8.4兆円が消し飛んだ「Carvana株価暴落」日本人が知らない米国テック産業の大崩壊

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米国のテック業界は高インフレ抑制のための締め付けにより、大きな不況を迎えています。中でも急速に成長していたテック企業「Carvana」は株価が99%下落、8.4兆円が消し飛ぶという壊滅的なダメージを受けました。

日本の主流メディアでは不思議なほど報じられていないこの出来事を、米国のファイナンスに詳しい海外YouTuber、アンドレイ・ジーク氏が解説しています。



*Category:テクノロジー Technology *Source:
Andrei Jikh
,Businesswire ,The Verge ,companiesmarketcap.com ,Forbes ,日本経済新聞 ,Carvana(Wikipedia)

目次

テック界のホープ「Carvana」ビットコインよりも酷い〝99%〟暴落の理由


Carvanaは2021年、米国の大企業500社をランク付けするリスト「Fortune 500」に選ばれました。これは、同リストに加えられた最も若い企業の1つとされています。

同社は米国で、上場企業として急速に成長していたテック株のホープでした。Carvanaの株価がピークに達したのは2021年8月で、時価総額は8.5兆円を超えています。


しかし2022年12月には約1,165億円まで暴落。株価で見ると、370ドルのピークから約99%下落しています。

米オンライン中古車販売の「カーバナ(Carvana)」の株価は12月7日に41%急落し、3.95ドルに沈んだ。パンデミックの初期に急騰した同社株は、今から16カ月前に最高値の370ドルを記録したが、米国社会が日常を取り戻す中で99%も下落した。

これは、ビットコインよりも酷い暴落ぶりです。一体なぜここまで評価が下落したのでしょうか?その裏側には、Carvanaのビジネスモデルと、金融引き締めによる米国のバブル崩壊があります。

Carvanaは車の買取査定を自動で行い、オンライン上で販売している企業です。同社は中古自動車業界のAmazonと例えられるほど巨大で、自動車価格が高騰する米国で順調にビジネスを進めてきました。もしもCarvanaが破産すれば、米国の「自動車バブル」は完全に破れ、車業界全体に大ダメージを与えることになるでしょう。

Carvanaが失敗した原因の1つは、高インフレと中古自動車の需要急増により、高額すぎる買取査定を行っていたからです。テック系メディア「The Verge」の以前の記事では、その異常な高額査定が記録されています。

2014年12月、私はホンダのフィットを即決で購入しました。走行距離は23マイルで、付属品と延長保証を含めて20,814.80ドルを支払いました。

(2021年)12月に、Carvanaという話題の新興企業が私の車を持って走り去り、20,905ドルの小切手を切ってきました。私には90.20ドルの利益が残りました。

記者は、このフィットが「低走行距離、無事故、ホンダが生産終了したモデル」という好条件だったとはいえ、中古車が元の値段より高く売れるのは「ばかばかしい」と感じたと述べています。


コロナ渦で車業界が落ち込んだあと、半導体不足の影響により、2021年には中古車価格が爆発的に上昇しました。Carvanaはこの時期に、より多くの車を販売するため、より多くの車を購入したのです。しかし、Carvanaが大きな利益を上げることができたのはほんの一時期だけでした。

米国では驚異的なインフレにより、車の価値は相対的に上昇していました。しかし現在、米国はインフレを抑制するため、金利を上げています。金利が上がれば、消費者の購買意欲は下がり、車を購入するユーザーも激減します。

車が現在の価値よりも高いときに購入したディーラーは価格を下げられませんが、需要と車の価値は減少し続けます。ジーク氏はこれについて、Carvanaは実質的に「一ヶ月で3億2600万ドル(約441億円)相当を失っている」と指摘しています。

これだけ見ればCarvanaは「高インフレで失敗したかわいそうな企業」ですが、実は悪評が耐えない企業でもあります。ジーク氏によれば、Carvanaでのトラブルは何百件も報告されており、中には購入から半年以上も車を待っている顧客もいるそうです。また、途中で罰金を払わされたり、 陸運局で大変な思いをしたユーザーもいるとのこと。

そして同氏が一番問題としているのが、盗難車の販売です。あるコロラド州の男性がCarvanaから車を買ったところ、それが実はレンタカーで、購入の7ヶ月前に盗難届が出ていたことが判明しました。

複数の州ではCarvanaは停止処分を受け、集団訴訟も起こされています。ジーク氏は、Carvanaが倒産すれば、買った車は届かなくなる可能性すらあると警告しています。


また、Carvanaは4331億円相当の負債に悩まされています。同社は10.25%の金利を支払っていますが、これは年に約453億円の支払いに相当します。彼らは金利の支払いだけで消耗しており、すぐに資金調達できなければ、2023年末までに資金不足に陥ると予測されています。

規模拡大を追求する経営は、コロナ禍の収束による消費の変化に加え、急ピッチの金融引き締めが直撃し、窮地に立たされている。QUICK・ファクトセットによると、カーバナの最終損益は7~9月期まで5四半期連続の赤字と資金の流出が続く。膨張した負債の金利負担も重みを増し、資金繰りが急速に悪化した。

バンク・オブ・アメリカのアナリストは11月末、新たな資金調達で現金を注入できなければ「株式価値はゼロになるだろう」と警鐘を鳴らしている。株価は昨年末の230ドル台から12月8日時点で5ドル割れまで沈み、下落率は98%に達する。この日の株価反発でもまったく安心できない状況が続く。

この高インフレと引き締めによる影響は、米国の車業界だけではなく、中古の家を販売するZillowなどにも波及するかもしれません。Carvanaの一件を見る限りでも、金融引き締めによる「米国経済のバブル崩壊」を甘くみてはいけないことがよく分かります。

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