、遠からずどこかに追加されてほしいものです。

■おわりに

作者亡きあとも残ることは創作物の特長であり、優れた作品はいつまでも語り継がれるべきです。訃報を機とする再鑑賞や話題化にはさまざまな思いがともないますが、それでも回顧すべきだと思い、今回の記事を制作しました。

今は定額配信サービスで膨大な作品をすぐに楽しめる素晴らしい時代です。山口監督作品のみならず、多くの作品が再び楽しまれることを常に願っています。

山口祐司監督、長きにわたってたくさんの素敵な作品をありがとうございました。きっとずっと忘れられません。

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